運動器の機能障害の捉えかた
本日は、
以前から挙げている、臨床推論系の話で問診→身体所見を取得→統合と解釈までを具体的にどういったことをポイントにして行っているかを記載していきます。
ちなみに私の考えのベースは、前職でお世話になった理学療法士の『工藤慎太郎先生』が監修されているこの書籍がベースです。
(職場で試験などもあったため、脳みそに刷り込まれています。今でも読み返すことが多いです!)
・運動機能障害の評価戦略
こちらの書籍では、運動器の機能障害を診ていくにあたり『3つのStep』
を駆使して、なぜ痛みが出ているのかを推論しています。
・Step1:力学的ストレスの明確化
機能障害から生じている痛みは、『メカニカル(機械的)なストレス』がある組織にかかることで痛みを生じていると考えています。
(ちなみに炎症が強い時は、疼痛発痛物質が出ているため化学的=ケミカルな痛みと捉えてください。)
機械的なストレスには、複数の種類があります。
・力学的ストレスの種類
1、圧縮ストレス
2、伸張ストレス
3、摩擦ストレス
4、剪断ストレス
に分かれます。
・圧縮ストレス:組織が押し潰されるようなストレスを受けた時に痛みが生じる。 例:関節面の組織(軟骨、半月板など)、関節周囲の脂肪体
・伸張ストレス:組織が引き伸ばされた際にストレスが生じる。
例:靭帯や腱などの組織
・剪断ストレス:組織を引き裂くようなストレス。
他のストレスと複合して組織にストレスをかける事が多い
(自分の中では。回旋ストレス?のような認識でいます)
例:圧縮+剪断ストレス
・摩擦ストレス:組織が幾重にも重なっている部位で起こる。
腱や靭帯が折り重なる部分にある腱鞘や滑液包にかかるストレスが多い。
このようなストレスの種類を理解して、まず問診で『どのような動作でどこに痛みが出るのか?』を聞いていきます。
例えば、膝の内側が痛いという主訴で患者さんが来院されたとします。
Q:どのような動作で痛いか?
A:体重をかけたときに痛い →荷重がストレスか?(この時、非荷重位ではどうかも確認します。)
→荷重のみで痛いとなると、組織に『圧縮ストレス』がかかっていると考えられます。
Q:他に痛い動作はありますか?
A:捻ると痛いですね。
→捻る=『剪断ストレス』がかかっていそうだなと考えます。
(※捻る方向によっては、伸張ストレスもかかりそうな気もします。)
この問診上のストレスの解釈から、次のストレスを受けるとしたらどの組織にストレスがかかっているのかを考えていきましょう。
・Step2:解剖学的評価
Step1で力学的ストレスの解釈をしました。では次にどの組織(解剖学的に)が痛みを出している組織になっているのかをStep2では考えていきます。
ここで、参考になるコンセプトが『Layerコンセプト』です。
・Layerコンセプト
痛みの出ている組織を階層別にして考えるコンセプトです。
例えば、荷重+捻り動作で膝内側が痛いとします。
ここで考えられるLayer組織は、どのLayerでしょうか?
荷重という点を考えると→『骨・軟骨レイヤー』、または『不活性レイヤー』にストレスがかかっていそうです。
捻りという点で考えると→『骨・軟骨レイヤー』、または『不活性レイヤー』もそうですが、可能性として否定しきれないのは筋や腱などの『収縮レイヤー』組織です。
以上のことから3つのレイヤー組織が痛みの原因組織として候補に上がって来ます。
ここで、各レイヤーの組織に対して、理学所見や、整形外科テストを用いて組織の鑑別をしていきます。
膝内側組織に対する検査として例を挙げておきます。あくまで例ですので、具体的な検査はもっとたくさんありますので別の機会に掘り下げていきたいと思います。
今回例に挙げている膝内側の痛みの患者さんは、マックマレーテストが陽性。荷重時の膝を捻るテスト(=セサリーテストというテストがります。)も陽性でした。
→『半月板』が痛みの組織と判断をします。
整形外科テストなどで疼痛の原因組織にあたりをつけることができたら、確認のために『徒手介入=施行的介入』を行います。
対象組織に、介入を行い、介入前後の痛みの変化を必ず確認します。
痛みに変化があれば、晴れて原因組織を確定できたと言えるでしょう!!!
・Step3:運動学的評価
s疼痛増悪因子や、運動学的な問題を考えていく。
さて、最後のステップです。Step1、2で痛みが出ている組織とそこにかかるストレスを理解しました。
では、なぜ痛みが出ている組織にストレスがかかってしまうのか、、、、。
その要素を調べていくのが『Step3』です。
工藤先生の書籍から改変引用させてもらい考えていきます。
膝内側のお話から、なぜ、内側半月板に圧縮や、剪断ストレスがかかってしまっているのか、書籍では、青塗りの『運動学的な問題』が挙げられています。もちろんこれだけではないでしょうし、皆さんが臨床経験をしていくと他の要因にも出会うことがあると思うので、あくまで一般的に参考にしておく問題点として覚えておいてもらえると良いかと思います。
それぞれの要因に対して、どのように確認していくのか。
けして難しいことをするわけではありません。授業で習った可動域や徒手筋力検査、評価を用いて行っていきます。
それぞれの因子を、どのようにして確認しているのか、その検査や評価はどういった意味を持つのか、そういった部分を大切に確認して、確かな情報(運動学的評価)を探っていき、そこに対してどのようにアプローチしていくかを考えていければ治療計画を立てやすいと思います!!!