(ショートレポート)e-fuelに関する特許出願動向調査
1. 調査背景
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、経済産業省により2020年末に策定された「グリーン成長戦略」のもと、あらゆる分野・産業で様々な取り組みが行われている。自動車業界においても、既存のエンジン車を利用して脱炭素に向かうべく、合成燃料の開発が進められている※1。
合成燃料は、CO2(二酸化炭素)とH2(水素)を合成して製造される燃料である。製油所や工場などから排出されたCO2を原料に、再生可能エネルギー(再エネ)由来の水素や電力と合成技術を組み合わせることで、カーボンニュートラルな燃料とすることができ、このような再エネ由来の水素を用いた合成燃料は「e-fuel」と呼ばれている。
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)もエンジン向けの液体合成燃料を一貫製造する技術の確立に取り組んでおり※2、今後のe-fuelの発展が望まれている。そこで、e-fuelに関連する特許出願について調査した。
※1:経済産業省資源エネルギー庁HPより
※2:NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)HPより
2. 技術概要
e-fuelとは、再生可能エネルギーで発電した余剰電力の貯蔵・利用方法の一つで、余剰電力により製造した水素や、その水素と濃縮回収した二酸化炭素やバイオガス中の二酸化炭素を原料として合成・製造したカーボンニュートラルな燃料のこと。なかでも、水電解により製造した水素や、その水素と二酸化炭素からメタネーションにより合成したメタンなどの気体燃料として貯蔵・利用する方法は、 Power to Gas (PtG,P2G)とも呼ばれる。
また、水素と二酸化炭素から、直接あるいは合成ガスなどを経由し、ガソリンや軽油相当の炭化水素液体燃料やメタノールなどの合成を行う方法(Power to Liquids, Power to Fuel)が検討されている。※3
※3:機械工学事典より
3. 調査戦略(概要)
本調査では以下のような調査戦略の下、特許母集団を作成した。
・国内の動向を主として把握する目的として、日本国出願のみを対象とした。
(公報種別は、公開特許、特許、公開実用、実用)
・e-fuelを生成する際に使用するFT(Fischer Tropschフィッシャー・トロプシュ)反応に注目し、FT合成を観点する下記特許分類(Fターム)を使用した。
・キーワード(KW)は、代替可能/次世代燃料とカーボンニュートラルに関連するものを本文全文対象に設定し、特許分類に掛け合わせた。
上記戦略にて作成された集団、100件ほどを母集団とした。
<使用特許分類>
4H129-BB07 ・・FT合成
4H129-BB06 ・化学合成
4H129-BB00 液体炭化水素製造処理の種類
4H129-. 石油精製,液体炭化水素混合物の製造 (C10G1/00-99/00) [リスト再作成旧4H029、解析要否変更(H20)、1976年以降に発行された文献を解析対象としている]
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4H129-BC43 ・・FT合成方法
4H129-BC41 ・化学合成方法,装置
4H129-BC00 処理方法,装置の細部
4H129-. 石油精製,液体炭化水素混合物の製造 (C10G1/00-99/00) [リスト再作成旧4H029、解析要否変更(H20)、1976年以降に発行された文献を解析対象としている]
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4H129-BC46 ・・FT合成装置
4H129-BC41 ・化学合成方法,装置
4H129-BC00 処理方法,装置の細部
4H129-. 石油精製,液体炭化水素混合物の製造 (C10G1/00-99/00) [リスト再作成旧4H029、解析要否変更(H20)、1976年以降に発行された文献を解析対象としている]
4. 関連出願紹介
e-fuelに関する出願をいくつか紹介する。
5. まとめ
e-fuelについて、複数企業からの出願を確認することができた。解決課題としては効率化やコストダウン、再生可能エネルギーの変動対策など、実用化に向けた開発がなされていることが見て取れた。カーボンニュートラル実現に向け、今後のe-fuel開発及び普及促進が期待される。
調査事業部 山下