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きっとあれは夢のような現実だった
「初めて」はいつだって新鮮に、そして色鮮やかにわたしにたくさんの衝撃を残してくれる。
これまで28年間生きてきて、たくさんの「初めて」を経験してきた。
そのなかでも忘れられないのが初めて海外へ行った経験だった。
当時のわたしは中学2年生。行先はオーストラリア。
外国語が聞こえる飛行機も、パスポートを持って緊張して並んだイミグレーションも、写真でしか見たことがなかった景色も、すべて新鮮で、本当に日本以外の国があるんだ、と、今となっては当たり前に感じていることを初めて実感した。
中学2年生なのに「Father」のスペルが書けないほどに英語がダメダメだったわたし。もちろんホームステイをした現地の学生や、家族と流ちょうに英語で話をすることができなかった。
さらに当時は電子辞書なんてない。父から持たされたスマホサイズの小さな和英辞書一つでオーストラリアに乗り込んだ。
今考えると、なんて無謀でそして大胆な冒険だったんだろうと思う。引率してくれる大人がいるとはいえ、ホームステイの間はもちろんわたし一人だ。
それでも当時の記憶が10年以上たった今でも私の中に色濃く残っているのは、きっと多くの「初めて」がつまっていたからだと思う。
そのなかでも一番きらきらと輝いているのが、お互いの趣味について話ができたことだった。
今ならすらすら言える英語もたどたどしい。単語も分からないものが多すぎていちいち紙の辞書で調べている。今なら考えられないぐらい、一文を伝えるのに時間がかかっていたと思う。
それでもまさに拙いといえるわたしの英語に耳を傾けて、しっかり気候としてくれて、そして諦めずになんども伝えようとしてくれた。
それはこれまでに触れたことがない優しさだった。
それもそうだろう。
当たり前のことだけれども、生まれ育った国、日本では言葉の壁なんか感じたことがない。言葉で意思疎通ができるのが当たり前で、相手に自分の想いを伝えることに苦労したことなんてなかった。
そんな当たり前を簡単に打ち砕いてきて、そして新しい価値観や優しさを心の真ん中に大きく立ててくる。
まさに夢のような現実がそこにはあった。
きっと旅をすると人は優しくなれると思う。
それはきっと旅人が誰かに優しくされることが増えるから。
もちろんスリに遭ったりぼったくられたり、詐欺に遭ったり……。
旅を辞めたくなることに出会うかもしれない。
それでもやっぱりそのあとには誰かの優しさが待っていたりする。
もっといろいろな人が旅をすれば、もっとたくさんの国に友達ができれば。
そうすれば今よりもちょっとだけ幸せな世界が待っているに違いない。
だからわたしは旅を辞められない。
もっといろいろな国を旅しよう。
もっとたくさんの絶景に出会おう。
そして、もっとたくさんの人に出会おう。
もらった優しさをどこかのほかの国でそっと返しながら、新しい優しさを運んでいく。
幸せの連鎖がきっとまた新しい旅を運んできてくれるから。