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百寺巡礼(030)三井寺 滋賀    2022年10月22日

琵琶湖の穏やかな水面を見下ろす高台に佇む三井寺。その歴史と静寂に触れると、現代の喧騒から切り離されたような感覚になる。この地は古来、琵琶湖の水を京都へ送り届ける要衝でもあり、用水路が寺の麓から静かに流れ出している。現代ではその用水路を辿る見学船も運航しており、過去と現代の交差点としての姿を垣間見ることができる。

2022年10月24日、私はJR東海の「ずらし旅ツアー」を利用してこの名刹を訪れた。旅程に組み込まれていた「現地体験」という名のおまけが、思いがけない喜びをもたらした。境内の片隅で振る舞われた団子。たかが団子、されど団子。この土地の水と空気が生んだ味わいが、旅の疲れをすっと溶かしてくれるのだ。

三井寺と延暦寺――歴史が語るもの

三井寺といえば、延暦寺との抗争の歴史が思い起こされる。山上と山下、二つの寺が激しく争ったその記憶は、現代に生きる私たちに何を語りかけるのだろうか。五木寛之氏の言葉を借りるならば

「もとをただせば小さな相違点なのかも知れない。しかし「寛容」を失ったとき、小さな相違は許し得ない争点となり、争いはどこまでもエスカレートしてしまう。そのことは、二十一世紀になったいまも変わることがないのだろうか。」

私たちはその歴史から何を学び、どう生きるべきなのか。琵琶湖のほとりに立つこの寺で、静かに問いを繰り返した一日だった。


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