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小品2021052401「うりふたつ」おじいさんの家

 オキザリスの葉をふるんと揺らして隠れたのはトカゲの子だ。青く光る尾が見えたよ。
 君の何代か前の者は、うちの亡くなったおじいさんがどこかで拾ってきた小振りな溶岩の上によくいた。わたしの存在を全く意に介さず、その上で恍惚とした表情で陽を浴びていた。恐竜の王のような風格だったよ。

 南の小窓には3年目のヤモリが戻ってきている。尻尾の巻きがト音記号のようで見事だから、すぐに同じ子だとわかる。
 この家は窓の位置が変だろう?南側には小さな明かり取りのような窓しかないんだ。
 ここはね、おじいさんがアトリエにしていた家なんだよ。絵に直射日光が当たらないよう、南に窓を作らなかったんだ。そしてその唯一の南窓が君のテリトリーだ。

 君たちは、うりふたつなんだ。しゅっと締まった横顔と、クールな物腰がよく似てる。そしてそれは、おじいさんにそっくりなんだよ。この家を住み処にする者の表情だ。
 わたしは君たちには何もしないよ。もう、自分が猫であることを忘れるくらい歳を取ってしまったからね。

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