変わりゆくからこその美しさ
この国にも季節はあるのか。
そう思ったのは、つい5日ぐらい前のことだった。
4月下旬にタイに来てから1度も降っていなかった雨が、5月中旬になって降るようになってきて、下旬には夜になると雷がとどろき、スコールが1時間ぐらい降ることはそこまで珍しいことではなくなった。
ぼんやりと、雨期なのかぁなんて考えていたけれども、ふと、雨上がりの外がこれまでの灼熱のバンコクとうってかわって少し涼しいと感じていた。
よくよく考えてみれば、少しずつ、よくよく見ていないと気が付かないぐらいの差だけれども、生活の中で様々なことが変わってきていた。
駅までの道すがらいつも通る屋台通りのフルーツ屋さんに並ぶフルーツの種類が変わっていたり、タイに下り立った時は息をするのもはばかられるくらいの熱気を帯びていたのに、今は昼間晴れていてもなんとか外出することができる。
1年中日本でいう「夏」だと思っていた国にも確実に季節が存在していたことに、少し嬉しくなった。
確かに、日本の四季とは違う。
あんなに目まぐるしく気温は上下しないし、緑が紅葉したり落ちたり、そして新しく芽吹いたりしない。
それでも、確実に季節がうつり変わる気配を感じて嬉しくなってしまった。
きっと移り変わる儚いものが好きなのだろう。
普遍的にいつまでも続いていくものよりも、咲いたとすぐに散ってしまう桜や、地上に出てから1週間でその命が尽きてしまう蝉。ゆっくりと色を変える紅葉や、降り積もる前にじわりと溶けてしまう雪。
きっとそういった変わっていくものが好きなのだと感じた。
そして、このタイでも、こうやって移り変わる季節とともに人は生きている。
なんだ、何ら日本と変わらないじゃないか。
そう思うと突然にこの国が愛おしく感じた。
私もこの1年、移り変わる季節を感じてゆるりゆるりと生きていこうと思う。
タイに人たちと一緒に、たくさんの変化を楽しんでいこうと思った。
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