購入ボタンをクリックする、そのひと押しが欲しい

駆け出しのライターとして出会ったメンバーたちが、毎回特定のテーマに沿って好きなように書いていく「日刊かきあつめ」です。

今回のテーマは「#器」です。

仕事柄、料理家さんのご自宅で取材をすることが多いのだが、いつも器の種類の多さとその美しさに惚れ惚れする。もちろん器だけじゃなく、カトラリーだとか、ランチョンマットだとか、その他諸々のアイテムの品揃えも素晴らしいのだけれども。聞くと、一点ものだったり、海外で買ったものだったり、やはり何かしらこだわりが感じられるものが多い気がする。その度に「いいな〜」と思いながら、自分もちょっと感化されて、新しい器を買おうかなと思い立ったりする。

でも結局、「家にあの器があるからいらないか…」と思って買わないことが多い。まぁぶっちゃけ、自分は器にときめく性分ではないのだと思う。素敵な器を買ったところで誰かに見せるわけではないし。というか盛り付け方が下手だから、どんな器を使っても映えないんだよな…(元も子もない)。

そんな私なのに昨年末の大掃除で、深めの器をけっこう多めに捨ててしまった。「おしゃれなどんぶりとか欲しいよね〜」とか言いながら。以前知り合いから素敵な器をいただいたことで、「おしゃれな器ってやっぱりいいよね!」と思い始めていたせいだ。いつもは私を止める役の旦那も、いただいた器が素敵すぎたせいかすっかり感化されて(笑)、捨てることにすんなり同意してくれた。

そしたらどうだ、なかなかいい器が見つからないではないか。そのせいでしばらく丼ものが食べれていない。うどんとか蕎麦とかを食べるときも大変困っている。いや、なんで買う前に捨てちゃったんだよ…。

器への情熱が今ひとつ足りていないので、“どんぶりを買わなきゃ”という決意さえもすぐ忘れてしまう。うどんを茹でて、さぁ食べよう!という段階で「そうだ、どんぶりないんじゃん」と気づいたりする。仕方なく、大きめの陶器の保存容器や、スクエアタイプの深皿で代用している。映えないどころか食べづらい。旦那がいなくてひとりで食べるときは、鍋ごとがっついている。いや、大学生か。

さすがに困ってこの間、旦那と通販でどんぶりを探した。良さそうなものがあったものの、なんやかんや理由をつけて購入しなかった(なんでや)。年末の情熱は一体どこにいってしまったのだ。5カ月たった今、私たち夫婦の器に対する情熱はどんどん萎んでいってしまっている。購入ボタンをクリックするだけの、あとひと押しの情熱だけがあればいいのに。

執筆:otaki
編集:鈴木乃彩子

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