"DIVIN" Vol.31
『DIVIN』(ダイヴィン)は、国内外の様々な記事や読んだ本、面白いinstagramアカウントなど、生活している中で得た「誰かに教えたい情報」をお伝えするニュースレターです。
先日、週末を使って関西を旅行した。
春に京都に出張に行ったが、それが中学3年生の修学旅行以来だったくらいの自分だったので、関西は殆ど行ったことがない。
新幹線で京都に向かい1泊し、そこから三重、滋賀を車で回った。今回の目的の一つは三重にできたVISONという巨大施設。
実際に訪れるとそのスケール感も、空気感も、そして各店舗の設計やデザインも含めて参考になることが多く、とても刺激的だった。
書籍やインターネットで情報を収集することも好きだが、やはりリアルに体験したことにはどうしても敵わない。どんなにその建築家の話を記事で読んで知識を深めても、その場に入った瞬間に感じた感動や驚きが一番だ。
頭で覚えたことは忘れてしまうが、経験・体験したことは中々忘れることがない。
今後も自分の足で、自分の時間を使って経験することを続けていこうと思った週末だった。
消費者と一緒に成長するブランド
2014年にGlossierが発売されたとき、創業者のEmily Weissの周りに、発売前の開発プロセスに対してフィードバックを提供していた人々がなんと1,000人もいたことはあまり知られていない。
これらの人々はアーリーアダプターと呼ばれる。いうなれば「ファン」という言い方が近いだろう。
この1,000人もの潜在的なファンのお陰で、Glossierは大成功をしたと言える。
それ以来、消費者と一緒に商品を「共創する」というコンセプトが広まり、各ブランドはあらゆる面で協力を求めてる。
パーソナルケアブランド「Curie」の創業者であるSarah Moretは最近、新しい保湿オイルの価格設定を消費者に相談したことをTwitterで伝えた。
ランナー向けのCBDハイドレーションブランド「OFFFIELD」は、開発中の製品について、消費者からフィードバックをしてもらう「Labs」プログラムの立ち上げを進めている。
一方、以前このDIVINでも紹介したこともある「Geneva」などのソーシャルプラットフォームでは、スキンケアのスタートアップ「Bubble」、生理用品の「August」、アパレルブランド「Uncle Studios」などのブランドが、そのブランドや製品の将来について議論する「フォーラム」を作る目的として利用している。
こういったものは、日本ではまだ中々馴染みがない取り組みだろう。InstagramやTwitterで消費者とコミュニケーションをとる企業、ブランドは増えてきたが、「共創する」という目的は珍しいと思う。
開発においてフィードバックを得ることで製品の完成度を上げるという目的もあるが、何といっても発売前に潜在的な顧客のコミュニティを駆使することで、ブランドは製品発表時の顧客を確保することができる。
が、一方でその膨大な量のフィードバックを検討するだけでなく、彼らのアイデアがまったく実用的でなかったとしても優しく説明するスキルも必要となる。そのため、ブランドにとっては、きちんと紳士的に対応する社内環境の整備や覚悟は必要だ。
以前、DIVINでも紹介した、Pattern。
ホームオーガニゼーションブランド「Open Spaces」を立ち上げる前の9カ月間、「Space and Time」というウェブサイトを運営し、顧客たちには新しいeコマースブランドのように見せていた。
人々は購入したい商品を見て回ることができ、3,000人もの人々がこのサイトにアクセスしていたと推定される。面白いのが、このサイトでは、実物そっくりの3Dを商品として紹介していたこと。
サイトの制作は今や数日で行うことができたため、顧客たちの反応もすぐに確認することができたと言う。
その結果、このサイトを運営していく中で、「消費者がホームオーガニゼーション製品を選ぶ際に、実際に使いたいものではなく、見た目で選んでいる」というインサイトを得た。
その結果、Open Spacesはサービスのローンチ後、製品の購入後に機能的なアドバイスを購入者に伝えるというケアの仕方になったそう。つまり見た目で選んだ人たちに対して、購入後に機能の訴求を行うというプロセスだ。購入時にたくさんのことを伝えても意味がない、というインサイトだ。
日焼け止めブランド「Everyday Humans」は、積極的にインフルエンサーを利用している。それはただプロモーション、PRのためというよりもより異なる点で関係を作っている。
ある時、インフルエンサーがブランドが考えてもみなかった製品の販売方法を考えていることに気付いた。
