見出し画像

夜の阪急電車

夜20時ごろの阪急電車は異空間だ。


最寄駅が阪急電車なのでよく使う。関西人にとっては京都から大阪をまたいで神戸まで伸びている電車でおなじみだけど、それ以外の地域の人には何といえば分かってもらえるのだろうか。ボルドーよりもさらに深い赤色の私鉄。座席はみどり色のふかふかシートで壁はベージュ。たまに京トレインといった特別電車が走っている。電車の中の広告はだいたい関西圏の大学。お昼に乗るとだいたい電気が消えていてその代わりに陽が差し込む。

思い返せば高校時代の電車通学からずっと阪急電車に乗っている。

阪急電車には何だかのんびりとした雰囲気が流れている。JRの何処へでもいけるにぎやかな雰囲気とはまたちがって何だか落ち着いている。社内の色使いや雰囲気がそうさせているのか乗車する人がそうなのか、そこは謎だけれど。

阪急は20時ごろとても空いている。どうやら18時ごろが一番の帰宅ラッシュに当たるらしく、その時間はギュウギュウだ。でも20時ごろは特急なんかも比較的すいているだけでなく、準急や普通のローカル線はガラガラ。たまに車両に1人しか乗っていなくてこのままどこか異空間へ飛んでいってしまうのではないかと思う。


今日の帰りも私の乗った車両には世界から隔離したような雰囲気が漂っていた。

車両には誰もいなくて窓に映る外は真っ暗。ビルも住宅も見えない。社内の電気だけがやたらと光って自分だけに当たっているような感覚に陥る。前も隣にも誰もいない。窓に映るのは自分だけ。

「このまま知らない世界に行くのかな」

そう思っていたら斜め前のシートに座っていたおばさんと目があった。気がついたらそこは自分の降りる駅で車両にはもう2、3人が乗っていた。そうして何事もなかったかのようにドアと改札をくぐって日常へと帰ってゆく。







サポートでいただいたお金は、ライティング力向上の書籍購入に使わせていただきます。読んだ本はまたnoteで感想とともに紹介します。