見出し画像

『浅ましいって浅ましい』

あのう、乗り換えの連結とか最適解をみつけて、おのおのの計画で先頭車両に人々が集中的するのね。東京じゃなくてもあるのかな、この風景。

それは生きてく上で効率厨になりやすい人間だから当然で。あたしもそこに毎朝揉まれてるわけで。

で、ある駅で乗り換えがあって、その際走って向こう側ホームの電車に早く滑り込めると長く座れるのね都心の方まで。

いつもそこに大学出たてらしき若者と乗り合わせるんだけど、今日は珍しく友人と一緒だったの。

その時間帯は初めてだったらしい友人が「混むね?」ってきくと若者が「いつもだよ」とヘドが出そうなほど見下した声であざけるようにいったのね。「こいつら○○の駅で座るためにここに溜まってんだよ、あの走るときの必死な顏とか、めっさ気持ちわりいよまじで」って大声でいって、友人に「シー!ここにみんな乘ってるんだぞ」って諭されて。「いんだよ、悪口は人に聞こえるように言わなきゃ」って小学生みたいな反発してまた「シー!」ってやられて。

で、おもしろくない気持ちにはなったと思うけど、一応若者はそれでその話題をうちきって、ホームでそれまで話していたらしい、会社の愚痴に戻ったわけ。すごい声が大きくて、さっき、聞こえよがしに悪口言われた同じ車両の連中が、誰もおまえの愚痴なんぞ聞きたくねえんだよ、ってちりちりした空気醸してたんだけど。若者は気づかずまくしたててるわけ。

ちなみに僕は座らなくていいというか、戸口に立つのがいつものポジションなので、悪口?を言われたメンバーには入らなかったわけですが(笑)

若者が言っていたのは、社員研修にきた新人が、全体研修でこうしなさい、っていわれてるのにそうしない新人がわからん、ってことで、自分が注意したのにはむかってきた、っていってって、周りにきいても、俺の言うことは間違ってない、って客観的に判断されてるのに、いうこときかないっておかしくないか?って。

で、社長にも文句いったら、おまえがいくらひとりで怒っていても、紙にでも書いて渡してやらなきゃわからんだろう、くらいに言われて。「はぁ?ってなったおれは、会社がやろうっていってることをオレが仕切っていこうとしてんのに、いうこときかなくて、向こうのかたを持つならいつでもやめます、っていってやったよ」
って。「てか社長なんて、いま会社でなにが起こってんのかまったく把握できてねえんだから、ゴミだよ」って。

友人は「ふーん」という風にきいていて、まともそうだった。
あまり反応なかったからか、話題を友人の方にむけて、新しい会社に受かったのか、いよいよ社員か、とかいってて、いや、まだインターンだよ、とかいって、とにかく声が大きくて、あれだったんだけど。

若者が、座るために必死こいて走る人間を浅ましいといって馬鹿にしていたわけだけど、本当に「浅ましいこと」というのは、若者特有の傲慢さにあったようにも思う。生きるためにみんな必死なんだよ。たしかにちょっと気持ち悪いくらいざらっとするけども(笑)争い嫌いだし、ああいう競争のざらざらした空気、やだよ、たぶん誰だって。

でも、新人たちが君のいうことをきかなかった――きけなかったのも頷けるというか。うちの元上司もそれでみんなにハブられて、やめていったけども……。

仮にどんなに言ってることが正しくても人は感情の生き物だから、尊敬の念をもったり、相手をおもんぱかって言ったりできないと伝わらないし、やる気も起こせないのよ。いな、むしろやる気をそいでしまうことの方が多い。注意ならなおさら。

「普通、全体で決まったことは新人ならやるだろうが、方針なんだから従えよ」って言った君に、新人がなんで「はぁ?」って態度をとってしまうのか、気づけるのはもう少し先になりそうだけど。はっきりいえば、君がいうからやりたくないんだよ。そもそも人は号令だけでは動かない。動く気になれない。

君に悪口言われた車両内の人間は、みんなそう思って電車にのってたと思うよ(笑)聞きたくもない君の愚痴を聞かされて、君という人間の人間力をおしはかざるをえなくなって。

「言うこときけないやつら、みんな馬鹿、話がわからない社長はゴミ、座るために必死こいて走るやつら気持ち悪いクズどもだ」

不満は人間だからいろいろあるだろうね。
愚痴のひとつやふたつあって当たり前の日々だ。
だけど、なにかどこかで、自分を眺めなおさないといけないときが来るかもしれない。

客観視できないって怖い。明日は我が身だ。
本当に浅ましい行為とは、なんなのだろうか。
人を見下して生きることかなあ。

そういう若者特有の傲慢さをいい風に発揮できるといいなあ。パワーの使いどころ、かえてみたらどうかね? とか実況してる私が一番傲慢で浅ましいのかしらね(笑)

まあでも、それだけ言っておきたかった。今日は。

うーし、ほなやろかあ。

水もしたたる真っ白い豆腐がひどく焦った様子で煙草屋の角を曲がっていくのが見えた。醤油か猫にでも追いかけられているのだろう。今日はいい日になりそうだ。 ありがとうございます。貴方のサポートでなけなしの脳が新たな世界を紡いでくれることでしょう。恩に着ます。より刺激的な日々を貴方に。