百寺巡礼(002)円覚寺(北鎌倉)2022年3月29日
北鎌倉駅を降りると、目の前に広がる静謐な佇まい。この円覚寺は、私にとってただの観光地ではない。十代後半から通い始めた、ある種の「心の居場所」だった。
横浜・野毛のジャズ喫茶「ダウンビート」で夜を明かし、朝焼けとともに国鉄の始発に乗ってここに来たこともある。当時の私にとって、ジャズとこの寺は不思議な調和を持って共存していた。夜通し聴いた音楽の余韻を、円覚寺の清らかな空気が静かに包み込むように感じられたのだ。
当時の「ダウンビート」のマスターの写真が、いまでも手元にある。ジャズの音色とともに蘇る彼の笑顔や、あの独特の雰囲気。そんな記憶を携え、円覚寺を訪れるたびに心の奥に眠っていた何かが目覚めるような感覚がある。
円覚寺では、日曜日の早朝に誰でも参加できる座禅会がある。これには、まだ参加したことがない。だが、いつの日か完全に仕事から離れ、時間が自由になった時には、ぜひ足を運びたいと思う。
時代を超え、人生の節目ごとに変わりゆくこの寺との関係。いつか座禅のひと時を通じて、また新しい自分を見つけられるのではないかと、密かに期待している。