ミロコマチコ展 ねこ そら もよう
ミロコマチコ展「ねこ そら もよう」が、瀬戸市のSTUDIO 894(スタジオヤクシ)(瀬戸市薬師町1番地)で開催されている。
筆者がミロコさんを知ったのは、ほんの1か月前。図書館の『生態学者の目のツケドコロ』(伊勢武史著)の表紙だ。鮮やかなフューシャピンクの魚が、ばばーんと描かれていて迫力満点だった。ミロコさんの名前で検索すると、図書館には『みえないりゅう』など絵本が何冊もあった。ビビッドな色が炸裂する、子供が描くような大胆な絵。どんな作者なんだろうと興味を持った。地元、瀬戸市で個展とトークショーがあるということを知り、楽しみに待っていた。
「ねこ そら もよう」というタイトル通り、ねこ尽くしのパラダイスだ。カラフルな作品をイメージしていたので、ブルーがメインのタイル画は意表を突かれた。青い絵具は呉須といい、瀬戸で産出されていた酸化コバルトを含む染料だ。呉須で絵付けされた陶磁器を「染め付け」と呼び、白地に青のさわやかな色合いが好まれてきた。その瀬戸伝統のブルーで様々なねこたちが描かれている。トークでは、中外陶園の工房で職人さんたちに交じって絵付けしたこと、他の色を加えても1、2色にして青を生かしたことなどが語られた。
3匹の立体のねこは、ミロコさんが紙粘土で造った原型をもとに、型を取り絵付けを施したもの。指跡の、表面のごつごつした感じも再現されており、瀬戸のノベルティ(人形制作)技術が生かされている。3匹とも、色も表情もそれぞれ個性的。トラ猫は生地に赤っぽい粘土を使い、土の色を生かしているそうだ。いつもは大きいオブジェを造るのだが、小さい立体を造形する面白さや難しさがあると言い、今後もねこやねこ以外のもの(しかも気持ち悪かったり、ムリなんじゃないみたいな形のもの)も制作してみたいという。
呉須や立体人形など、瀬戸の作陶の技術を生かした、当地ならではの展示となった。ミロコさんが瀬戸市に来たのは初めてだが、「ものづくりの職人のオーラ」を感じたそうだ。これからもどんどん瀬戸へ来て、色々なものを制作してほしい。今、陶器で造りたいものは蚊遣り器(蚊取り線香を置く物)。奄美大島在住なので、蚊が元気で必需品であり、試作品を使っているが改良点があるのだとか。
2019年に東京から奄美大島に移住して、晴れたら畑、雨が降ったら制作というように、季節や天候に合わせた暮らしをしている。自然に囲まれた生活の中で、自然の力そのものが生き物のように感じられるそうだ。今は目に見えない生き物の絵を描いているのだという。体感した自然の力をダイナミックに表現したミロコさんの作品に出会えるのが楽しみだ。
上杉あずき@STEP
参考文献
『生態学者の目のツケドコロ』 伊勢武史著 ベレ出版
『ねこまみれ帳』 ミロコマチコ著 ブロンズ新社
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