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一人美術鑑賞教室(青磁について)

 近年話題になった有吉佐和子著「青い壺」の壺は青磁の壺とのことなのですが、そもそも青磁のことがよくわかりません。
 陶磁器ってどこをどう鑑賞すべきなのでしょう?そこもよくわかりません。

 東京国立博物館が好きで、時々行きます。本館と比較して人が少なく、静かな東洋館には中国や朝鮮の陶磁器が陳列されているのですが、青白っぽい器が並べてあるあたり(たぶんあれが青磁なのだろう)はざーっと見るだけ、派手な唐三彩のほうについ目がいってしまいます。
 本館のほうにも陳列されているのかもしれませんが、細かい絵柄の大皿とか、宮川香山のカニがへばりついた器とか、華やかなものに気を取られてしまい、何の飾りもない器は素通りしていました。

 さて、気になったときが学びどき。
 YouTube先生に半日弟子入りし、青磁について学ぶことにしました。

 まず、青磁にはいろいろな色があることがわかりました。吉岡幸雄著「日本の色辞典」(紫紅社)を比較対象にしながら見てみると、青というよりは緑系統の色が多いように感じます。色辞典によると「青磁色」という色があるのですが、もっと濃い青緑色、茶色がかったオリーブ色、水浅葱(緑がかった水色)の器もあります。
 中国では古くから生産されていたようですが、日本や朝鮮半島、タイやベトナムでも作られてきたとのことです。
 でも、魅力がよくわかりません。器って食べ物を盛る道具であることが第一だと思うのです。陶磁器を見るときは、美術館でもお店でも「これに何を盛ったらおいしそうかな」と想像しています。でも、青磁の色合いって何か盛ってもあまり美味しくなさそう。青い絵柄のお皿なら美味しそうになるのに、不思議です。部屋に置いてあっても花を活けても温かみが足りないような気がする。
 私、好きにならないかも・・・

 そんな気持ちを抱えながら、古美術商の方が明時代の青磁の花生(はないけ)について解説する動画を見ました。
 その花生はぽてっと丸い胴体にすんなり長い首、ちんまりかわいらしい耳がついています。表面は水浅葱か、千草色、新橋色(いずれも明るい青緑色)のような色の石(中国の「玉」ってこういう石のことか?)を溶かしたみたい。近づいて見る地肌は半透明にも透き通っているようにも見える、不思議な色合いです。
 この壺は日本の茶人が中国(明)の窯元に注文して制作されたもの、とのことでした。
 当時、明に注文して焼かせることができる人といったら、海外貿易で財を成した堺の豪商でしょうか。その頃の旦那衆、または戦国の武将を招いての茶会は舶来品が並び、参加者はラシャの羽織を着て、とても豪奢な空間だったことでしょう。そんな席で「こんなん作らせたんですわ」とか言いながら見せびらかしたのかな・・・なんて、ロマンチックな空想(妄想?)がぐううんと広がり、帆船で海を渡るような晴ればれとした気分になります。
 器の形をしてはいるけど実用品ではない。器ではあるけれど贅を競うための道具、そう考えたら青磁がぐっと魅力的に感じられました。
(間違っているかもしれません、一個人の解釈です。)
 
 関心が無かったものも、解説を受けるとがぜん興味が湧いてくるものだと思いました。今後、良き青磁を鑑賞する機会がありましたら、ガラスケースにべたーっと(叱られない程度に)へばりついて、じっくり鑑賞(妄想?)したいと思います。

 

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