見出し画像

【ブラジル】アマゾン川編 ハンモックに揺られて、風に吹かれて

2018年5月の南米での思い出。

...........
お久しぶりです。
16カ国約7ヶ月間の中南米の旅も終わり、アメリカ、そしてカナダにやってきました。

今回は、南米旅の終盤で行ったアマゾン川での旅について。

「アマゾン川を旅する」

それはこの旅で果たしたいことの一つでした。
ルートは、ブラジルのベレンという町を出て、国境を越えてペルーのイキトスまで。距離は3,700km。2週間以上かかる長い船旅。

スタートはアマゾン川河口の町ベレン


ベレンはアマゾン川の河口の町。つまりアマゾン川の最下流部。そして、イキトスは「陸路でアクセスできない町」としては最大の町。 この町を起点にジャングルツアーなどが開催されている。
更に上流までは行けることは行けるが、このイキトスから首都リマにフライトで戻るため、イキトスをこの旅のゴールにした。

サンパウロから飛行機でベレンへ。
中心部に近い宿に宿泊する。ドミトリーで1泊600円。 食事はいつも通り自炊をし、節約。

乗ろうとしているアマゾン川を走る船は、週3日ほど出航している定期船。乗客はほぼ地元の人々で、交通機関として使われている。

「ハンモックを持参し、船の上で生活しながら移動する」。

そんな船の存在を知ったのは、90年代にこのルートを旅した、ある旅人の本を大学時代に読んだのがキッカケ。そこから「いつかやりたい!」と、長年思っていました。
そのルートに一人、チャレンジしてきたのが今回の旅。

出航に向け準備をすすめる

船のチケットを販売する店へ。
港の公式な売り場で買うよりも安く購入できるとのこと。

本来は何箇所かで下船し、小さな町に滞在しな がら旅をする予定だったが、想定よりも時間 がかかることが分かる。
マナウスというアマゾン川流域最大の都市まで向かうチケットを購入する。200レアル(約6,000円)。
出発は翌日の18時。

出発までの準備を始める。
川沿いに広がる市場や露店を回る。一番大切なのは、今後の寝床となるハンモック。

ハンモック屋が軒を連ねる通りに向かい、品定め。その質も値段もピンからキリまである。2人が寝れるようなサイズでおしゃれな刺繍が入ったものは150レアルほど(約5,000円)。

一人旅の男にはそんなものは必要ないため、最安値のものを出してもらう。25レアル(750円)。
作りも案外しっかりしており、これで問題なさそうだ。船の柱(フック)に引っ掛けるためのロープも5レアルで購入する。

市場に向かい、ビタミン摂取のために果物を買う。
薬局で蚊よけスプレーも購入。マラリアもデング熱も怖い。デング熱には当分かかりたくない。というか、また掛かったら死んでしまうらしい。船で過ごす時間はいくらでもある。Kindleに本をDLしまくった。

いよいよ船へ。

早目に船に向かう。ハンモックの場所取りのためだ。

乗り場となる船着き場は町の外れ。宿の人に聞くと強盗が起きたりする治安が良くないエリアとのこと。
タクシーで行っても安いのでオススメされる。ベレンにはUberも走っており、300円で行ける。

出港の3時間前である15時前に到着。
紙製のリストバンドを受け取る。夏フェスで付けるようなアレだ。そのリストバンドの色で行き先 (チケット)を区別しているようだ。

先客はまだ4人ほどのおじさんたちのみ。
おじさんたちの寝床をチェックしていると、コンセントから延長ケーブルをつなげ、ケータイを充電している。

ネットで事前に調べたところ、「バックパックを括れる柱の近く」「食堂の近くは虫が出るため、あまり近くない場所」がオススメされていた。
その条件を満たし、おじさんたちから遠くない位置にハンモックを吊るす。が、吊るし方がよく分からず、おじさんたちに手伝ってもらう。

番号が振ってあるフックにハンモックを掛ける


いよいよ出発!と思いきや...


