ob展「螺旋と春」

ob展「螺旋と春」
Kaikai Kiki Gallery


実花さんが監督をつとめられたNetflixドラマ「FOLLOWERS」の中で、コムアイさん演じるサニーが描く絵にobちゃんの作品が提供されています。今回の個展はその劇中にあるサニーの個展を再現した展示でした。


過去の作品を模写したものや新しく描いた作品。それぞれのためのドローイング。と少し変わった展示内容でしたが、obちゃんの画家としてのうつりかわりをもう一度一緒になぞっていくような、そんな見方ができるとても興味深い展示で、今と過去の間にある豊かな時間をたっぷり感じられる圧巻の展示でした。


obちゃんと言えば、たゆたうような淡い色彩で描かれる大きな瞳の女の子が印象的ですが、その女の子にじっと見つめられた時に感じるのが、この女の子はわたしたち不特定多数の鑑賞者に対してなにかを物語っているというよりは、「これは極めて個人的な」というような、わたしたちの知り得ない所在不明のたったひとりの誰か、もしくは何か形のないものに向けて眼差しを、そして想いを向けている気がしてしまい、「わたしではあなたを本当の意味で理解し、救ってあげることができない…」というたまらない無力感みたいなのを感じ、より一層女の子に対して想いが募るみたいな、そんな片想いみたいな気持ちになります。


だから余計、女の子が何を思っているのか、少しでも、ほんの少しでもわかりたくて必死で絵を見ていると、いつのまにか今度は背景に描かれた海や草や花や星や暗闇や色に自分がなったような、つまり女の子を取り巻く環境に転生したような、その立場でなら女の子のことを側で優しく見守れるみたいな不思議な気持ちになってくるのです。


わたしだけかもしれないけどobちゃんの描く周りの景色って、それが暗闇だろうと形のない色だろうと、なんだか全部「優しさ」に思えます。


過去に見た景色や空想の背景でも、お風呂や病院という生活空間であっても、そこに描かれた人物を優しく受け入れる器みたいな、obちゃんの根底にある人間性がそういうところにすごくあらわれているなぁと思いました。



今回、ドラマのためにサニーの気持ちになって描くという経験や、展示のために過去作品を模写されたことはobちゃんにとって過去の自分への理解や許容や再発見という気付きの多い機会だったとおもうのですが、そんなチャレンジを経てobちゃんから「いま調子がいい」って言葉を聞けて、わたしそれがもうめちゃくちゃうれしくて、推しには元気で楽しく長生きしてほしいというお前だれやねん目線な気持ちはもちろん、作品を生み出すという簡単ではないことにたくさん向き合って模索してきたからこそobちゃんが本当に描きたいものが描けているという今の状況は本当に素晴らしいことだとおもいました。



1作品だけに惹かれるとかではなくて、全部の絵がわたしのハートを掴んで離さないという、とんでもない展だったので、ドローイング1つとってもその場からしばらく動けないほどでした。

深く丁寧に物語を紡ぐように描かれた作品を夢中になって見ていたら、あまりにもたくさん聞きたいことが出てきたので、obちゃんにそっと聞いてみたのですが、どれもわぁなるほどそうだったんだっていう発見ばかりで、胸が熱くなりました。

最近、死んでる画家の美術史ばっかり勉強してたもんですから、本人からお話が聞けるってなんて素晴らしくて貴重なことなんだろうって改めて思ったし、とくにobちゃんは「なんとなくこうだから」みたいな曖昧な理由ではなく考えや想いがあるからこそしっかり言語化できるところがより一層最高で、もっともっと聞きたいことがありましたが、ちょっとわたし感激し過ぎて止まらなさそうだったので自重して帰りました(笑)

obちゃん、素敵な時間をありがとう♡


最終日に滑り込んだので展示は終わってしまいましたが、Netflixドラマ「FOLLOWERS」でobちゃんの作品が見れるので、ぜひご覧ください♡