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繊細さんと喫茶店で幸せ
先日いつも素通りしていた喫茶店に、母と娘と入ってみた。
私はカフェも好きだけれど、喫茶店も好き。
何故か妙に小さい椅子とか、いつから使っているんだろうと思う程年季の入ったテーブル。
コポコポ言ってるフラスコみたいな、コーヒーサイフォンっていうアレとか。
どちらかというとスッキリと洗練されてない雰囲気が好きで、独身時代はフラフラとよく行ってたと思う。
子供が産まれてからは、子供が入れるお店に選択肢が限られていき、足が遠のいた。
それだけじゃなくて、喫茶店に限らず子供向けでは無い場所は、どう頑張っても結果的に周囲への配慮や子供へのケアで私にもストレスがかかるので、NGという感覚になっていたと思う。
繊細で複雑な雰囲気を楽しむことは、私の娘にとってもストレス。
私の娘は複雑なお年頃で、尚且つ少々繊細なガールである。
お医者さん曰く、娘は視覚情報の処理に脳みそをよく使っているらしく、記憶や絵や色の能力は年齢以上に優れているけれどその反面、早い視覚認識に言語能力が着いていかずにキャパオーバーを起こすのだそうだ。
「この子おませさんなので忘れがちだけれど、言葉で捉えて説明する力は、勿論3歳だよ」と。
そら、そうよね。
何も聞こえなくなり、言葉が出てこなくなる。
それをよく「怖い」と表現する。
だいたい大泣きしてしまうか、だいたいはきかん坊になる。
結果やはり、大泣きする。
時に真っ青になるまで泣いて暴れてしまうのだ。
視覚情報、聴覚情報が多い場所、そして絶妙な雰囲気のある場所、たくさんの人がいる場所、逆に静かすぎる中に知らない人と居ること、こういうシーンはとても苦手なので、喫茶店というあの独特な雰囲気には向かないタイプなわけだ。
そんな娘を連れて、何故喫茶店に入ったか。
それは、
完全に、私の勘違いから起きたこと。
実はそのお店は、ショッピングセンター内の隅っこにちょこんと目立たない形で入っていて。
私は完全にどこかのチェーン店だと思い込んでいた。
入る前に母が「娘ちゃん食べれるのある?」なんて聞くので、「ほら、パンケーキもパスタもあるよ!」とメニューを指さして、スススと入店。
そして入ってみてびっくり。笑
あ、ココはあの独特な喫茶店というやつだ。と。
広い店内にお客さんは一人もいない。
壁にはズラっと個性的なお皿が飾られていて、全くタイプの違うイラスト複製原画コレクションが額に入って飾られていた。
ソファー席にはミスマッチなクッションが敷かれていて、劣化したソファーの座り心地をカバーしていた。
カウンターの奥から、マスターが「いらっしゃいませ、お好きな席ドウゾー」
とても感じの良い方だったので、私は一瞬娘の反応が気になったが「まあ、これも社会勉強~」と思い、ソファー席に座った。
目の前には物が置かれた、真っ白なピアノ。
壁のタイルを見る限り「イタリアン」をコンセプトに作られた内装。
至る所に置かれた剥き出しの備品や、コレクションや写真たち。
私は好きだ。
久しぶりに込上げるワクワク感に「ああ懐かしい」と心地よくなったが、やはり娘の反応が気になり、さり気なく表情を見た。
小さな手で大きなジャンパーを脱ぎながら、娘は不思議な店内をぐるーっと見渡していた。
「テーブルくっつけてあげるねー」
マスターはいい人どころか陽気、そして唐突にやってくる。
「ああ!ありがとうございます、嬉しい。」
「決まったら呼んでくださいねえ〜」
妙なイントネーションの陽気なマスターに、母が俯きながら嬉しそうに笑っていた。
.....あなたも、好きでしょ?
言わずに飲み込み、娘の飲み物を選んだ。
娘はキョロキョロしながらも、その目は冒険心でいっぱいだった。
....大丈夫そうだな、良かった!!!!!
