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百寺巡礼(096)粉河寺 粉河・和歌山 2025年1月14日

訃報は突然に訪れるものだ。昨晩、Facebookでの知らせが届いた。西川くんが1月11日に他界したという。息子たち三人の連名による投稿には、短い言葉とともに静かな哀しみが滲んでいた。「RIP」、その言葉だけが心に重く響く。

粉河寺は立派な古刹だった。静かな佇まいの中に、悠久の時間を刻む柱や瓦が、歴史の息吹を伝えている。だが、その静けさを破るように、駅から寺までの道は賑やかだった。隣接する学校の通学路なのだろうか、多くの学生たちが行き交い、その中を掻き分けながら、ようやく寺の境内にたどり着いた。

本堂で手を合わせたとき、私はただ一つ、西川くんの御霊の安らかなることを祈った。生前の彼の笑顔、冗談交じりの会話、そのすべてがふとよみがえり、胸に熱いものが込み上げてくる。ここ粉河寺の御本尊様に、西川くんへの加護を願ったその瞬間、寺の静寂と調和するように私の心もまた穏やかになっていくのを感じた。

五木寛之がかつて語った言葉がふと浮かんだ。「道教における<道>とは、相反するいろいろな人たちが共に存在しうる場所のことだという。巡礼路は、まさにその意味での<道>なのではあるまいか。」

粉河寺もまた、その<道>の一部なのだろう。西国三十三所の第三番札所として、時代を超えて多くの人々を受け入れてきた場所。この地で祈り、思いを馳せる人々は、きっとそれぞれの人生の重みを背負いながら、なにか大きな力を受け取っていくのだろう。そしてまた、次の寺へ、次の<道>へと歩みを進めていく。

西川くんもまた、この巡礼の道を見守りながら、いつかどこかで私たちを迎えてくれるのかもしれない。そう思いながら、私は粉河寺を後にした。



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