ITストラテジスト答案晒し2017年午後2問1

第一章 事業概要と特性、経営戦略とIT導入の目的

1.1 事業概要と事業特性

A社は、電子部品の製造、販売をする、従業員500人規模の製造業の会社である。事業部門と本社部門があり、事業部門は工場部門と販売部門を持つ。電子部品業界は、技術開発スピードが早く、開発競争が激しい。また、顧客の要求する仕様が多く、製品ライフサイクルも短い。そのため、過剰な在庫保有は、売れ残りが生じ商品価値の低下や利益の悪化が生じる。このことから、多品種少量生産が求められ、納期短縮を求められる。これに応えることで顧客からの信頼が高まり受注に繋がるという事業特性を持つ。

 

1.2 経営戦略とIT導入の目的

A社は中期経営計画で3年後に営業利益20億円の目標を立てており、そこには業務プロセスの革新により実現する経営戦略がある。A社は現状、工場部門の熟練した従業員の勘や経験に頼って生産計画を策定しており、担当者毎に在庫水準が異なることから、過剰在庫や欠品が生じている。加えて、各部門間の情報伝達は紙ベースの伝票で行われており、情報伝達スピードは遅い。その結果、在庫管理コストの増加や、顧客の納期短縮要求に応えられず信頼を落としている。私はA社のITストラテジストとしてこれを、iot、ビッグデータ、AIなどの最新のITの導入により生産管理業務を自動化し、リードタイム短縮、原価低減を図る。これをIT導入の目的とする。

 

第二章 IT導入の企画、投資効果の検討で重要と考え工夫したこと

2.1 IT導入の企画現状の業務プロセスは、生産部門が策定した生産計画が紙ベースの伝票で、部品調達部門や製造現場に渡され、部品製造及び完成品の製造が行われる。部品納品時や製品の製造が完成した時に、調達部門及び製造現場から完了通知の伝票が生産部門に渡され、在庫情報が基幹システムに入力され、生産進捗を把握することができる。この入力作業は1週間に1回となっており、リアルタイムでの情報把握はできていない。

新しい業務プロセスでは、A社内で蓄積された生産、販売データをAIに解析させ、生産計画を作成し、デジタルデータで各部門に配布される。この情報はA社サプライヤーとも共有され、EDIで部品調達が行われる。生産現場では、RFIDやIoTデバイスを導入し、基幹システムと連携することで生産進捗をリアルタイムで把握する。この生産進捗やサプライヤーの納入実績をさらにビッグデータとして蓄積しAIへ学習させることで、継続的に予測精度を向上させる。

2.2 投資効果の検討で重要と考え工夫したこと

投資効果を検討にあたり、私は投資効果を最大限に、最短で受け取ることが重要と考え、IT導入のRFIDやIoTデバイスの導入に優先順位を付け、システムはクラウドサービスを利用する工夫を実施した。

優先順位付けでは、情報伝達が遅れると生産計画策定に影響が大きい業務から順番に優先順位付けをした。具体的には倉庫業務、組立業務、加工業務の順番となった。

システムのクラウドサービス利用では、複数候補があり、A社の業務プロセスとクラウドサービスの機能を比較し、機能の改修が少ないものを選定した。その際、一部の機能ではA社の現状業務プロセスが成り立たないため、A社の業務プロセスを見直し、クラウドサービスを利用できるように変更をした。

投資効果のKPI設定のため、私はA社の現状の損益計算書とバランスシートを分析した。その結果、棚卸資産高が多く現金が少ないことから、流動比率が低いことと、その結果から在庫管理費が高まり利益を圧迫している。そこで私は投資効果のKPIとして、棚卸資産回転率と在庫管理コストにすべきと考えた。なぜならば、本IT導入により、情報伝達スピードの向上と在庫予測精度の向上から、製造及び調達リードタイムが短縮と棚卸資産高が削減され、そこに関連する在庫管理費も削減されるためである。目標値は、棚卸資産回転率を年間15回、在庫管理費削減額を年間2億円と設定した。IT導入の予算は6億円と設定されているため、投資回収期間は在庫管理費削減額を基準に試算すると3年となる。

 

第三章 事業部門への提案と評価、評価を受けて改善したこと

3.1 事業部門への提案と評価

➀提案内容

前述のKPI設定と期待効果を説明するとともに、期待する効果を得るために以下の提案を実施した。

一つ目は、組織・業務の見直しについて、現状は、設計部品表を用いて、部品の製造を行っているが、今後は、調達部門や生産部門で使用する製造部品表が必要となる。そのため、技術部に部品表管理課を設立し、生産部から人事異動させることで対応する。このようにある部門だけ効率化させるのではなく、A社全体で業務プロセスを最適化させ、トータルで費用削減を行うことが重要であると提案した。

二つ目は、生産現場で必要な新しいルールについて提案した。今回、RFIDやIoTデバイスを利用するため、一日の生産日報が自動的に作成される。このハード機器を使ったルールを作成し、徹底するよう提案した。

三つ目は、推進体制作りについて、生産部、生産現場職員、調達部、品証部、技術部から各メンバー一人ずつと、情報通信部から2名、プロジェクトリーダーはITストラテジストとして私が担い、合計8名の体制とすることを提案した。このメンバーで粘り強い普及・定着活動も推進する旨も提案した。

➁評価

事業部門からは方向性や実施内容に関して良好な評価が得られ、実施に向けて承認が得られた。同時に、推進体制について、事業部門の負荷が高まり、本来業務に支障が無いように工夫して進めてほしいと要求があった。

3.2 評価を受けて改善したこと

評価を受け、私はプロジェクトを進める上で、会議のルールを作成した。具体的には、会議を実施する場合はweb会議とし、移動時間を無くすこと。極力会議の回数を減らすため、メールでのやりとりを推進し、プロジェクトメンバーの調整が効く時間で作業が進められるようにすること。資料は事前にできるかぎり事業部門以外が作成し、事業部門は資料の確認や内容の項目を埋めるだけに準備しておくこととした。改めて、このルールについて事業部門に説明し、合意を得られ本プロジェクトの進め方に関して経営層への報告を進めた。

-以上-



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