この、「大丈夫そうだな、良かった!!!」
これはイヤイヤ期の子を持つ親や、繊細さんを育てている人なら共感してくれるかもしれない。
めっちゃ嬉しくて、何かが解放されたような「良かった!!!」なのだ。
どこか、こう、安心と共にガッツポーズしたくなるような雰囲気。
注文をする時も、マスターの優しさは溢れていた。
「これだとせセットにならないけど、こっちだと安くなるけど、大丈夫ですー??」
うーん。優しい。
優しいし、このお店で今日は楽しみたいので安くなくていい。
「大丈夫です、本当にありがとうございます。」
「じゃあちょっとまっててねー!!」
注文を終えると、他のお客さんが入店してきた。
娘は気にもせず楽しそうで、ばあば(母)とお喋りに夢中だった。
そこから次々とお客さんが数組入った。
お店が賑やかになった。
だいたい空いてる所へ行けば、人が増えていく。
千客万来いらっしゃいませ現象。
空いてるお店に入るんだから増えて当たり前、なんて思わず、自分が来た所に人が集まったら「ありがたやーありがたやー」とラッキーの合図として捉えている。
実際、こうして後から人が増えたり、並んだりする時には嬉しい事が起きるから。
でも人が増えると、娘は気になって気になって、食事どころではなくなる。
どんなに外食に慣らせても、元々気が散りやすい子なだけに、こればかりはどうにもならない。
筈が、今日は娘のモチベも違った。
情報量の多いこの店内で、陽気なマスター、そして次々に来るお客さん。
これらの要素を全て楽しんでいた。
お喋りは絶好調。
時々高まるバイブス(声の大きさ笑)をそっと抱きしめ「もうちょっとだけ声が小さいとママも嬉しい」と伝えながら、楽しくお話が出来た。
嗚呼、成長!!!!!!!!!!
出てきたコーヒー、紅茶、ジュース。
食事。
どれもびっくりする程美味しかった。
それは雰囲気のせいではなく、本当に美味しかった。
食の細い娘が、よく食べる!!!!
成長!!!!!!!!!!!!!
嬉しくて幸せな事。
繊細な娘が.....この空気を気に入って、食の細い娘が.....もりもり食べる!!!!!!!
それだけで、私はその空間で心からや休まることが出来た。
「これね、美味しいからお母さんの判断でお子さんにあげて。」
心地よく過ごしていると、マスターがメレンゲのお菓子をサービスしてくれた。
かみさまーーーーーーーーー!!!!!!!
八百万のかみさまーーーーー!!!!!!!
マスターさまーーーーーー!!!
このお菓子は!!!!母の!!!!!
大好物ですーーーーーーー!!!!!
「わーい!!私これ買っていくって入った時から決めてたのよ」
だそうですー!!!!!
「ありがとうございます!!母が大好きなんです、頂きます!!!」
もりもり頂きました。
幸せ.....。
大好きな人と
落ち着く空間で
美味しい食事とコーヒー
優しい人。
これは贅沢だな。
そんな気持ちになり、お店を出ようとしたら母が「ここは私が」と。
いや、もう、充分ですよ。
(T▽T)
ありがとう。
お気持ちだけね。
メレンゲのお菓子を買って、会計を済ます時も、マスターは優しい。
「かあわいいねえー。いいこねー。楽しいのー。
その優しさはどこら沸き起こりますか。
私喜んでますよ。
ニコニコしてます。
娘にニコニコ話しかけてくれて、娘もご機嫌で「あーりがとうっばいばーいっ」
私は心からの「ありがとうございます、ご馳走様でした。」を伝えて退店。
心から癒された時間だった。
幸せはこういう何気ない日常に潜んでいる。
私の幸せはそう。
いつも何気ない所に隠れていて、何気なく遭遇出来る。
何かが起きても、悩んでも、こういうことで満たされる。
とても嬉しい時間だったから、あのお店、多分また行っちゃうだろうなあ。
そういうえば最後にマスターが教えてくれたけれど、メレンゲのお菓子は1個70円もする卵で作っているのだとか。
情熱や心を見た気がして。
知ってよかったと思った。
ありがとうマスター!!
だいすきーー!!!