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日常好奇心譚 ーバロットたべた【閲覧注意】ー

注意


今回割とグロめの写真があります。
食材ではありますが、不穏な空気を感じ取ったら自己責任にてお逃げください。






昔から所謂“ゲテモノ”と言われる食べ物に結構興味があって、バロットの存在もなんとなく頭の隅っこで知っていた。

バロットとは、フィリピンやベトナム(ベトナムではホビロンと呼ばれる)などで食されるゆで卵。
通常日本で食べる卵は無精卵で、孵化することがないものだが
このバロットは有精卵。
それも孵化寸前の鳥の形になりそうなものを食べる。
つまりはヒヨコのなりかけ、だ。

私は魚の頭とか、内臓部分とかの
ちょっと生々しい箇所を食べるのがだいぶ好き。
鳥も丸々一羽焼いて内側の血合とか食べたい。
生臭さとか水っぽい柔らかさとかなんとも形容し難いけれど、良い。
多分、普段は口にしないものを食べている、っていう感覚が
一番美味しいと感じる要因なのかと思ってる。


最近、日本でバロットを食べたというレポ漫画がTwitterで回ってきた。
グロテスクな写真と共に、やっぱり食べられなかった脱落者がいた、という情報。
それを読んだ私は、


「羨ましいッ!!!!!!!!!」


という感情でいっぱいになった。なんで?


好奇心に染まったこの俺を止められる奴はもういない。
気付けばバロットを扱うお店をスマホで検索していた。
レポ漫画では知人にお店を紹介してもらっていたが、まあ私にそんな人脈は
ない。
バロットを食べたというブログやツイートを遡り、
どうやら大阪や東京にあるらしい、という事が分かった。
私は件の漫画をRTして散々、羨ましい!と騒いでいたので
なんとなく察していた(であろう)友人に声をかける。



「バロット食べ行くけどいく?別にそっちは食べなくてもいいけど…」
「行く〜!!!でも私は絶対食べない。」
「おっけ」

快諾()を貰った私は早速お店に電話をかけた。

「バロットが食べられると聞いたんですけど!」
「あ〜それずっと前の話ですよ」
「えっ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ホビロンって扱っていますか?」
「…?ないです」
「えっ」


Twitterの情報では本格的なフィリピン、ベトナム料理屋では大体扱ってるって言ってたのに!!!!!!??????????


しかし友人を誘った手前、諦める訳にはいかない。
どうやら東京上野、アメ横の食材屋で買えるらしい!
丁度東京へ行く用事があったので、友人を連れてアメ横へ。
地下のディープな食材屋に目当てのバロットが!
しかし10個入り…。
流石にこの量は食べられるのか?そもそも出先で茹でるのは困難では?
と諸々の問題により、断念。

さらに調べると、どうやらフィリピン食材の通販でも買えるらしい。
こちらも一パックの10個入りからだったが、
もうどうにでもな〜れ!
きっと私なら食べられる!(謎の自信)
の気持ちで購入。
険しかった道のりにようやくゴールが!

そして数日後。

届いた。

噂では白い殻だと少し青みがかっていると聞いていたが、見た目は赤で存外普通。
常温で届いたので保存に困惑したが、冷蔵保存で良いらしい…?
ラベルを信じるぞ!


友人を家に招き、早速鍋を用意。


「10個食べ切れるか心配だな…とりあえず2個茹でるね」
「いけるでしょ! 私は絶っっっ対食べないけど」



もし本当にダメでも助けてくれない姿勢、一貫してるゥ〜!!!!!
死なば諸共って言葉を作った人も驚いてるよ

ネットで調べると15〜20分茹でるらしい。
とりあえず、よく火が通っていれば大体いけるんじゃあなかろうかと思って、20分。


本当は普通の卵じゃないのか?と疑念の瞳を向けられた挙句、
グラグラと煮え沸る鍋に突っ込まれ、塩茹でされる卵。
パックに残される8つの卵。
不安な気持ちの長い20分。
響くタイマー。
流水にさらされる卵。
シュレティンガーのバロット。
スプーンで叩き割られる殻。


殻から覗く中身。ちょっと様子がおかしい。

おっっっっっっっっ。

見たことがないねえ…。この…何…?
血管と…何…?グレー…?
ちょっと汁が出ているのが、普通のゆで卵と違うかもしれない。

実食。
まず上の黄身の部分だけ掬ってみる。

…味も固さも割と普通のゆで卵、といった具合だった。
特にぐちゃりとした感覚もなく。弾力は白身、味は黄身、と混ざったような感じ。
ふーん。そんなんでいいんだ。

では次、問題のグレーの部分を掬う。




せ、繊維〜〜〜〜ッッッッッッッッ!!!!!!!!!


色味は鶏肉なのに、繊維があるだけで抵抗感が湧く。
でも平気。
食べるよ。

…味は本当に鶏肉。本当に柔らかい鶏肉。
でも卵の香りが付いていて、ほんの少し生臭さがある気がする。
繊維はどこの部分に当たるのか全然予想がつかない。
羽毛になるのか。筋繊維になるのか。
最初は羽毛かと思っていたが、多分筋繊維の方かもしれないなあ。
魚の小骨が平気であれば、特に問題なく食べられる気がする。

固めに茹でたのが良かったのか、選んだ卵が良かったのか
想像していたよりそれほどグロテスクではなかった気がする。
繊維と血管があっただけで。
味もさほどクセがなかったし。

友人は一口も食べなかったけど。
でも見た目はそんなにグロいとは思わなかったよね?ね?
思ってたらごめん。

私としてはそんなにバロットって
「うわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!」
とびっくりするほどじゃないよお
という結論だった。









…この日は。
翌日、調子に乗って15分に短くして茹でる。

ちょっと白身が透明感あって、黄身がオレンジ色というだけでだいぶ印象が違う。

白身と黄身がはっきりと分かれているので、昨日よりはまあ生々しさが増しているかも…?


でも大したことない。
そんなに変わらないでしょ!
と、スプーンを突き刺す。



め、目…?
顔…!?

手足…!????????


おわーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!

クチバシもある…!
完全にヒヨコだこれ…っ!!!!




流石の私もこれは食べられな…




ーーーいや。まったく平気だわ。
魚の兜煮で目玉とか牙とか普通に口に入れるし。
あんまり抵抗感ない。

食感も魚のそれと同じ。
やっぱり他よりはほんの少し固いけれど、出来立て()だから軟骨なんかよりずっと柔らかい。爪は硬くなく、肉部分とまったく同じ。


グロい!やだ!食べられないっ!
なんていうのを自分でも期待していたところがあったのだけれど、
そんなこと全然なくって
エンタメ性のない人間だなと我ながら思ってしまった。

むしろ普通のゆで卵よりギャンブル感があって面白い。
生臭さがあって味も好みかもしれない。
一個で親子丼を味わえると言ってしまうと、
身も蓋もないというか、不謹慎?というか。
でもヒヨコだからと言って成鶏より可哀想とか尊いとかはない。
同じ。
買ったからには食べる。



今回は鶏のバロットだったけれど、実は本場ではアヒルの卵が主らしい。
もう少し癖のある味だとか…
もしかすると食べ慣れた味だったから、さほど驚きがなかったのかもしれないなと。
いつかお店で、アヒルのバロットも食べてみたい…。
バロット(ホビロン)の食べられるお店の情報、あったら是非教えてください。
日本全国どこのお店でもいいです。