<No.19>SDGsの各ゴール解説⑨ 目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の各ゴール(目標)の解説とアクションのヒントを国連開発計画(UNDP)、国連広報センター(UNIC)の資料を基に行います。SDGsのゴールを達成するためにも、SDGsの各ゴール詳細を知っておくことはアクションに繋げる上で重要になります。ぜひ最後までお付き合いください。
今回は「目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう」です。
UNDPでは「目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう」を次の通り解説しています。(灰色部分は引用。)
強靭なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、技術革新の拡大を図る
インフラと技術革新への継続的な投資は、経済成長と開発には欠かせない要素です。世界人口の半数以上が都市部で暮らしていることから、大量輸送と再生可能なエネルギーとともに、新たな産業の成長と情報通信技術の重要性も今まで以上に増しています。
技術進歩は、新たな雇用機会の提供やエネルギー効率の改善など、経済面と環境面双方の課題の持続的な解決策を見出すうえでも重要となっています。包括的で持続可能な産業を推進し、科学的研究と技術革新に投資することはいずれも、持続可能な開発を促進するための重要な手段となります。
今でも40億人がインターネットを利用できませんが、その90%は開発途上地域に暮らしています。情報と知識への平等なアクセスを確保し、その結果として技術革新と起業を促進するためには、このデジタル格差の解消が欠かせません。
インフラと技術革新への投資は、持続可能な開発のための2030アジェンダを構成する17のグローバル目標の一つです。複数の目標を同時に達成するためには、包括的なアプローチが必要となります。
http://www.jp.undp.org/content/tokyo/ja/home/sdg/post-2015-development-agenda/goal-9.html
また、UNICでは、このゴールがなぜ必要なのか、このゴールに対して何が出来るかという視点で以下のように伝えています。
NGO や公共セクターと協力し、開発途上国内の持続可能な成長の促進を支援してください。
産業があなたの暮らしと福祉にどのような影響を及ぼしているかについて考え、ソーシャルメディアを活用して、政策立案者に SDGsを優先課題とするよう求めてください。
詳細は以下のURL参照
http://www.unic.or.jp/files/d6a2dc5f43df9769d04814da2ebbf7bc.pdf
具体的なアクションを考えるためには、このゴールのターゲットについても知っておく必要があります。ゴール9に連なるターゲットは以下の8つです。
• 9.1 すべての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する。
• 9.2 包摂的かつ持続可能な産業化を促進し、2030年までに各国の状況に応じて雇用及びGDPに占める産業セクターの割合を大幅に増加させる。後発開発途上国については同割合を倍増させる。
• 9.3 特に開発途上国における小規模の製造業その他の企業の、安価な資金貸付などの金融サービスやバリューチェーン及び市場への統合へのアクセスを拡大する。
• 9.4 2030年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。すべての国々は各国の能力に応じた取組を行う。
• 9.5 2030年までにイノベーションを促進させることや100万人当たりの研究開発従事者数を大幅に増加させ、また官民研究開発の支出を拡大させるなど、開発途上国をはじめとするすべての国々の産業セクターにおける科学研究を促進し、技術能力を向上させる。
• 9.a アフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国及び小島嶼開発途上国への金融・テクノロジー・技術の支援強化を通じて、開発途上国における持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラ開発を促進する。
• 9.b 産業の多様化や商品への付加価値創造などに資する政策環境の確保などを通じて、開発途上国の国内における技術開発、研究及びイノベーションを支援する。
• 9.c 後発開発途上国において情報通信技術へのアクセスを大幅に向上させ、2020年までに普遍的かつ安価なインターネット・アクセスを提供できるよう図る。
例えば、ターゲット9.3「特に開発途上国における小規模の製造業その他の企業の、安価な資金貸付などの金融サービスやバリューチェーン及び市場への統合へのアクセスを拡大する。」で企業のアクションを考えた場合、途上国等の現地調達と国内企業とのサプライヤーの連携を築くことで、現地の付加価値を高める方法が考えられます。このような事例として、Dari K株式会社(本社:京都市北区 http://www.dari-k.com/ )は、インドネシアのカカオ農家と協働して良質のカカオ豆の栽培から輸入・チョコレートの製造・販売までを一貫して手掛けています。Dari Kは「カカオを通して世界を変える」を企業理念とし、良質のカカオ豆を使用したチョコレート作りを行うだけでなく、インドネシア子会社を通じてカカオ豆生産者の所得向上などSDGs達成に向けてインドネシア現地でさまざまな活動を行っているという事例があります。
最後に、2018年12月24日時点の国連本部のウェブページ(About the Sustainable Development Goals)に掲載されている17の目標ごとの「事実と数字(Facts and Figures)」のうち、ゴール9に関するものを挙げます。一見、自分自身に直接関係ないようなことであっても、新たな気づきやビジネスの機会になることがありますのでぜひ押さえておいていただきたい数値です。
• 多くの開発途上国では依然として、道路や情報通信技術、衛生施設、電力、水道といった基礎インフラが整備されていません。
• 世界人口の16%は、携帯ブロードバンド・ネットワークにアクセスできません。
• 低所得国をはじめ、多くのアフリカ諸国では、インフラの未整備により、企業の生産性が約40%損なわれています。
• 全世界の製造業の付加価値がGDPに占める割合は、アジアの製造業の急速な成長に伴い、2005年の15.2%から2017年の16.3%へと増えています。
• 産業化による雇用乗数効果は、社会に好影響を与えます。製造業で雇用が1件増えれば、他の部門で2.2件の雇用が生まれるからです。
• 生産加工と製造に携わる中小・中堅企業は、産業化の初期段階で最も欠かせない存在であり、最も多くの雇用を生み出すのが普通です。こうした企業は、数にして全世界の企業の90%以上を占め、雇用の50~60%を創出しているからです。
• 後発開発途上国には、食料・飲料(農産業)と繊維・衣料産業の分野で巨大な潜在能力があり、持続的な雇用創出と生産性向上を達成できる見込みも十分にあります。
• 中所得国は、基礎・組立金属産業への参入で利益を得られます。幅広い製品で、国際的な需要が急成長しているからです。
• 開発途上国の国内で加工される農産物は、わずか30%にすぎません。高所得国では98%が加工されます。このことは、開発途上国に大きなアグリビジネスの機会があることを示しています。
事業規模や企業か個人かによってできることも異なりますが、SDGsの各ゴールやターゲット、現状の数値を知って、そこから具体的なアクションを考えることがSDGsのゴールを達成する上で重要な活動の一つになります。
みなさんもぜひ自分のできるアクションを考えてみましょう。
資料:
UNDP SDGs
http://www.jp.undp.org/content/tokyo/ja/home/sustainable-development-goals.html
国連広報センター SDGs を17の目標ごとにわかりやすく紹介したチラシ、SDGs シリーズ「なぜ大切か」
http://www.unic.or.jp/news_press/info/24453/
国連広報センター 持続可能な開発目標(SDGs)ー 事実と数字
http://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/31591/