『農業でしあわせに生きていく』株式会社鳥越ネットワーク 鳥越耕輔さん
こんにちは。
ぼくは公認会計士をしている「やすひろ」と言います。
会計士って監査をしたり、会計顧問をしたりというイメージが一般的にはあるかと思うんですが、
ぼくはそれとは別に、「食」を支える農業者の方の「想い」をたくさんの人に伝えたいと思ってInstagramのアカウントで『I am』というものをつくりました。
「食」って、人が生きていくうえですごく大切なこと。
昔は自給自足の生活でしたが、今ではスーパー等で食品を買う時代です。
ただこれだと、ぼくもそうなんですが、消費者からすると、どういう人がこの野菜・果物・肉をつくっているかが見えない。。
食べ物をつくるのってすごく大変なことで、悪天候や経営自体の難しさなど、たくさんの困難があると思うんです。
農業者さんがそれを乗り越えてきてくれたからこそ、ぼくたちが口にすることができる「食べ物」があって、食べ物の一つ一つに農業者さんの『想い』が込められていると思うんです。
そんな「食」を支える農家さんの『想い』を、消費者が知る場所を作りたいと思ってInstagramで『I am』というものをつくりました。
例えば同じ野菜でも、どういう『人』が育てたのか、どんな『想い』を込めて作ったのかを消費者側が知ることができれば、消費者側の購買行動が変わってくると思うんです。
「この人が、そんな想いを込めて野菜を作ってるんだ」というのを知れば、知った側は「この人の作った野菜を食べてみたい」という風に感じると思うんです。
少なくとも、ぼくはそうです。
同じ野菜で多少値段が高かったとしても「この人の作った野菜を食べてみたい」とか、「月に一回は絶対この人の作った野菜を食べるんだ」とか、そういった生産者の人の想いに共感・感動して『食べ物を買う、食べる』という消費行動があっていいと思うんです。
食べる側にとっては、野菜の味と共に生産者の想いも噛みしめることで、それが『食べる』以上のものになるし、生産者と消費者が互いに支えあう関係、社会になると思うんです。
ただそのためには、消費者側が農業者さんのことを、農家さん自身の心の深いところにある『想い』を知る場所が必要だと思うんです。
その知る場所を作りたいと思って、Instagramのアカウントで『I am』というものつくりました。
『I am』というのは文字通り「私は」という意味です。
農業者の方それぞれに『想い』があります。
「私は・俺は・ぼくは、、こんな想いがある。これを世に届けたい。こうやって世の中をもっと良くしたい。」そんな『想い』があります。
人それぞれにある『想い』を届けたいという意味で『I am』としました。
これを読んでいただいた方に、その『想い』を届けられたらうれしいです。
株式会社鳥越ネットワーク 鳥越耕輔さん
第1回目は福岡県赤村にある『株式会社鳥越ネットワーク』の代表取締役社長である鳥越耕輔さん(以下、「耕輔さん」)を取材させていただきました。
㈱鳥越ネットワークさんは有機栽培に取り組まれていて、有機JAS・JGAPを取得されています。
また、農業者仲間と共に組合を作り、互いに支えあうとともに「たのしい農業を創る」ことを目指す取り組みをされています。
取材を通して感動したのは、農業に対する想いと、自社だけではなく同業者の農家みんなで農業でしあわせに生きていこう、という想いです。
少しでも、鳥越耕輔さんの、㈱鳥越ネットワークさんの『想い』が読んでいただいた方に伝えることができればうれしいです。
「有機栽培でセロリなんか無理ですよ」と言われるも大成させたセロリ
㈱鳥越ネットワークさんでは、有機栽培に取り組み、有機JAS・JGAPを取得されています。
その有機栽培で育てている野菜の一つに『セロリ』があります。
セロリの圃場に入ると、鮮やかできれいな緑をしたセロリがずらっと並んでいます。
セロリにライトが当たってるんじゃないかと思ってしまうほど、セロリが鮮やかな緑に輝いて見えるんです!
