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『Lifelineホワイトアウト』

アダムズを殺したのはこれで何度目だろう?

私が何度指示を間違い、殺してしまっても、次の瞬間には『そうはならなかった世界』の突端に舞い戻り、彼は何事もなかったような顔をして私からの指示を待つ。まるで従順なペットのように。

実際、“彼”は何も知らないのかもしれない。
知らない方の“彼”が現れただけなのかもしれない。

いや、ちょっと待て。

“彼”が最初からそこにいた場合の“彼”だったとしたら?

“彼”が本当に「何が起きたのかを知らない状態」の“彼”だったとしたら?

舞い戻っているのは――私!? 

いや、そんなはずはない!

私の記憶は継続してるし、時間だって巻き戻ってはいない。

だからこそ次は別な方法を試そうと思っている“私”がここいるのだ。

私が数え切れないほどアダムズを殺してきた事実は変わらない。
揺るがない。

吹雪の中で凍え死んだアダムズ……
崖から落ちて死んだアダムズ……
自分自身に殺されたアダムズ……

全員違うアダムズ。
幾千幾万の『そうはならなかった世界』のアダムズが無限に増殖しながら死んでいく。

ブルルル……。

着信で携帯が震える。
また“彼”が帰ってきたようだ。

「着信です! アダムズがあなたを待っています!」

私は“アダムズに何が起こったのかを知らない顔”をして携帯を開く。

アダムズに“正しい指示”を送るため。

それが本当に“正しい指示”になるまで。

今日も、明日も、繰り返し、繰り返し……

水もしたたる真っ白い豆腐がひどく焦った様子で煙草屋の角を曲がっていくのが見えた。醤油か猫にでも追いかけられているのだろう。今日はいい日になりそうだ。 ありがとうございます。貴方のサポートでなけなしの脳が新たな世界を紡いでくれることでしょう。恩に着ます。より刺激的な日々を貴方に。