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【映画レビュー】ベティの恋に憧れて~ベティ・ブルー~※ネタバレあり
久しぶりに映画のレビューを書こうと思い、ここ数日何か”観たい”と思える映画はないかと探していた。
そんな時ふと思い出した映画。
”ベティ・ブルー”
この映画に出逢ったのはずいぶん昔。
まだ20歳前だったと思います。
初めてこの映画を見た時、日本映画には無い激しい性描写と想像を絶する結末に ただただ胸が苦しかった事だけが心に残っていました。
概要
監督はジャン=ジャック・ベネックス。女優ベアトリス・ダルのデビュー作であり代表作に数えられる。本能のままに愛し合う男女の姿を赤裸々に描写した、その衝撃的な内容と鮮烈なビジュアルで公開当時はパリを始め、世界的なロングランヒットとなった。原作はフィリップ・ジャン(Philippe Djian)の同名小説。また、本作は2007年にアメリカインディペンデント映画チャンネルとNerve.comが発表した「The 50 greatest Sex Scenes in Cinema」の第6位にランクインしている。
出典:Wikipedia
”ベティ・ブルー”
二度目の出会い
”ベティ・ブルー”を見てから随分年月が経った頃、映画好きな人と話が盛り上がった時にこう聞かれたことがありました。
「恋愛映画で一番好きなのって何?」
「うーん🤔何だろう?」
映画好きな私はありとあらゆる映画を観てきたけれど、最後まで集中力を切らさず(笑)感情移入して観れた映画がどれほどあっただろうかと考えました。
今でも数ある恋愛映画の中からすぐに思い出せる作品は何本あるんだろう?🤔
そう思うくらい私の心の奥に 強烈に印象に残る映画は少ない。
その少ない中、三本の指に入るのが間違いなく”ベティ・ブルー”なのだ。
「ベティー・ブルーかな?」
映画好きなその方も知っている作品でした。
「え、あの映画が好きなんだ…😶」
そう言ったその後、何とな~く気まずくなったのを今でも覚えています。
あらすじ※ネタバレ注意
海辺のコテージで一人暮らしをていた男性ゾルグは家主から言いつけられる雑用で生計を立てていました。
ある日ゾルグは、主人公であるベティに出逢います。
ベティは若く、風変わりで自由奔放。
それでいてとってもキュートでセクシ―😘
そんなベティはウエイトレスとして働いていましたが、店主に嫌気がさし、ゾルグのコテージへ転がり込みました。
激しい愛
二人は惹かれ合い、激しく愛し合う毎日を送るように。
ある日、コテージの家主がゾルグの元に現れ、ベティも一緒に暮らすならバンガロー500軒のペンキを塗るようにと命じました。
ベティはゾルグのペンキ塗りを手伝いました。
一軒目のペンキを塗り終えた二人が記念写真を撮っていた時家主が現れ、更に500軒ものペンキ塗りをしなければいけないことを知ったベティは激高しペンキを家主の車にぶちまけました😱
その後、家主に従順なゾルグに不満を持ったベティは怒りに任せて家財を片っ端から窓の外へ投げ捨てました。
忘れかけた夢
そしてある段ボールを投げ捨てようと手にした時、ゾルグはベティを引き留めました。
実はその段ボールの中にはゾルグが過去に書き溜めていた小説が入っていたのです。
ベティはその小説を夢中になって読み続け、そして心を奪われました。
ゾルグの才能に惚れ込んだベティは、ゾルグが家主と口論になった時
「彼は偉大な作家よ!」
と叫び、家主を2階から突き落とし、それでも怒りの収まらないベティは火のついたランプを家の中に放り込み全焼させ、ゾルグと共にそこ場から逃げ去って行きました。
ベティの友人、リサの居るパリへとやってきた二人は家に住まわせてもらうことに。
早速ベティは、パリ中の出版社にゾルグの小説を送り付けるため 日夜タイプライターへと向かいます。
さらに二人は、リサの恋人”エディ”が経営する”ピザレストラン”で働き始めました。
ある日、一人の女性客の態度に腹を立てたベティはなんと女性客の腕を刺してしまいます🩸
泣き叫ぶベティをゾルグは必死でなだめるのだった。
激高
毎日出版社からの返事を待つベティの元にようやく、返事が届きます。
そこにはゾルグの書いた小説をこき下ろす内容が記されていました。
激怒したベティは返事を書いた編集長の家に押しかけ罵倒し、落ちていた櫛で編集長の顔を傷つけてしまいます😱
後に編集長はベティを告訴するのだが、ゾルグは編集長に家に出向き彼を押し倒し
「ベティは俺の全てだ!俺の命なんだ!言っておくが俺には失うものは何もない!!」
編集長を脅し、告訴を取り下げることが出来ました。
ある日、リサの恋人エディの母親の訃報が入ります。
葬儀に参列するためエディの故郷に行った二人は、空き家となってしまうエディの母親が経営していたピアノ店を任されることに。
穏やかに暮らし始めたはずの2人でしたが、その頃からベティの様子が変わって行きます。
壊れゆく心
才能のあるゾルグが 世に認められない事だけでなく、その現状を受け入れているゾルグに対してベティは苛立ちが募っていきました。
ベティは突然素手でガラスを割り、なだめるゾルグを振り払って走り去ったりと 奇行が目立つようになっていきます。
それでもゾルグはベティ愛し守り続けました。
ベティは20歳の誕生日を迎えます。