圃場一体にズラーっと並ぶ光景に思わず「おぉっ」と言葉がでました。
有機栽培は、現在は少しずつ社会に普及してきていますが、耕輔さんが有機栽培でセロリをはじめた14,15年前は今とは違う風当りだったそうです。
当時は「有機=作物がそだたない」「有機=儲からない」というイメージがあり「有機栽培でセロリなんか無理ですよ」と周りから言われていたそう。
「見とけよ。絶対作ってやる。」
耕輔さんは、そんな思いで有機栽培に取り組まれたと話してくれました。
ただ、有機栽培を始めて数年間は、病気や害虫にやられて全く育たず悩まされた時期があったそうです。
やっても、やっても野菜が育たない。
やっても、やってもうまくいかない。
思うように収穫ができない。
そんな経験をずっとされてきたと。
セロリが立派に育つまでに10年ぐらいかかったそうです。
ぼくが圃場で見せてもらったセロリはそんな苦難を乗り越えてできたものでした。
圃場一体に育っているセロリを見ると、とてもそんな育たない時期があったとは思えないほどでした。
一つ一つのセロリが、本当に鮮やかにシャキッと天に向かって伸びている様は、すごく綺麗な光景でした。
セロリの圃場の他に、お願いして、収穫したセロリを出荷する作業場も見せていただきました。
収穫したセロリのうち、約67%が商品として出荷され、残りの33%は商品にならないそうです。
茎が少し折れてしまったりだとか、そういったことで、食べれるのに商品とはならないのだと。
33%の方の商品にならなかったセロリを一口食べさせてもらいました。
セロリをかじった瞬間に、おいしい!
すごくうまい。
何というか、甘いというか、味が濃いというか、噛んだ瞬間にパリッとしてセロリの味が、セロリから出る水分と一緒にぐっと口に伝わって、すごくいい味と香りがするんです!
本当に、おいしかった。
これが、有機栽培で育てたセロリなのかと驚きました。
正直、ぼくが今まで食べたセロリとは、本当に全然、違いました。
けど、そのおいしさと同時に
「こんなにうまいものが商品にならないのか、、、」
というショックが大きかった。。
セロリを収穫するまでの労力、有機栽培で育てることの難しさ、それを超えて育てたセロリ。
こんなにうまいものが商品にならない、、、
商品になれなかったセロリの量を目の前で見て、衝撃というか、何というか、ショックでした。
一般的な知識として、農家の方が生産した野菜などの一部が商品にならないという話は聞いてはいたんですが、実際に目の前で見て、そして、味わってみて、リアルにショックを感じました。。
これは、ぼく自身反省すべきことだと思いました。
スーパーや八百屋などで並んでいる野菜はどれも、形がそろって、きれいで、折れていなくて、傷ひとつないものばかりです。
消費者として、ぼく自身もそれが当たり前のようになっていたと、反省しました。
自然の中で育つ野菜なのに傷がひとつもついていないとか、工場で作った機械製品のように当然に新品のような形を無意識に求めてしまっていると。。
もし、消費者の方が変われば、商品にならないものの量がぐっと少なくなるんじゃないかと思いました。
『農業でしあわせに生きていく』
耕輔さんの胸の中には「農業でしあわせに生きていく」という言葉があります。
農業には夢を見ることができて、大きな可能性がある。
農業者として働く人が、夢や希望を持ち、幸せに働けるように。
自社だけではなく同業で頑張る農業者の皆が「農業でしあわせに生きていく」。
このことを胸に、日々、農業に励まれています。
耕輔さんは㈱鳥越ネットワークの他に、自社以外の農業者仲間を集めた組合の運営にも携わられています。
その中の一つに農業者同士が互いに支え合い、より良い農業にするための「たのしい農業を創る協同組合」という組織があります。
取材を通して知ったのですが、農業を取り巻く経営環境は年々とても厳しくなってきているそうです。
人手不足、異常気象、農資材高騰など様々な要因により、農業を営むことが本当に難しい状況。
