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産後ケア施設インタビュー#3 :秋山先生(小児科医、あきやま子どもクリニック)松本先生(助産師、Mama&Babyあきやま)

こんにちは!
あずかるこちゃんの米井です。

今日は、東京都三鷹市で産後ケアに取り組む秋山先生に、インタビューにご協力いただきました。
小児科クリニックを営みながら、宿泊可能な産後ケア施設や、保育所、病児保育、児童発達支援事業所など、数多くの施設運営を手がける秋山先生。
出産前後から子どもたちが大きくなっていくまで、切れ目なく支援したいと話す、その思いに迫りました。

産後ケアをまだ利用したことがないという方にも参考になるお話でしたので、ぜひご覧ください。 

【プロフィール】
・氏名:秋山千枝子
・所属:あきやま子どもクリニック 院長、Mama&Babyあきやま 院長
・略歴:
  こども家庭庁 幼児期のこどもの育ちの部会、成育医療等協議会、児童虐待対策部会 委員
  東京都 児童福祉審議会、教育委員会、母子保健運営協議会 委員
  日本小児科学会理事会 執行諮問委員
  日本小児保健協会 監事
  日本小児科医会 理事
  日本保育保健協議会 副会長
  東京小児科医会 副会長
  三鷹市医師会 理事
・施設ホームページ:https://www.akiyamakodomo.com/ 

・氏名:松本光子 
・所属:Mama&Babyあきやま 施設長
・施設ホームページ:https://www.akiyamakodomo.com/mamaandbaby/  

▼産後ケア施設を立ち上げた経緯を教えてください。

秋山:以前、障害児施設に10年くらいいたのですが、そこでリハビリや療育に携わっていたことが、産後ケア施設立ち上げのきっかけになっています。
障害児施設だと、1人の子どもに対して、医師、看護師、リハビリの専門家、栄養士、保健士など、さまざまな専門家が「こうしたらいいかな、ああしたらいいかな」って、みんなで成長について考えていく。
それで、障害児はこんなに手厚く見てもらえるのに、普通の子どもはなんで手厚くしないんだって思ったんですよね。障害のない子どもだって、成長していくときには、つまずくこともあれば、困ることもある。障害のあるなしに関わらず、1人ひとりの子どもたちを支援できるような場所をつくりたいと感じました。

▼秋山先生が大切にしている「切れ目のない支援」について、ぜひ詳しく教えてください。

秋山:「切れ目のない支援」は私のライフワークです。
今やっている小児科クリニックをはじめ、保育所、病児保育、児童発達支援事業所など、出産前後から子どもたちが大きくなっていくまで、切れ目なく支援したいと考えていて。
産後ケア事業については、国の制度が固まってきたというタイミングでもあり、それに合わせて開設しました。
三鷹市は先進的な市で「産後ケア施設をはじめたい」と持ちかけたときに、当時の三鷹市長も必要性をよく理解されていたので、とんとん拍子で話が進んだのが印象的でしたね。

▼施設をつくる上で、意識されたことはありますか?

松本:Mama&Baby1という2017年にオープンした施設は、10:00〜16:00の「デイ」ケアのみ対応しています。こちらは日常を忘れてゆっくりしてほしいということで、少しホテルのような雰囲気でつくりました。
Mama&Baby2という2020年にオープンした施設は、10:00〜16:00の「デイ」と、17:00〜翌日9:00の「ナイト」利用、そしてそれらを合体させた10:00〜翌日9:00の「ステイ」という3プランで滞在が可能。
こちらはどちらかというとお家のような雰囲気ですね。
どちらもリラックスして過ごせるよう、しっかりとお掃除をして、清潔感にはこだわっています。

秋山:経営面の話をすると、2はまず丸1日滞在してもらう「ステイ」で予約を取って、埋まらなかったところは「デイ」と「ナイト」に分割して予約を取る、という仕組みにしています。
それによって、稼働率がグッと上がるので、産後ケア単体で見ると赤字ではありますが、経営としてはかなり良い方向に行っていますね。
最近は稼働率約90%以上をキープしていて、現段階では手一杯。行政と連携しての、緊急対応の受け入れもしていますが、これ以上ベッドを増やせないのが悩ましいところです。

▼利用者であるお母さんたちは、具体的にどのように過ごしているのでしょうか?

松本:体力回復の用途で使われる方が大多数なので、みなさんゆっくり休まれています。
入浴の需要も高くて「産後、こんなにゆっくりお風呂に入ったのは初めてです」というお母さんもいれば、上にお子さんがいる方だと「自分だけのお風呂なんて、何年ぶりだろう」というコメントも。
妊娠中からあまりゆっくりとは入浴できないので、どの月齢で来たお母さんも、お風呂には感動していますね。

秋山:逆に話したいという人だと、滞在中ずっと話し続けて帰る人もいるよね。
それで、今回は話しすぎちゃったから、次はこうしようって決めてきたり(笑)。
次は絶対に寝ていこうとか、ご飯を買って持ってきて、お風呂にゆっくり入ろうとか。
一歩も外に出ず、こもってぐっすり休む方もたくさんいらっしゃいます。

▼働くなかで意識していることがあれば教えてください。

松本:近年はコロナの影響もあったので、里帰りもできない、お産に立ち会ってもらうこともできない。誰とも話せないし、やりたかったこともできない。仕方なく夫婦ふたりで育児をしている、という方も多かったですよね。
うちに来るお母さんたちでも「つらい」という思いを抱えている方が多くて、本当に吐き出すように、いろんなお話を聞かせていただきました。
通っていただくうちに「大人と喋れて嬉しかった」「自分が人間だということを忘れていた」「見失っていた社会性を取り戻してきた」といって落ち着く方が多かったように思います。
個人的にはお話に感情移入しすぎないようにするのが大変ですが……。まずはじっくり聞くというところを大切にしています。

▼最後に、読者に向けてメッセージがあればお願いします。

秋山:妊娠出産産後は、親子のスタートとして最も大事だと言われています。
そこで何かつまずきや引っ掛かりがあると、それがずっと影響してしまうとも言われているので、まずは産後ケアに来てもらって、そこを整理することが大切です。
お母さんとお子さんの2人きりでずっと過ごすなかで「虐待しそうになった」までは行かなくても「おかしくなりそうだった」という人はたくさんいる。
そんなとき、産後ケアに辿り着いた人はまだ良いのかもしれない。
まだ辿り着けていない人、まだ使えていない人には「予防」という観点でもぜひ使ってもらいたいですね。

松本:産後ケアでは、6時間から長いと丸1日、お母さんと一緒に過ごします。
たとえばクリニックや精神科に行っても、他人が1日中そばにいて話を聞いてくれることって、そうそう無いですよね。
もちろん家にヘルパーやベビーシッターを雇えたら良いのかもしれないけれど、その人たちに出産前後の専門性がある相談ができるかというと、そうではなかったりする。
授乳の仕方、子育てのノウハウ、そこを最初に専門家から教われるというのが、産後ケアの魅力だと思います。

ライター:今井夕華(https://imaiyuka.net/

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