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トップと、リーダーシップと、危機的状況。

ひとの上に立つ人、単独で道を切り拓く人に備わってる資質って色々あるけど、やっぱりいちばん大きいのは「決める」力だなと。

このことは昔から何度か書いているけど、そう感じるようになったのはITベンチャーに勤めるようになってからだった。いまベンチャーってあんま言わないんだっけか。いわゆる「ビットバレー」という言葉が生まれたあの時代あの界隈の話。

新卒で入社した会社はデカい広告会社でトップなんて雲の上の人だし、その人たちが何をどう考えてこの会社を動かしてるかなんて一切知らなかった。
でも創業者=経営者で、社長が私より年下の20代というベンチャー(今で言うスタートアップ?)は何もかもが違うので衝撃だった。

トップもボードメンバーもとにかく決定が早い。結論から話し、決めながら走り、違うなと思ったらあっという間に軌道修正する。「なぜこうなったか」「どうしてダメだったのか」よりも「ではいま何をやるか」を考え、すぐ実行する。トップの仕事は「何をやるか」を考えて即決して今日動くこと、という印象が強かった。

その後もお仕事がらみで若い会社の20〜40代前半のトップを色々と見てきて、インタビューもしたりしても、その印象はあまり変わらない。トップはいいことも辛いことも「決める」のが仕事。それをどんどんやっていける人と会社が生き残る。

カリスマ的ワンマン的なタイプでガンガン進む人も多くいるけど、そういう人たちでも社員が増え会社が大きくなってくると次は必ず「社員従業員の気持ちをちゃんと慮らないと人がついてこなくなり、会社は迷走し傾く」という現実にぶち当たっている。なので結果的にいい方法を取れるかどうかは別にしても、「社員がやる気になるか、ちゃんと暮らせるか、嫌な気持ちにならないか」ということをものすごく考えざるを得ない日々を過ごすのだな、というのも分かった。


なので今回のコロナ禍におけるこの国のトップ&ボードメンバーの様子を見ていると、「決めないなあ…とにかく決めないし決めたくないんだな」という衝撃がある。

・決めないことと断言しないことに時間と稼働を使う。
・「動いてはみた」という事実のために動く。
・批判の声が高まるまで何かを変えない。
・従業員(国民)の暮らしと士気にはあまり興味がない。
・というか想像ができていない。

え、なんで??
国のトップには「リーダーとは」みたいな哲学や帝王学ないの?
20代の社長だって日々考えてるよ?


あまりにあんまりすぎて、ふと「社長と国のトップを一緒くたに考えてはいけないのかもしれない」という考えもよぎった。

いま現在、SNSでの首相や政府に対する批判はものすごく多いのだが、その合間を縫うようにして「文句ばっかり言うより自分のできることをしよう」とか「代案を出しもしないのに批判ばかりするな」という声が上がる。
そういう人はたいていよく働く優秀な人のことが多いのだけど、私は「アンタそれは会社における姿勢すぎるよ…」と思ってる。
会社員ならば、当然そうあるべきだと思う。その会社に入りたいと思って自ら入り、会社の利益を上げるために給料をもらっているから。それがあなたの仕事だから。会議で人の案に文句ばかり言って他のアイデアを出さない人は給料ぶんの働きをしていない。いつかクビになるだろう。

だけど国のトップと国民というのはそういう関係性じゃない。
彼らは選挙によって選ばれ、我らの代理人として施政に従事する人たちからさらに選出された人であり、主権は在民なのだ。そのために我々は税金を納めているのであり、「お前それちょっとおかしいよ」と思ったらガンガン文句を言ったり辞めさせたりする権利がある。そこに遠慮も代案もいらない。その仕事はその人たちがやる。第一、国民はそれぞれがそれぞれの仕事と暮らしに既に必死だし。
だから、会社組織における「従業員のあるべき姿勢」をそのまま国民の姿勢に当てはめるのは違う、と私は思ってる。

ということは国のトップに対して企業のトップと同じように「決めろ」「従業員の生活を考えて動け」と言うべきではないのか…?


いやいやいやいや…。

コロナ禍に対応するほかの国のトップの様子を見ていると、いい悪い好き嫌いは置いといて「やっぱそうだよね」と思う。
それが自国民にとって真によい施策だったのかは分からない。でも「思い切った策を決める」し、「私はさまざまな人たちのことを考えている」というメッセージの伝え方もうまい。非常事態においてリーダーらしいリーダーシップを見せつけることで、彼らの支持率も上がりやすくなるし政治生命も延びるのだから当然だ。

だから我が国のトップがその逆をゆくような言動ばかりして地雷を踏んでるのが余計謎なのだ。彼と彼らにとってこのタイミングで「リーダーであること」「リーダーシップを発揮すること」はあんま重要じゃないのか…それとも「私は押し付けません」というポーズなのか…。


3.11のとき、帰宅難民になった社員がたくさんオフィスに残っていた。余震もあるしエレベーターホールには亀裂が入っていたし、今夜もその翌日もここで泊まらざるを得ないとしても、とても怖かったと思う。
その頃、何とか帰宅した社長と役員は差し入れのご飯やお菓子、布団、炊飯器などを夜遅くまで自ら何往復もしてオフィスに運んだ。
翌日以降、無理やりにでも出社しなければいけない人たちもいる中、うちの会社はいち早く安否確認や自宅待機指示の一斉メールを起動させたし、時には社長自らが電話をかけてきて「まだ自宅待機していた方が安全」と言ってくれたりした。
あれは今でもずっと忘れないしこれからも忘れないと思う。


生命にかかわる危機の時こそ、トップの思いや哲学は浮き彫りになる。
ダメ会社員だったしダメ国民である私でもそれだけは日々、感じている。

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あゆみ
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