特に異常気象と農資材の高騰による影響が深刻なようです。
平均気温の上昇によって夏野菜などの実がならない、実がなっても病気や害虫被害が大きいということが起こってしまう。
また、農資材が全体的に高騰し生産コストが増加傾向にあるのに、その一方で、食品自体の販売価格はコストの増加を反映するのが難しい。
野菜の販売価格は上げられないのに、生産コストだけがどんどん増えている状況です。
農業に携わる方の多くの方が、こういった状況に悩まされているそうです。
このような厳しい経営環境でも、農業に携わる仲間同士が力を合わせ、支え合い、ともに農業を通してたのしさや幸福・夢を大事にしていこうという思いから「たのしい農業を創る協同組合」が設立され、その運営をされています。
「野菜は地面にあるから、どうしても農家は下を見てしまって、孤立してしまう。そういう時に、支えあって、農家同士酒の飲めるつながりがあって、夢を見れる場が大事だ。」
こういった想いを形にしたのが「たのしい農業を創る協同組合」だそうです。
「たのしい農業を創る協同組合」の組合員同士が集まった時には、それぞれに一人15分ずつで自分たちの事業内容を話す勉強会をしているんだとか。
お酒の場で組合員同士で集まっても、なかなかみんなの話を聞くことができない。そこで、15分ずつ事業内容を話して、組合員同士が話せる勉強会をしようということになったそうです。
「この勉強会がすごくおもしろい。」
「『こんなことやってる、こんなこともやってる』ということを話せば、そこで質問が出てくる。かなり盛り上がる。」
耕輔さんは楽しそうに笑顔で勉強会の様子を話してくれます。
組合員は20代~70代と、全世代の農業者が在籍されています。
組合員の中には大成している方もおり、そのような方たちと若手の農家さんが触れ合える機会にもなって、農業に大きな夢を見ることができる場にもなっているそうです。
耕輔さんは「たのしい農業を創る協同組合」が、農業者が『夢を見れる場』にもなっていることがとっても大事だ。若い子たちがそういう夢を見れる場になっていることが、とても嬉しいと話してくれます。
嫌いだった農業が、自分の中で変わった瞬間
取材を通して知ったんですが、耕輔さんは昔は農業が嫌いで農業をする気がなかったそうです。
それが、あることがきっかけで農業に対する想いが変わり、農業にのめり込んでいったんだとか。
そのきっかけは、耕輔さんが農業を始めて1年くらいたったころに、Kさんという方が経営されている農園に研修に行ったときです。
(当時のKさんは34歳と若いにもかかわらず、農業で大きな業績を上げていたそうです。)
その研修は1泊2日の研修でした。
研修1日目の夜、研修参加者との飲み会の席で、耕輔さんはKさんの隣に座り、話をきかせてもうら機会がありました。
Kさんから農業の可能性や『こうやったら、こういうことができる』などいろいろな話を聞き、その話を聞く中で、耕輔さんは『農業って面白いんじゃないかな?』と思ったそうです。
研修の2日目にKさんの会社を視察させてもらう機会がありました。
Kさんの会社では20代30代の若い人がたくさんいて、みんなの目が輝いていたそうです。
耕輔さんはその働いている人の目を見て、とても感動したと話してくれました。
「働いている子らみんなの目が輝いとって。
『俺は絶対に飯を食うんだ。農業で独立するんだ。』みたいな目をしよったんよね。
その目を見たときに、あぁ、俺はすごく農業という仕事を馬鹿にしてたなと。。。
どうせやるんだったら、俺もKさんみたいになりたいなって。」
その働いている人達の目を見たときに、耕輔さんの農業という仕事に対する想いが変わったそうです。
農家でもちゃんと車も家も買える。
お金持ちになりたいとか、そういうことじゃなくて、「農家」という職業であっても、ちゃんとした生活ができるんだ。
農家はそういう社会的価値がある職業なんだということを、Kさんに見させてもらってもらったそうです。
