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机上論からフィールドワークへ—研究室で学んだまちづくりの本質

研究室で学んだまちづくりの重さと責任

三井所(みいしょ)研究室では様々なフィールド(実在する自治体)を通じてリアルなまちづくりに参画させていただきました。
これまで机上論ばかり、想定敷地の中での計画にうんざりしていた自分にとっては、リアルな地域、現実社会の中でのフィールドワークはとても刺激的なものでした。

その刺激の種類は様々で、この後続く「木造建築」「職人技術」「林業」などへの興味関心にも繋がっていくことになるのですが、一番の衝撃は
「まちづくりの重さと責任」
を感じた事です。

我々研究室の学生は先生のアシスタントとして、研究対象として各地域に入り、建物の調査をしたり地域の方にヒアリングをしたり、様々な方法でまちづくりのベースとなる部分の調査を行ってきました。
しかしそこから見えてきたのは、小さな可能性と大きな諦めでした。

南会津で感じた地域づくりの難しさと可能性

自分が深く関わっていた地域は福島県の南会津に位置する村でした。
当時で人口が2400人位、村の95%が山林という地域で、冬は低温豪雪という厳しい環境に置かれながらも、四季がはっきりとした自然豊かでのどかな風景が広がっている、人情味あふれるこの村を自分は大好きになりました。

南会津の曲屋

村の皆さんにも徐々に受け入れて貰えるようになり、本音を聞き出せるようになりました。
皆さんは地元愛に溢れそれぞれの仕事で生計を立て、地域が少しでも良くなる事を考えて生活されていました。
今後は外部からのファンを増やし、外資も獲得していきたいという想いも感じる事ができました。

しかし、言葉の端々には過去の出来事へ想いを馳せるフレーズが多く、昔を懐かしみながら厳しい現実を受け入れている方々が多かったように思います。
対外的には希望や理想を語っていましたが、心の中では大きな社会の流れ(人口減や高齢化率上昇など)を変えていく事は難しいと、どこかで諦めの気持ちがあったのかもしれません。

その頃の自分は、そんな気持ちにはお構いなく、この村でしか出来ない事は何か?を研究室の仲間と共に考え、実践してきました。
当時は内外からも様々な反応があり、喜びを分かち合った時間を思い出します。

大学4年から大学院まで入れて約4年間関わらせていただきましたが、その後も後輩達が関わり続けてくれました。

後輩達がまちづくり活動を継続(2016年)

研究の内容はともかく、この村のまちづくりを通じて最も強く感じたことは、
どんな状況でも前向きにまちづくりを行なっていく為には
”強力な牽引力”
が必要だという事です。

地域住民と行政だけのまちづくりは現実を悪く捉え過ぎてしまい、ネガティブな発想になりがちです。
エネルギーを継続させることはとても難しいのです。

大学の研究室も一時的な関係になりがちで、関係が途切れてしまうとまた元の状態に戻ってしまいます。
まちづくりを牽引していく仕組みや方法は色々あると思いますが、
やはり行動のきっかけは、

所管する行政のトップが旗を振る事と、
外部から元気な人を連れてくる事
です。

小さな可能性だとしても、理想の状態に向かう「まちづくり」を止めてはいけないのです。

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