いつか会えたなら、ありがとうって言いたい
私が石立岳大プロを初めて知ったのは、Mトーナメントの決勝戦だった。
そもそも、初めてリアルタイムで見た競技麻雀の試合がMトーナメントだった。
ひょんなことから競技麻雀、Mリーグの沼にはまったのが今年の6月下旬のこと。その頃のMリーグはちょうどオフシーズン。いろいろ調べているうちに、Mトーナメントの存在を知ったのが7月に入った頃だった。
当時、知っているプロもほとんどいない中、予選もそこそこ進んでいたため、試合を追いかけていたのは予選を勝ち上がった中でほぼ唯一知っていたと言ってもいい、KONAMI麻雀格闘倶楽部の滝沢和典プロだった。
結果的に彼はセミファイナルで敗退してしまうのだが、試合がある度に(家事育児の片手間ながら)スマホで観戦するのは楽しかった。これを機にAbemaプレミアムに加入したくらいには。
牌の読み方すらあやふやで、知っているのは『4メンツ1雀頭を作るゲームであること』、点数計算どころか役もほとんど知らない超初心者が、"逆転のお滝"を観るのはとてもワクワクした。……この話は、また別のところで。
そう、つまりセミファイナルまでは滝沢プロを追いかけていたため、決勝卓は観る理由がなくなってしまった。
そもそも私は幼い子供を2人抱えるフルタイムワーカーであり、働きながら子供の送迎も平日の家での世話も、ほぼ全て一人でやっている。夫は同業者なので、ポジションのわりに早く帰ってきて家事育児を積極的にやってくれているのも分かってはいるが、それでも育児に関しては本当に必要なところは基本私がやるしかないのが現状である。
つまり、一言で言えば『自分の時間がない』。子供が起きている時に自分の時間を作り出すのが非常に難しいのだ。
それでも決勝戦を観ていたのは、たまたま日曜日であり、夏休みで時間に余裕があり、せっかくAbemaに入ったからスマホでチラ見しよう、あとで子供が寝たらテレビで見よう、が出来ただけだった。本当に偶然である。
前置きが長くなってしまったが、そうして私はあの日、決勝戦を観戦していた。
そこに、石立岳大プロはいた。
決勝の結果を知っている方ならわかると思うが、第一印象は「全然アガれなくて、辛そう」だった。これはもう一人の推薦選手・坂本大志プロも一緒。知らないことが多すぎて私には何がすごいのか分からないけれど、Mリーガーってやっぱりすごいんだなぁ…とぼんやり思ったのを覚えている。
今になって見返すと、第一印象は間違っていないものの、先手を取られた中で待ちの良いリーチをたくさん打っていた。(こういうところに惚れ惚れする、見返して良かった!)
これが凄いことだと今ならわかるが、当時は「待ちの良さ」とか「追っかけリーチを打てる」ことの凄さなんて知らなかった。だから、ただただ苦しい思いをした選手、という印象が強かった。
それでも戦い抜いた石立さんと坂本さんが格好良くて、私はこんなポストをしていた。
そうして試合が終わり、翌日X(旧Twitter)を覗くと、瀬戸熊プロのポストが流れてきた。
おそらく先輩であろうプロに、こんな風に言わせる石立さんってすごいなあ。
気になって引用元のポストを見れば、本当に熱いコメントがそこにはあった。
今の時代に珍しいのでは?と思うくらいアツい。しかし、ここまで勝ち上がって名を上げた、その歩みが強い説得力を持たせている。それくらいは私にもわかった。
しかも、自分の団体の若手に「安心して麻雀が強くなることに専念していい」なんて、強烈なエール。自団体は麻雀の腕で評価してくれるし、されてナンボなんだからお前ら強くなれ!って、麻雀プロとして最高に格好良い。
そして一件の通知。
石立プロ本人が、先ほどの私のポストにいいねをしていたのだ。え、そんなことある???