当時を振り返って耕輔さんはこう話してくれました。
「自分自身が目標にしてもらえるような農家になれれば、職業としてのカッコよさみたいなんがあるんじゃないかなと思って。
そっからやね。
そっから、自分の何かが変わったちゅうか。」
取材で耕輔さんと話をさせてもらうなかで、耕輔さんの口から「夢」という言葉がたくさん出てきました。
耕輔さん自身がKさんを見て「農家」という職業に「夢」があるんだということを感じた。
そして、農業仲間が集まる「たのしい農業を創る協同組合」ではみんなが農業に夢を持ち集まれる場を大事にしている。
自分だけではなく、農業仲間皆が農業でしあわせに生きていくために、取り組まれていることが、ぼくにはすごくかっこいいよく映りました。
本当に「かっこいい農業」をしている方なんだと。
あとがき
ぼくが耕輔さんに初めて会ったのは、福岡市が主催する有機農業研修会でした。
そこで有機農業に取り組む農業者として、耕輔さんが講師として呼ばれていました。
研修中、耕輔さんが㈱鳥越ネットワークの取り組みについて話されている中で、その言葉の一つ一つに農業への愛情というか、想いというか、そういうものをすごく感じました。
言葉遣いがすごく、丁寧で、謙虚で、それでいて自社以外の農業者へに対する敬意、生産者みんなで農業をもっと良くしていきたい、というような農業仲間への愛情というか友情というか、そんなことを言葉の節々から感じる人でした。
そういった話し方の一つ一つから、「この人はどんな想いをもって、農業に取り組まれているんだろう。話を聞いてみたい。」と思いました。
研修会が終わった後、この『I am』という趣旨を伝えて、取材させてくれませんかとお願いに行きました。
正直、半ばダメ目もとで、断られるかもしれないと思いながら。。
ですが、お願いしたら、あっさり取材をOKしてくれました。
正直、嬉しくて心の中で「ありがとうございます!」と叫びました。
ただ、なんでOKしてくれたんだろう?という疑問というか、不思議というか、「?」が自分の中にありました。
自分から取材を申し込んどいてあれなんですが、、、
自分が逆の立場だったら、取材OKしてるかどうか怪しかった。。
そんな疑問が胸にありつつも、それはとりあえず横において、後日、耕輔さんがいる福岡県赤村まで行きました。
きれいな紅葉の山を眺めつつ、あれを聞こう、これもきこうと考えながら電車にゆられること3時間半。
赤村に着きました。
自然豊かで空気が澄んでとても気持ちのいい場所でした。
取材では、㈱鳥越ネットワークさんの設立の成り立ち、有機栽培について、「たのしい農業を創る協同組合」の取り組み、耕輔さんの生い立ちや夢、農業を取り巻く経営環境などいろいろな深い話を聞かせていただきました。
取材を通して感銘を受けたのは、耕輔さんの農業に対する想いと、自社で働く人はもちろんのこと、自社だけではなく農業を共に支える仲間との繋がりを大切にするという想いです。
福岡市主催の研修会で講師をされているときも、取材のときもそうでしたが、耕輔さんの口からは「農業でしあわせに生きていく」という言葉が何度も出てきました。
それは、自分一人が幸せになるということではなくて、農業に携わるみんなが、そして、みんなと一緒に農業を通してしあわせになっていくんだ、という想いを感じる言葉でした。
助けてほしい、協力してほしいという人に対しては、手を差し伸べて、一緒に互いにもっと良くなっていこう、幸せになっていこう。
そんな気概というかなんというか、想いを何度も感じました。
「あぁ、だから、耕輔さんは取材をOKしてくれたんだな」と思いました。
鳥越耕輔さん、本当にありがとうございました。
㈱鳥越ネットワークさんについて
株式会社鳥越ネットワーク
代表取締役社長 鳥越耕輔
㈱鳥越ネットワークさんでは有機栽培で作ったトマト、また、そのトマトを活かして「トマトケチャップ」「トマトジャム」を作られています!
HPに商品詳細が掲載されています!!