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皇居東御苑のモグラ



ひらめきは突然やってくる

ぼんやりと知人へのプレゼントを考えていると、「皇居や代々木公園にはモグラがいる」という情報をふと思い出しました。さらに、「皇居の財布がなんだか良いらしい」というどこかで見た曖昧な情報も頭に浮かびました。
これは皇居に行けということだなと直感し、思い立ったが吉日とばかりに、次の休日に皇居東御苑へ財布を買いに行きました。

特に下調べもせずに東京駅から皇居へ歩いていくと、「皇居外苑」に着きました。広々とした皇居外苑では、晴天のもと、多くの人が思い思いにくつろいでいます。観光客も国内外を問わず大勢いました。
しかし、私が気になるのは晴天よりも地面です。(もちろん、晴天は大歓迎です)

モグラ塚は……、ここには流石にないかぁ。

そう、綺麗な芝生には、見える範囲にモグラ塚どころかゴミ一つありません。管理が行き届いている証拠です。大切にされているのだなと思うと同時に、綺麗に保つことが人々にも正しい行動を促すことにつながるのだと感じました。その場には、ポイ捨ては絶対に許されないという雰囲気が漂っていました。

巽櫓(桜田二重櫓)
キノコの群生に気分が上がりました

早速、モグラ塚を発見

この日は、大手門から東御苑に入りました。皇居三の丸尚蔵館の整備に伴う新築工事が行われており、仮囲いが目を引きました。工事は令和7年9月末まで続く予定のようです。

人工的に管理され、綺麗に舗装もされた場所。人通りも非常に多く、本当に皇居にモグラがいるのかと不安になっていたとき──

モグラ発見!?

モグラ、本当にいるじゃないか(嬉)

いやいや、喜ぶのは早い。
ただ単に土が盛り上がっているだけかもしれません。そう思い周りを見渡すと、いくつか土が盛り上がった場所があります。土も乾き切っておらず、比較的最近のもののようでした。
また、モグラ塚がある場所の奥は、現在建物が建てられていない広い空き地でした。雑草もかなり生えており、自然任せという感じです。

このモグラ塚を作った子は、その広い空き地ではなく、人通りが多く少々うるさい道沿いにトンネルを掘っている。もしかしたら、縄張り争いに負けて道沿いに追いやられたのかも?

そんな空想をしながら、こんな都会のど真ん中にモグラがいることにわくわくしてしまいました。ずっと生垣をのぞき込んでいたので、周りからは怪しい人間に見えたと思います。

さらにずんずん進むと、少し開けた場所に出ました。そこには松の木が数本植えられていました。
松の木の周辺に何か影のようなものが見えたため、よく観察してみると、それはどうやら土のようです。

モグラ塚群?

モグラ、皇居で派手にトンネル掘りすぎ(苦笑)

この場所には多くのモグラ塚ができていたため、2匹以上のモグラが生息しているようです。そう思った理由は、モグラ塚群が距離を空けて2箇所にできていることから、複数匹がいるのではないかと推測しています。

それにしても、iPhone SEでは遠い場所の撮影は厳しい。せめて目視確認はしっかりできるように、望遠鏡ぐらいは買ったほうがよいのかな、と思った次第です。


二の丸雑木林

二の丸雑木林の散策路

二の丸雑木林は、喧騒から離れた静かな場所で、木々の間には散策路もあります。多くの人は二の丸庭園を散策しているため、ゆっくりと森林浴を楽しむなら、比較的人が少ない二の丸雑木林がおすすめです。(なお、蚊よけスプレーは必須)

さて、草は3〜10cmほどの丈のものが多く茂っています。
前述の最初に発見したモグラ塚は、草が少ない場所にあったため、雑木林ではトンネルを掘るのは難しいだろうか?と心配でした。しかし、都会のモグラたちはたくましく生きています。
草木が茂っている場所にも、点々とモグラ塚を発見することができました。土は湿った色をしており、最近地下から押し出された土だと考えられます。

草むらにあるモグラ塚

また、感動したのは、散策路に崩れたトンネルを発見したことです。散策路の両端にあるモグラ塚のちょうど真ん中あたりに崩れたトンネルがありました。ただし、トンネルの途中も埋められていたため、もしかしたら現在は放棄されたトンネルなのかもしれません。

崩れたトンネル

ひとつ気がついたことがあります。それは、皇居東御苑のモグラたちは木の周辺に目視できるほど大きなモグラ塚を作っているということです。そこで思い出したのが、手塚甫先生と川田伸一郎先生の著書に書かれていた内容でした。
下記に引用させていただきます。

そこで、地中のモグラたちのトンネルは、いったいどうなっているのか、そのよう
すを見てみることにしましょう。(図1を見てください)
モグラの巣は、たいてい、庭のすみに植えてある植木、たとえばケヤキの大木や、農家の庭先にあるカキの木などの、根もとの深い地下につくられます。その深さは、ほぼー・五〜ニメートルのところです。

手塚甫(1987) . 『生き生き動物の国 トンネルづくりの名人 モグラ』 . 誠文堂新光社.
2 モグラの住むところ
p34

また巣を作るのは、地下五〇センチメートルくらいの木の根元など、なるべく水はけがよいところが多いようです。モグラは、そこに落ち葉を運びこんでボール状の巣を作り、ねどことして使います。

川田伸一郎(2012) . 『はじめまして モグラくん』 . 少年写真新聞社.
第1章 モグラにはなぞがいっぱい トンネルの中へご案内
p34-35

なるほど、木々が多い場所では、モグラは木の根付近に巣を作る習性があるため、この雑木林では木の周りにモグラ塚が多い傾向にあるようです。
どこかで、木の下に巣を作るのは雨による水害を避けるためだという説を読んだ記憶があるのですが、出典を忘れてしまいました。思い出したら追記します。

その日は他にも行きたい場所があったため、二の丸雑木林の探索だけで終了しました。初めての皇居東御苑での探索では、大きな収穫がありました。
本当に皇居(都心)にもモグラがたくさんいる形跡を見つけられて、安心しました。

この雑木林は、動植物にとって都心のシェルターといってもよいのではないかと思います。

<引用・参考文献>

  • 手塚甫(1987) . 『生き生き動物の国 トンネルづくりの名人 モグラ』 . 誠文堂新光社.

  • 川田伸一郎(2012) . 『はじめまして モグラくん』 . 少年写真新聞社.


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