労務担当者はなぜ孤立してしまうのか

はじめまして。ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズの渡邊歩(あゆむ)です。この記事は、労務アドベントカレンダーの12月14日の回として投稿します。

会社と私の自己紹介

ケンブリッジは東京都港区赤坂に本社を置くコンサルティング会社です。元々はグローバルカンパニーの日本法人としてスタートしましたが、アメリカの本社は買収され、日本法人だけがガラパゴス的に生き残るというちょっと不思議な歴史を辿って今に至ります。最近では「働きがいのある会社ランキング」で5年連続ベストカンパニー、OpenWorkで総合評価ランキング3位(2020年12月12日時点)など、ありがたい評価をいただいています。

私(渡邊)は2012年にケンブリッジに入社しました。コンサルタント6年→人事3年です。今は採用、人事企画・運用、労務管理、トレーニング講師などいろいろやってます。電車の運転免許を持っていることが密かな自慢です。

労務担当者は大抵孤独である

一般的に言って、労務担当者は孤独です。今までお会いした他社労務の方も「相談できる人がいなくて・・」とよく仰っているのを耳にします。

私自身、採用や人事制度運用の業務面では孤独感はありませんが、労務面ではやっぱり孤独感はありますね・・。ケンブリッジ社内には手を差し伸べてくれる人がたくさんいるんですが、やっぱり最後まで考え抜くのは自分しかいないし、悶々と本を片手に思い悩む日も多くあります。

どうして労務担当というものは、こうも孤立してしまうのでしょうか?

ループ図で考えてみた

労務担当孤立のループ図 - New frame

私なりの仮説がこれです。あくまで私の観測範囲をもとに書いたループ図ですので、人によって違う可能性はあります。

矢印についている「同」「逆」の見方をちょっとだけ説明します。
「同」は、前の要素と後の要素の増減が同じ方向であることを示します。増えれば増える、減れば減る、ということです。
「逆」は増減の方向が逆になります。増えれば減る、減れば増える、ということです。

もう少し詳しく見てみます。

社外接点断絶ループ

労務担当孤立のループ図 - New frame (1)

①他社事例を活用せず、②独自の意思決定をしてしまうと、③労務面での独自ルール、慣行が増えてしまい、④他社との共通点を見出しづらくなり、⑤他社労務に相談するハードルがあがり、⑥労務担当者の孤立が高まり、①さらに他社事例を活用できず・・・というループです。

「これまでの慣行や労使の取決めでXXという独自の制約ががあって・・」という背景があると、なかなか他社の人に相談しづらくなったり、アドバイスをいただいても参考にしづらくなってしまいそうです。

社内孤立ループ

労務担当孤立のループ図 - New frame (2)

①労務大変そうというイメージが先行し、②社内の労務希望者の数が減り、③配属のローテーションが進まず、④業務のブラックボックス化が進展し、⑤社内に相談できる人が減り、⑥労務担当者が孤立を深めてしまい、⑦その様子から「労務大変そう」と思われ・・・というループです。

ループを加速させる「情報の秘匿性」「勤務制度のバリエーション」「労働法規の難度」

ここまでなら他の業務領域でも同じようなループは起きうるものです。が、労務の場合、「扱う情報の秘匿性」がループをより加速させます。

労務担当孤立のループ図 - New frame (3)

秘匿性ゆえに社内外の相談ハードルが上がります。「いやー、うちは採用の母集団が集まらなくて」という相談は他人に比較的しやすいですが、「いやー、この前社員と退職交渉でモメまして」という相談はやっぱりどこかしづらいですよね。社外向けなら会社のレピュテーションに関わるし、社内なら噂話に繋がってしまいます。

労務担当孤立のループ図 - New frame (4)

勤務制度のバリエーションが多いと、他社労務との共通点の見出しづらさにつながります。一言で労務と言っても、例えばフレックスタイム制・変形労働時間制(1カ月/3ヵ月/年間)/裁量労働制/事業場外みなし労働時間制によって、運用や悩みどころがかなり違うので、「他社の人にちょっと相談してみよう!」となりづらいんですよね・・・。

労務担当孤立のループ図 - New frame (5)

勤務制度と言えば、「労働法規の難度」が「労務大変そう」のイメージを加速させている側面も否定できません。あれ、完全に労務の参入障壁になってますよね。ハマるとそれはそれで面白いんですけど・・。

結果的にこういうループの構造にあるなと感じています(再掲)。

労務担当孤立のループ図 - New frame

個人の資質ではなく構造的に孤立に至るもの

これは個人の性格や資質によって引き起こされるものではなく、そもそもこのような構造にあるんだという理解が大事です。

「自分はコミュニケーション能力が低いから相談できなくなってしまうんだ」「社外との接点が作れないのはやる気がないからだ」と悩んでも仕方がありません。誰しも孤立しやすい状態の中で日々、労務の課題に向き合っているんですね。こりゃ大変ですね。

どうしたらこの構造を変えられるか

この構造はループ状なのでどこかに手を入れれば好循環が回る可能性も秘めています。さて、どこに手を入れのがよいのでしょうか?

少なくとも「扱う情報の秘匿性」「労働法規の難度」などは自力ではなんともしようがありません。このループ図の中では相対的に変えやすい、自分の行動やマインドに手を入れれるのが良さそうです。

ありきたりな結論になりますが、「うちの会社は特別だから・・」と思考放棄せず、他社事例から何かひとつでも参考にできるものはないかを考え、独自ルールを減らしていく。
あるいは、労務の魅力・キャリアパスを社内に発信して、興味を持ってもらうことが大事なんじゃないかなぁと改めて思います。
まぁ言うは易く行うは難し、ですけど。

まとめ

・労務担当者が孤立するのは、個人の資質ではなく構造の問題である
・「扱う情報の秘匿性」「労働法規の難度」が構造を加速させる
・他社事例を活用し独自ルールを減らす、労務の魅力をオープンに発信し続けることで、断絶・孤立ループの加速を少しでも止める

お読みいただき、ありがとうございました。
ケンブリッジではコンサルタントの採用活動も頑張っているので、ご興味があればこちらもどうぞ!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?