ゾルグは買った黄色いベンツでベティをドライブへ誘います。
たどり着いたのは広大な美しい草原。
美しい景色に見惚れるベティに車も土地もベティの為に買ったのだといい、ゾルグは車のトランクを開けバースディケーキを取り出しました。
ベティは心から喜び、二人は永遠の愛を誓い合った。
そんな二人に少しづつ暗雲が立ち込め始めます
。
喧嘩の末に警察が出動する騒ぎになることもありました。
ある時ベティは妊娠検査薬で陽性反応が出ます。
妊娠を喜んでいた二人でしたが、ある時病院からの妊娠検査の結果通知があり、結果が陰性だったと知ります。
ベティはひどく落ち込み精神を病んいきます。
そんな彼女を必死に励ますゾルグは、警備会社を襲って大金を手に入れベティに
「島を買おう!」
と励ましますが、ベティの心はどんどん壊れてゆく。
究極の愛
ある日買い物からの帰り、自宅近くでパトカーとすれ違い、不穏な気配を感じたゾルグは家へと急いで帰ったが嫌な予感が的中し、ベティはすでに病院へ運ばれた後でした。
彼女は自ら自分の右目をえぐっていました。
呆然としながらゾルグは病院へと向かいます。
すると、病室に横たわるベティは鎮静剤で眠らされています。
ゾルグは看護師に促され自宅へ戻るしかありませんでした。
その後、彼の小説を読んだある出版社からゾルグの小説を出版したいと電話が入ります。
彼の才能を信じて疑わなかった愛するベティに知らせようと ゾルグは病院へ向かいました。
ベットに縛りつけられているベティの姿を目にしたゾルグは急いでベルトを外し、小説の事を話しますが、植物人間のようになってしまたベティは何も反応はしません。
彼女の担当医は、彼女は重症でもう理性が戻るかどうかも分からないとゾルグに告げます。
それを聞いたゾルグは激高し、妙な薬を飲ませたからだと大暴れをして病院を追い出されます。
”もう、元のベティには戻らない…”
ゾルグはある決心をします。
深夜、ベティの病室に忍び込んだゾルグはベティに優しく語りかけます
「二人で旅に出よう」
そう言ってベティにキスをし
「僕たちはいつも一緒だ。何があっても誰にも離せない」
眠っていたベティの枕を手に取ったゾルグはベティの顔を枕で押さえ込み窒息死させました。
永遠に
ゾルグは机の向かって原稿を書き始めます。
いつかコテージで撮った二人の写真を見つめるゾルグの視線の先に、二人が可愛がっていた白猫が彼を見つめていました。
「書いていたの?」
ベティの声が聞こえます。
「考えていたんだ」
ゾルグは白猫に向かって答えるのでしたーーーー。
感想
映画に出てくるベティは20歳。
今考えるとまだまだ幼ささえ残っている年齢。
彼女は愛は破壊的ではあるけれど純粋に真っすぐに彼を愛していたのだと思うんです。
計算も打算も何もない奔放な彼女に、ベティより10歳年上のゾルグは強く惹かれたんでしょうね。
最初、この映画を観た時、まだ私は若かった。
恋愛においては、後先を何も考えず真っすぐに感情を相手にぶつけられた頃が自分にもあった。
ベティの影響を受けたわけじゃないけど、ある種憧れに近いものがあったのかもしれません。
ただ、現実はどうでしょう。
どんなことがあっても自分を愛し続け、全てを受け止めてくれる人などそうはいないでしょうね。
若い頃の自分は、年齢を重ねていくということは”失っていくもの”そう思っていました。
漠然と歳を重ねることが不安だった時もありました。
でも今、年齢を重ねたからこそ”失う”ではなく得たものがあると思えるようになっていったんですね。
今でもベティのように素直に真っすぐに自分をぶつけられたらと思うこともあります。
若かった頃そうだったように。
その気持ちは失われたのではなく、今は形を変え持ち続けている、そう自分では思っている。
”ベティ・ブルー”
この映画の結末は一見して衝撃的で悲しいものでした。
とても好き嫌いの分かれる映画だと思うけれど
私は三本の指に入るくらい好きな映画だ。
私はこの映画の結末が悲しいと思わないんです。
男女が出逢い恋に落ちる。
運命の人はこの人だと思って結婚し、やがて家族が増え、夫婦から家族となる。
それでも出逢った頃の熱い想いを持ち続け、やがて死が二人を別つ日までそばに居れら…。
それらもしかしたら普遍的と言われる幸せの完成形…なのかもしれない。
でも…
ベティとゾルグは出逢って惹かれ合い、やがて2人は永遠の愛を誓うけれど、彼を愛しすぎる故にベティの心は壊れてゆく。
そんな彼女は 不幸だったのだろうか。
ベティの愛し方は刹那的だったかもしれない。
それでもあんなに盲目的にゾルグを愛せたことは幸せだったと思うし、そんな彼女に出逢えた彼もまた幸せだったんじゃないかな。
ゾルグは元に戻ることのないベティを自らの手で殺めたけれど、彼女にとってそれは本望だったのだと私は思う。
やっと心穏やかに お互いの心が一つとなり離れる事なくそして 死が二人を別つこともなく、永遠の愛を手に入れた。
死は決して肯定されることではない。
かといって必ずしも否定されるものではないと、この映画をみると強く思う。
もちろん現実の世界に生きる私はこんな刹那的な恋愛はできないだろうけど。
それでも、こんなにも愛し、愛されることが出来る人と出逢えることがあったのなら、やはり盲目的に愛したいし愛されたい…
心からそう思う。
ベティとゾルグのように。