そりゃあ軽率に応援しちゃうよね。
これが、私があいだてさん、もとい石立岳大プロを応援しようと決めた瞬間だった。
そう、まだきちんと勝ち上がった試合も見ていなければ、彼のスタイルも知らないのに、である。
(ご存知の方も多いかとは思いますが、何故石立岳大プロがあいだてさんと呼ばれているかはこちらのnoteをご覧ください)
※ここからは敬意をこめて石立プロを「あいだてさん」と書きます
***
それからというもの、麻雀の基礎を勉強するのと並行してMトーナメントのアーカイブを全て見てみると、あいだてさんの麻雀の魅力をこれでもかと感じることができた。
だって、押す。とにかく押す。。。
なんで押せるの?ってくらい、押している。
もちろんオリていたり、当たり牌を止めて回っていたりする時もあるんだけど、とにかく押している。すごい。(語彙力ゼロ)
胆力があるだけじゃなくて、読めているから出来るんだろうな。こんなに読めたら(というか、あらゆる可能性に思考を巡らせることが出来たら)楽しいんだろうな……と初心者の私は思ってしまう。
そして、回りながら聴牌とってリーチできると、見ている側はもうそれだけでテンションぶち上がり!だったりする。
もちろん、先制リーチもたくさん打っている。見ているファンとしては、それだけでもうワクワクする。しかも待ちのいいリーチが多い!だからアガれる!たのしい!!!(単純)
一発消しのお仕事タイム(ファイナルステージA卓)とか、
8単騎からの西単騎リーチ(セミファイナルB卓第2試合)とか、
跳ツモフリテンリーチ(同第1試合)とか、
見どころは挙げればキリがないのだけれど。
(実際、挙げていこうとしてあまりにも多くてやめました。終わらない…笑)
全局参加型麻雀、自分に今何が出来るか?って考えて考えて、やれること全部やっている感じが最高に格好良いしワクワクするんだよなぁ。次何するんだろう?って。その仕掛け、その手組み、どうなるの?って思う。ついつい見入っちゃう。
それだけじゃなくて、あいだてさんは摸打がとても丁寧だと思う。なんならツモった後に牌をつまんで切る時の手つきは可愛らしい。そしてサウスポーなのも相俟って、とても特徴的。名前のプレートなくても、絶対にあいだてさんって分かる。
印象的だったのは1stステージL卓の第1試合。東3局の一発ツモ、あの手つきが美しかった。オーラスもそうだったけれど、所々で震えている手が緊張を伝えてくるから、見ているこちらも一緒にどきどきした。
全部が全部、すごかった。対局を通して見返すのなんて初めてだったけれど、アーカイブが残り少なくなると寂しかった。もっと見たいと思った。
ほんとうに、魅せられたのだと思う。それくらい、あいだてさんの麻雀はワクワクした。
ご本人からのダイマもあって笑、その後連盟チャンネルにも加入した。B1セレクトやFocusM、それらのアーカイブも時間をかけてだいたい見たと思う。
連盟公式ルールで鳴いて前に出るって怖い気がするけれど、踏み込んで行って躱したり時に放銃したりしながら、ぐんぐんアガるあいだてさんはやっぱり格好良かった。
何より、B1セレクトは上手くいくと滝沢プロとの二大推し対決になるので、私にとってそれはもう祭り同然だ。10月はあいだてさんvsたっきーが実現し、ちょうど私の誕生日翌日だったため、出前で寿司を頼んで子供に食べさせつつ、ひとりビールを飲みながら観戦したなあ。
現時点で二人は昇級ボーダーにいるので、二人とも上ブチ抜いてA2に昇格してほしい!!
***
あいだてさんを語る上で外せないのが、X(旧Twitter)。
あんなキリッとした表情で眼鏡クイッとしながらバッチバチに攻める麻雀を打つ人とは思えない、ネットスラングや顔文字を駆使したかわいい文面。パンチ強めの美味しそうなご飯の数々。麻雀の読みよりも深く鋭いエゴサ、軽やかないいねとリプライ、フォロー返し。
あえて言おう。ギャップがすごい。本当に同一人物?