ハンモックに早速横になる。
おじさんたちがビールをご馳走してくれる。2缶飲み、昼寝する。

予定の18時を過ぎるが乗客も増えず、そして出発する 雰囲気も無い。
数時間の遅れは日常茶飯事と聞いていたので、気にしないで本を読みながらハンモックに揺られる。写真を撮ろうと一眼レフを手にするが、電源が入らず。まさかのタイミングで故障する。

辺りも暗くなり21時過ぎとなるが、まだまだ出発しない。
おじさんに聞くと翌朝6時に出発とのこと。まさかの翌日発。仕方ないので、蚊よけスプレーを振りかけ、ハンモックで眠る。数時間おきに起きるが、何だかんだで朝まで眠る。

朝6時を過ぎるが、まだ船に荷物を積み込み作業をしていたりと、のんびりとしている様子。
違うスタッフに聞くと、出発は今夜の18時とのこと。
数時間どこではなく、丸1日の遅れとなる。洗濯をしたりし てまったり過ごす。

ゴム紐を張り、手洗いした服を干す


午後になると乗客も増え始め、夕方にはたくさんの色とりどりのハンモックが船内に並ぶ。
乗客は家族連れや若者など、まさに老若男女。見たところ、旅行者は自分以外には1人しか見当たらない。

最高だ。
本当に噂に聞いていた通りのローカルな雰囲気。

船は結局19時半に出発。すでに自分は2日目である。すでに思い出がたくさん。 幸先いいスタート。
トラブルも予定外な出来事も起これ起こるほど、記憶に残る。

船は走り出すと、当分は止まることなく走り続けるため、虫は少ない。蚊もおらず不快感はない。

ハンモックの良さを実感する。ハンモックは涼しいのだ。
風が通りやすく、蒸し暑さをあまり感じない。そして、各自ハンモックの下に荷物を置くため、空間を有効活用できる。よくできている。

所狭しと並び、船の動きとともに揺れるハンモックを眺める。
これが床に寝るスタイルだとこんなに多くの人が寝れないだろう。ハンモックがひしめき合う。およそ150人ほどが寝ているだろうか。

まだ空いてるとき。最終的にはびっしりの「満席」に。


始まった、船上での生活


起床し、市場で買っておいたグレープフルーツを食べる。
周りの人とお喋りをする。ポルトガル語はスペイン語に似ていると聞いてい たが、全然理解できない。聞き覚えがあるスペイン語の単語に似た言葉を聞き分けては、 必死に意味を考える。
横のハンモックで眠る青年や、向かいの女の子”アマンダ”と遊ぶ。

ベンチに座り、景色を眺める。
川というよりは、海や湖のように広大なアマゾン川を眺める。


アマゾン川の流域面積は日本の面積の約19倍。
川岸にポツン、ポツンと家が建つ。船のスピードはそこまで 早くないため、家の様子や人々の表情、着ているTシャツの柄まで見える。

実はスピードボートという、日程も3分の1ほどの早さで行ける船もある。だが、それでは景色やこの生活の雰囲気は味わえない。やはりローカルボートにしてよかった。

より深い支流に行ったところに住む人々に会いに行く「アマゾンジャングルツアー」は、マナウスやイキトスの旅行会社から多く出ており、欧米人旅行者に人気なツアーだ。

しかしこのツアーの詳しい話を聞くと、何か作られた感じがし、自分はこのツアーに最後まで興味が持てなかった。
帰り際にチップをもらい、観光客慣れした「不自然な自然」よりも、この船旅が自分にはリアルに映る。
そこには彼らのいつもの、ありきたりな日常生活があるのみだ。

アマゾン流域にはジャバリ地区という、ブラジル政府が先住民の文化を守るため侵入を禁止し、保全しているエリアがある。
地区といっても、九州ほどの大きさだ。このエリアに は、未だに吹き矢を使った狩りをしていたり、裸のような服装や伝統衣装を着た民族が存在する。
この地区に入るには、取材などでの許可が必要で一般人が入ることはかなり難しいそうだ。

どんな場所なのか、どんな暮らしなのかアマゾン川を眺めながら考えた。

バナナやカカオ、アサイーの木が並び、時には家畜を持つ家もある。
そんな景色を眺めていると、「ボチャン」と音がする。横を見ると、川へビニール袋を投げる人々。
ゴミを捨てているのかと思いながら見ていると、船が作る波を乗り越え、小さな手こぎボート でその袋へ向かう子どもたちの姿が。

近くの人に聞くと、ビニール袋の中には着なくなった服 や、食べ物、果物などが入っているそうだ。
特に決まりはなく、中身は何でも良いとのこと。

”出待ち”をしてるボートが現れる度に、船から2、3 個のビニール袋が宙を飛ぶ。


3Fにある売店で食券を買い、1Fにあるキッチンに向かう。

タコライスのような、白米と野菜、肉がごちゃまぜになった丼。
量も多く、美味しい。節約のため、朝はフルーツ、遅いお昼にこの丼。 そして夕食は食べない生活にする。

船内にはシャワーもある。その水はアマゾン川の水をろ過して使用しているため、流れ出る水は少し茶色だが浴びれるだけ十分だ。
飲用水はサーバーがあり、無料で飲み放題。

船内の生活は悪くはない。
限られた空間の中で、毎日生活しているため次第に顔なじみの人もできてくる。
すれ違う度に声を掛けてくれるおじいさんや、朝ごはんをおすそ分けしてくれるおばあさん、アマンダや初日にビールをくれたおじさんなどだ。

