USスチールの買収は政治に利用された時点で負けている
「日本製鉄によるUSスチールの買収」
日本製鉄にとってアメリカ参入の鍵となるUSスチールの買収は、バイデン大統領による買収禁止の大統領命令によって今のところ不可能になった。
どうしてバイデン大統領はUSスチールの買収を今更禁止するのか。
なぜ民主党と敵対するトランプ率いる共和党も反対しているのか。
今回はこれについて話していきたいと思う。
USスチールとはどのような企業なのか
USスチールは1901年、元々あった2つのアメリカ企業が合併してできた。
一時期はアメリカの生産量の3分の2を占めるなどしたが、その後は技術力の面でライバル企業に劣る部分もあり、現在ではアメリカ第二位の鉄鋼業企業となっている。(1位はニューコア)
USスチールはなぜ日本製鉄に買収してもらおうとしているのか
USスチールは、今でもアメリカ第二位の鉄鋼業企業として名を馳せているが、なぜ日本製鉄に買収されようとしているのか。
それは「競争力低下」が第一の理由ではないかと思う。
これはあくまでも私の想像であるが、USスチールはライバル企業であるクリーブランド・クリフス社との技術力や資本力での競争が激化していく中、世界粗鋼生産量第4位の日本製鉄に買収されることによって、カバーしていくという考えがあると思われる。
しかしライバル企業であると紹介したクリーブランド・クリフス社も買収案を提案していたが買収額で日本製鉄に負けている。
なぜバイデンもトランプも日本製鉄による買収に反対するのか
USスチールにとって買収案は良いものであると考えるが、なぜバイデンもトランプも日本製鉄による買収案に反対するのか。
バイデン氏が大統領命令を出した際の理由として
「安全保障上の問題」
という話があった。
今現在アメリカ合衆国と日本は同盟関係に準ずるものであると考えられる日米安全保障条約が締結されている。つまり、安全保障上の問題というのはあくまでも建前で、本当は別の理由があると思われる。
結論からいうと「労働組合の組織票獲得のため」である。
全米鉄鋼労働組合という巨大な労働組合が存在し、大統領選挙では120万票とされる巨大な組織票がどうしても必須となってしまう。
そして全米鉄鋼労働組合は買収に「反対」の立場をとっている。
そのため120万票のためにバイデン氏も敵対勢力であるトランプ氏も日本製鉄の買収に反対している。
ではなぜ全米鉄鋼労働組合は買収に「反対」なのか。
全米鉄鋼労働組合が日本製鉄による買収に反対しているのか。
全米鉄鋼労働組合が日本製鉄によるUSスチールの買収に反対していると話したが、なぜ反対しているのだろうか。
全米鉄鋼労働組合は世界粗鋼生産量第4位の日本製鉄がより巨大な力を持つのを阻止したいというのが大きな理由であると考えれる。
全米鉄鋼労働組合のデビッド・マッコール会長は日本製鉄のことを「ダンピング(採算を無視した低い価格で商品を投げ売りすること)で米国産業を弱体化させてきた」として批判している。
アメリカ鉄鋼業は元々保護主義的な存在であるなか、USスチールの買収をされてしまうと競争力を失ったガラパゴス状態のアメリカ鉄鋼業に大きな打撃になるという点について多くのアメリカ鉄鋼業企業が危機を感じていると思われる。
アメリカ鉄鋼業はずっと昔から保護主義的なものであったが故に、成長せずとも永久不滅であるというある意味神話的存在として考えてしまった結果、競争力の低下を招いてしまった。
その神話に日本製鉄が参入したために神話が崩壊してしまうことを多くの企業が恐れていると思われる。
今後買収が成功することはあるだろうか
今現在、バイデン氏もトランプ氏も買収には難色を見せている点において、買収は難しいところがあると思われる。
日本製鉄はバイデン現大統領やクリーブランド・クリフス社を相手に裁判を起こしている。裁判の結果次第では大統領命令が覆される可能性もある。
裁判の理由として「安全保障のための判断ではなく、特定企業への利益誘導であった」部分があげられる。
しかし裁判を起こしても残念ながら大統領命令から30日以内に買収計画を撤回しなければアメリカ国内での活動が大幅に制限される。
大統領命令の中断、撤回が急務となると思われる。
次期トランプ政権においてもトランプ氏と戦う必要があると考えられる。
これから日本製鉄は、USスチールは、どのようになるのだろうか。