あるインフルエンサー、クリエイターたちは『美しく、ツヤのある健康的な肌になる』とその日焼け止めを訴求していたが、それはブランドでは思ってもいなかったコピーだったという。
自分たちのフォロワーに対して、どう伝えれば刺さるか、を考え抜いている彼らだからこそ出てくる表現なのだろう。広告代理店やブランディングエージェンシーのコピーライターとは異なる視点があるのは当たり前だ。
以降、Everyday Humansでは、クリエイターと1対1のフィードバックを求めたり、グループ調査を行ったりして、プロダクトのデータや訴求ポイントを収集し、解決策を考えている。
サステナブル市場に入り込むアルコールブランド
ジョニーウォーカーやスミノフ、ギネスの親会社であるディアジオ社は、サステナビリティ(持続可能性)に”投資”するアルコールブランドだ。
ディアジオ社は今年9月に、ケンタッキー州に72,000平方フィートのカーボンニュートラルな蒸溜所を開設した。ここでは、年間1,000万ガロンのウイスキーを生産する予定。
蒸留酒の製造において持続可能性やトランスペアレンシー(透明性)は新しいものではない。特に、様々な小規模なクラフト蒸留所が、カーボンニュートラルやフェアトレードを謳ってる。
しかし、ディアジオ社のカーボンニュートラルへの取り組みは、大手メーカーのサステナビリティへの関心の高まりと、より透明性の高いブランドの製品を求める消費者の声を反映していると言える。
しかし、クラフトブランドのオーナーたちは、大手スピリッツメーカーがサステイナビリティに参入するにつれ、グリーンウォッシング(環境保護を主張しながら、実際には環境保護を行っていないこと)の可能性を懸念している。
ディアジオ社の新しい蒸留所は、ブランド初のカーボンニュートラルな工場であり、昨年11月に発表された同社のサステナビリティ・アクション・プランに沿ったものだ。
この計画では、ディアジオ社は2030年までに「直接事業」における炭素排出量を正味ゼロにすること、「間接的な炭素排出量」を50%削減すること、水の使用量を30%削減することを約束した。
ニューヨーク大学の研究によると、サステナブルな方法で販売されたプロダクトはそうでないものに比べて、速いペースで成長すると言う。
他の小売業者や市場と同様に、アルコールにおいても同じ流れが来ていると言える。
同じく大手であるバカルディ社も、"サステナビリティはすべての消費者の心の最前線にある "と述べており、注目している。
カリフォルニアに拠点を置くGreenbar Distilleryの共同設立者であるMelkon Khosrovian氏は、カーボンネガティブな方法でブランドを運営しており、ボトルやRTD(ready-to-drink)パッケージが売れるたびに木を1本植えている。
彼は、ブランドがサステナビリティの実践よりも、見た目や市場でのサステナビリティを重視してしまうことがよくあると言う。
また同社では、混乱を避けるために分かりやすいメリットを強調するようにしていると言う。
『農地や水域をきれいに保つために』ではなく、『よりおいしいお酒を楽しんでいただくために、オーガニックなスピリッツを作っています』と言ったり、『売上の何パーセントかを植林活動に寄付しています』ではなく、『ボトルを1本買うと、地球をきれいにする木を1本植えます』と言っているという。
サステナビリティの問題は本当に実践されているのか、単なるプロモーション、マーケティングの一環ではないか、という疑いが中々払拭されない。
そのため、「透明性」の視点でより消費者に分かりやすい表現を心がけている。
どんな行動をするか、というだけでなく、そもそもそのプロダクトはどうやって作られているのか、どこでどんな人が、どんな農園で作っているのか。
本当にイチから環境やサステナビリティに向き合っている小規模なブランドたちだからこそ、説明できるとしている。
サステナビリティに関心を持つことで、それが必ずしも市場でのシェア拡大に繋がらないかもしれないが、Z世代を中心とした、こういった側面にも興味を持つ人達がアルコールといった古い市場に入っていくことで、地球を守るために何をすべきかという期待も、より多くの人の心に芽生え始めている。
今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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edited by Ayumu Kurashima
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illustration by @mihirayuta