「同じ釡の飯を食い、寝床をともにする」だけあり、次第に一体感が生まれ、会話はジェスチャーを交えながらではあるものの、急速に仲が良くなる。

旅行者が珍しいこともあり、みんな話し掛けてくれる。

風邪気味のおじさんに薬をあげ、彼の実家や仕事について話を聞く。
アマンダにiPodを貸してあげ、日本の音楽を聞かせてあげる。

船にはTVもある。
丁度その時はサッカーCLの準決勝、リバプール対ローマ戦があり、アンテナの角度を合わせら皆で観戦した。
テレビに映るブラジル人選手の活躍をともに喜ぶ。

昼間は移り行く美しいアマゾンの自然と、たまに現れる人々の暮らしぶりを眺め、夜は満月と星空を眺める。

場所により生えている植物が変わり、その雰囲気も大きく変わる。その豊かな多様性に驚かされる。
あるとき、いきなり眼前に広大な草原と花畑が広がり、その黄色の花のあまりの美しさにハッとした。その景色はまるで幻のようだった。

そして、「どこにでも住んでいる人々」の存在、言うなれば人間の強さにも驚かされる。

近くの村や集落で必要な物品を得ているのだろうが、何時間、いや何日掛けて向かうのか。
どんな食事なのか、どんな1日を過ごしているのか、と興味がわいた。

船は時折、町に寄港し、沢山の荷物を積み降ろしする。果物や野菜、飲料、食品、家電、 なんでもだ。

その作業を待つため、大体3時間ほどの寄港となる。久しぶりの”地面”を楽しむため、人々に続いて船を降りる。
小さな町を歩き、商店を見つけてビールやチョコを買う。 船の売店でも買えるが、こちらの方が少し安 い。


船は6泊7日掛け、この船の終点のマナウスに到着した。

乗客たちは途中途中の町で乗船、下船していくため、マナウスまで行く人は少ない。
満杯だったのが嘘のように、ガランとした甲板。マナウスに近付くと沢山のビルが見えてくる。久しぶりの大きな街。
アマンダにねだられ、別れ際に着けていたブレスレッ トをプレゼントした。


ようやくルートの半分が終了

次の目的となる国境の町、「タバチンガ」行き は3日後のお昼だった。そのため、このマナウスには2泊することに。
1週間ぶりのインターネットでメールやSNSを確認し、今後の旅の情報を集める。
マナウスは蚊がとても多い。船よりも不快だ。

タバチンガ行きのチケットを買うために、港の売り場へ。350レアル(約 10,000円)。ベレン−マナウス間よりも少し高いが、今回は3食付きとのこと。タバチンガまでは、また 6泊7 日の行程だ。

売り場の近くを出ると、多くのダフ屋がいる。
話を聞き、値切り交渉をすると320レアル まで落ちる。

持っているロンリープラネット には「偽チケットを買わないよう注意を。オススメしません。」との表記。
少し信頼でき そうなお兄さんを見つけ、320レアルまで下げさせてチケットを買う。

出発当日、安宿を早目に出て港に向かう。
出港は12時だが、ハンモックの場所取りのため9 時到着目標で向かう。目当ての「DIAMANTE 号」まで向かい、チケットを見せて乗り込む。

ハンモックをかけられる居住スペースは1F と2Fがあり、どちらにしようか迷うが何となく1Fにする。

前回と同様に、コンセントと柱の位置を確認しハンモックを吊るす。
今回の船は壁がある。眺望を考え、窓から近い場所にす る。外見は立派だったが、設備自体は前回の船とそこまで変わらない。

船は14時前に出発。たった2時間遅れなので優秀だ。
窓から景色を眺めて過ごす。



夕方になり、食堂へ。スープとパンの夕食。 なかなか美味しい。
同じく国境まで向かうベ ネズエラ人と出会い、スペイン語で話せるので一緒に座り、食事をとる。

19時頃には辺りは暗くなる。本を読み、のんびり過ごす。お蔭でこの1週間でかなりの本が読めた。

今回も蚊はおらず。念の為蚊よけスプレーを振りかけ、寝床に入る。
寝る姿勢もコツをつかみ、よく眠れるようになった。
ハンモックに普通に真っ直ぐに寝るよりも、斜めに対角線の向きで寝た方が広く、そして脚を上げる必要なく、平行になれることを知った。(次はいつ使う知識なのか)

