『リトルフォレスト 夏』
ファーストショットから、この物語の舞台、小森のあまりの緑緑しさに、頭をぐっと掴まれ見入ってしまう。
祖母の家へ行くJRの窓から、この風景を見たことがある。だから私は知っている。そして殆どの観客が共通して持っている、自然の風景に。
この映画を知ったきっかけは、大学3年生の時。映画館でアルバイトをしていた時に、本編チェックの仕事で予告を目にしたことだった。
ウドを刻んで、ご飯にかけて食べている。
トマトを丸かじりしている。
味わう音が好ましい。
『リトルフォレスト』は、夏秋冬春、音をめいいっぱい通じて、食(生きること)が丁寧に扱われている映画だと思う。
「言葉は当てにならないけれど、体が感じたことは信じられる。」
私は言葉の大切さを常々感じている。主人公がそう思うに至った詳しい背景は語られない。私の思いとは違う方向の台詞だけれど、この言葉は何故だか忘れられない。
そして予告ではその後すぐ、おそらく書き下ろしであろう、新しい門出をしたyuiさんのバンド、FLOWER FLOWER『夏』がかかる。
みずみずしい。
橋本さんの鼻の高い横顔が、つぶやく声色や作業を行う手の自然さが、彼女しかこの役に相応しくないと思わせた。
何事も自分でやらないと気が済まない性格の、橋本愛さん演じる主人公のいち子は、生まれ育った小森の、季節それぞれの生きるものの様子をよくわかっている。
どこにいようと何もかもを体で感じて、味わっていない私は、巡っているはずの季節のことを何度も忘れてしまう。
4月にもまだ雪が残っていること。やっとアスファルトが出て歩きやすくなったと思えば日差しが気になってくること。
私はちゃんとこの場所を愛しているかな。生きているかな。
じょ