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『Xファイル ~じゃねえよな、どう考えても(笑)~』
そんなに言うなら、今日だけは本当のことを話そう。
もちろん僕が夕飯に食べたのは、かけそばとカツ丼のセットだ。
あの、いつも行く立ち食いソバ系列のお店の。
おいしいからいつも食べにいくのか、といえば、そうでもない。
なにせ、ここは"つゆ"へのこだわりが果てしなく強く
時間帯によって、煮詰まったり、薄かったりして
いちいち安定しないパフォーマンスを日々醸してくるほどのお店だ。
カツ丼もそれ相応のアレで、推して知るべしなクオリティだ。
だけど、ね。
果たして――これはなんて説明していいのかわからないんだが
――いや、本当は分かってるから説明するんだが(笑)
「まずい」から食べたくなるのだよ。
君たちも知っての通り、あの「まずうま理論」が完全にあてはまるのだ。
提唱者は、あの「ひなたのしずく」の謎の編曲家兼デザイナーであり、
歴女でもあるしずくさんだ。
彼女はまずくて、うまいものに目がない。
たとえば、カップ麺だが、普通は猫舌でもなければ
熱湯入れ、各カップ麺に記載された時間をおいて
間髪入れず熱々のうちにいただくだろう。
その方がうまいに決まってるからだ。
だが、「まずうま理論」の母と呼ばれるしずくさんは食べない。
置く。置いて、置いて、置き続ける。
で。冷めまくって、汁気も失せ、ぶよぶよぼそぼその
麺状の妖怪が溢れてきそうになったそれを食す。
確かに。まずい。
だが、そこまでいくと、"まずさの向こう側"の境地が開けているらしい。
垣間見たいような誘惑にかられるが、その一方でけして、踏み込んではいけないような気もする。(や、まあ、なんかの事情でのびのびになったカップ麺何度か食べたから知ってるけど、本当にけして、うまいものじゃない。確実にまずいよ食感もなにもかも)
しかし、まずうま信者は、ふたを開けてみれば以外にも多い気がする。
まず! なにこれ! でも食べちゃゆ!
くっさー! なにこれ! 絶対やばいってこれ!
でも食べちゃゆ!
巷の喧騒がそれを証明しているし、かくいう私も、このそばやのカツ丼を食すのはお世辞にもうまいからではない。まずくて、しかしどこか、その向こう側に、そこはかとなく懐かしいような雑味が広がっているからだ。
もしかしたら、まずさの向こう側の一端を垣間見ているのかもしれないが、
真実をつかまえるには、もう少しだけ時間がかかりそうだ。
そうね、モルダー、あなた疲れてるのよ。
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