朝はサンドウィッチ、昼と夜はご飯と肉、気持ち程度の野菜という献立。
そんな生活をまたしても1週間続ける。

近くに陣取っている家族のおばちゃんに、植物を指さしては何なのか教えてもらう。

国境に面した町タバチンガにようやく到着。
ベレンを出発して16日。ついにアマゾン川を上り、ブラジル横断を果たした。広い広いブラジルもようやく終わり、ペルー入国が近付く。

いよいよゴールのとき


タバチンガでゴールとなるイキトスへのチケットを買う。
この経路は今までの船と異なり、スピードボートが一般的となっている。
翌日のチケットを買い、ブラジル出国の手続きを行う。1ヶ月滞在したブラジルともお別れ。

国境ペルー側の町サンタ・ロサ島へ。

このエリアは世界的にも珍しい3カ国(ブラジル、ペル ー、コロンビア)の国境エリアとなっており、ペルー側へはアマゾン川を挟んで対岸、 コロンビアへは陸続きでタバチンガから歩いて行ける。日帰りであればスタンプもいらずにサクッと行けるのだ。

サンタ・ロサ島でペルーの入国手続き


2月以来の2回目のペルー入国だ。船の出発は午前3時。遅めのお昼を食堂で食べる。
小さな町をあてもなく歩くが、 すぐに行くところは無くなってしまう。本当に入国審査場と食堂、船会社しかない小さな町だ。

出発が時間も時間なので、どこで時間を潰そうか悩む。夜中まで空いているような店は 中々無さそうだし、夜中に出ていくのにわざわざ宿に泊まるのは勿体無い。

そんなことを考えながら、昼食を食べた食堂のおじさんと色々お喋りしていると、
「ハンモック持っているか?店に吊るしていいから、時間まで寝てていいよ」と言ってもらう。

夜になると、ハンモックを吊るすのを手伝ってくれ、店の扉の締め方を教えてくれる。

「おやすみ。良い旅を。」

優しい声色で目の端に皺を作ってお別れをしてくれる。

こういう出会いこそが旅を忘れられないものにしてくれる。そして、旅をしてて良かったなと思う瞬間だ。

美味しい食事も、綺麗な遺跡も同じようなモノ・場所に出会うと記憶が風化してしまったり、どうしても感動度が下がってしまう。
しかし、人との出会いや思い出は忘れることがない。

夜中2時に起きて支度をする。お店の扉を閉めて船着き場へ。
小型ボートで船会社まで向かい、3時の出発を待つ。出発時は真っ暗なので すぐ眠る。
ボートのスピードはかなり速い。 揺れもそこまで無く快適。
10時間でイキトスへ到着すると聞いていたが、結局着いたのは18 時。15時間掛かる。最後の最後まで、時間に関して緩い。


ベレンを出発して17日目。3700kmの船旅の末に、ようやくイキトスに到着した。

この3週間弱の生活で感じた事、思いを上手く説明するのは中々難しい。
環境も自然も文化も全てが新鮮で、本当に飽きることはなかった。

最終日の夜、月も消え、空一面に広がる星を船から眺めながら、「やはり、来てよかった。」と思った。

ベレンからイキトスまで全行程を横断した旅人には出会ったことはなく、外国人のバックパッカーも含めてブログの情報を調べても 中々出てこない。
ブラジル人の友人に話しても、そんな行程はクレイジーだ、と言われた。

でも、やってみればやはり楽しい。
「暇すぎて死ぬ。辛い。」なんて、ブログで書いている 旅人もいたが、全くそんなことはなかっ た。

「自身の好奇心に従うこと」、「何事もまずはやってみること」の大切さを、改めてこの雄大なアマゾン川が教えてく れた気がした。

またいつかこの旅をしたい。
その時に、この贅沢な時間で何を感じるか楽しみだ。

船でブラジルを横断し、アマゾン川を3週間弱旅する。そんな思い出と経験は、長く続くこの旅のハイライトになりました。

日本を出て20ヶ月。旅は約10ヶ月目。
アジア、中米、南米の旅を終え、北米、そしてヨーロッパへ。その後はアフリカへ。

それでは、また。

いいなと思ったら応援しよう!