覗いたことのある人は、みんなそう思うのではないだろうか。
(実際私は、あいだて沼にハマったのはXがあったからだと思っている。)
そして個人的にXで人柄が出ているなあと思うのは、とにかくいろいろな人に絡んでいるのが見えるところ。
よくお名前のあがる仲良しのプロの方だけじゃなくて、いろいろなプロの方にリプを飛ばしている気がする。時折、我々のようなファンにもフランクにコメントをくれる。
それらの方はたまたま名前が挙がらないだけで本当は親交が深いのかとか、あいだてさんは興味がある話題や困っていることがあれば構わず声をかける気質なのか、とかまでは分からないけれど、人と関わることは好きなのかなぁと思っている。麻雀って一人じゃ出来ないしね。
「これ以上ファンを増やそうとか、見てもらおうとか、そういうのはちょっと」
(この言葉は無料部分にありますが、記事自体がとても素敵なので是非購入して読んでみてはいかがでしょうか)
そもそもこんなこと言う人が、普通のファンにも平然とリプライくれるの、ファンサービスじゃないなら何なんだろう?
私もたまにリプライをいただくが、その度めちゃくちゃ嬉しい。ファンなんてそんなものだ。推しからいいねが来ただけで飛び跳ねるくらい嬉しいし、リプなんか来ようもんなら頭の中バグるし、フォローなんてされた日には我が目を疑う。
ここからは完全に私的な事情を挟む話になるのだが、ひとつ、私にとってすごく心の支えになったことがあった。
息子が1ヶ月以上、毎週のように熱を出していた時期だった。夫婦で長い夏休みをとっていて、ほとんど保育園も休んでいたのにどうして?と。しかし仕事に復帰して2年目、自分も産休育休で蓄えた体力が底を尽きたのを感じていたし、息子も同じような感じだと受け取っていた。さらに、ここまで2,3回は希望する働き方について管理職と齟齬があって無茶な提案をされてきていて、私自身疲れていたのもある。
親業と仕事のバランスがとれない。よくある、ワーママの悩み。それに、あいだてさんからいいねがついた。
何を思って押したのかはわからない。ただのタップミスかもしれない。理由なんてわからなくていい。エゴサをしようにも「あいだて」のワードすらないような、いちファンのネガティブなポストに、いいねがついた。それでいいよ、頑張れ、って背中を押されている気がした。
その後、今後数年を揺るがすような決断の日が突然来たものの、この時自分なりに勇気をもらって先のことを考えられていたからこそ、スパッと決断を言い渡すことができたと思う。張り詰めすぎて、珍しくぐちゃぐちゃに泣いて夫に縋るくらいには追い詰められていたけれど、その決断に後悔はしていない。
***
麻雀プロのSNSアカウントをいろいろ見ていると気づくのは、プロの活動だっていろんなスタイルがあるということだ。
ゲスト活動をする人、雀荘を経営する人、そこに勤める人、配信からファンをつかむ人、別の仕事をしながらリーグ戦に参加する人。
あいだてさんは他にお仕事をされているし、ゲスト活動を積極的にしているタイプではない。そのスタイルの中で、ファンは自分にできる範囲で精一杯応援している。私もその中の一人だ。
そもそも雀力が皆無だから、毎日の投稿にいいねを押したりリポストしたりすることしかできない。麻雀を満足に勉強するだけの余裕もないから、たぶんずっと変わらない。
それに、今年の夏のようにあいだてさんがまたいつかゲスト活動をしたとして、私が行けるかどうかは分からない。むしろ無理なことの方が多いと思う。
年中子供の行事はあるし、仕事は8月前半以外いつだって忙しい。休日だって、平日のために家事などやれることをやらなきゃいけない。たまには気兼ねすることなく子供たちを甘えさせてやりたい。根を詰めすぎると体調不良で倒れてしまうから(今年は2回倒れた)、自分が休むことも必要だ。
最近考えて行き着いたのは、私の中心は家族の、子供の穏やかな生活を守ることだから、そこを第一に考えるのは当然だ。
推しは推せる時に推せ。これはその通りだと思うけれど、私の人生において、ここ10年くらいは誰かを全力で推せる時じゃないと思っている。
どのジャンルでも思うが、現場に行くのが偉いのだとしたら、私はぜんっぜん有難いファンじゃない。それでいい。冷静に考えればそれが当たり前の状況だし、私には大切なものがいっぱいある。私に抱え切れるものの量なんて、大して多くはない。
でも、「いつか会えたなら、ありがとうって言いたい」。
あなたの麻雀を打つ姿が、Xを通して見られる何気ない毎日が、一人の人間の活力になっていますよ、と伝えられたらいいなと思っている。
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