大学交換留学で見つけた、一生の宝もの
大学3年生だった頃、パリの16区にあるINALCO フランス国立東洋言語文化大学(通称ラングゾー)に一年間の交換留学をした。
本当は第一志望は、文学部が有名なソルボンヌ大学だったんだけど、当時は地方ではなくてパリに留学したいと思っていたので、募集人数が2人だったラングゾーを第二希望にしたら、案の定そっちに決まったのだ。
名前のとおり、アジアの言語や文化を学べる、いわゆる外国語大学なのだけど、フランスの外国語大学に日本人が行って何を学ぶのか?
外国人留学生向けのフランス語の授業を中心に受講をすることができて、何か専門分野を研究するというよりは、語学留学のような感じだった。
だから時間があるときは、現地の学生の授業にもぐりこんだり、大学の卒業論文のための資料集めにパリのシネマテークに通ったりしていた。
留学生は、日本人や韓国人のほか、ERASMUS(ヨーロッパの留学制度)の学生もいて、パリの20区をグループに分かれて町歩きして発表するような、楽しい授業もあった。その授業がきっかけで、イタリア人やスペイン人、韓国人の友だちができて、一緒にイタリア周遊をしたのも思い出だ。
でも、せっかくフランスに来たのだから、フランス人の友達がほしい!と思っていた私。とてもラッキーだったことに、登校初日にたまたま知り合った日本学科に通うフランス人学生が、次々に友人を紹介してくれたおかげで、留学生活の早い段階から、フランス人の同世代の学生たちと親しくなることができた。しかも、日本語を学ぶ=少なからず日本に興味を持っている子たちだったのも、ありがたかった。
フランスの友人たちと出会い、たったの一年間だったけど、濃厚な時間を一緒に過ごすなかで、本当にたくさんのフランスの暮らしや文化に触れることができた。
フランスにもアジア人差別はあるから、もし、まったく日本文化と縁のない大学や学部にひょっこり飛びこんだら、きっとこんなにすぐには現地のキャンパスライフに溶け込めなかったのではないかなと思う。その点では、留学先がラングゾーだったのは、私にぴったりだったと思う。
フランス人は、やたらに愛想をふりまわさない。
自分のスタイルがあって、好き嫌いもはっきりしていて、これは好きじゃないと、キッパリ言ったりする。だから、みんなにいい顔をするということはあまりなく、数少ない、本当に気のあう友人をとても大切にする。
でも一度親しくなると、家族のような温かさで気にかけてくれたり、ものすごく親切にしてくれるから、そういう人づきあいがとても自然で気持ちいいと感じるようになった。
交換留学までさせてもらって、ガリ勉もせずに人間観察をしてきたのかと呆れられそうだけど、リアルな異文化体験だって、それこそ現地でないと経験できないことのひとつだと、開き直ってみる。
地球の裏側に、かけがえのない友人ができました。日本に帰ってきて15年経った今でも、交流が続いていることがうれしい。