ハマスホイとデンマーク絵画
ハマスホイとデンマーク絵画
東京都美術館
昨年の4月頃、上野の国立西洋美術館の常設展をふらふら見てた時に、ふと立ち止まって見てしまう作品がありました。白やグレー、黒の無彩色に近い色調で描かれた部屋に女性がひとり、背中を向けてピアノを弾いているような絵でした。
なんだかその絵からは「悲しみ」とか「怖い」とか「孤独」とか、なにか作者がこの絵を描いた背景や感情が込められているというよりは、「無」に近い感覚で、不思議と心地いい気持ちになったのを覚えています。
その時既に今年ハマスホイの企画展が隣の東京都美術館で開催されることが決まっていたので、キャプションの横にその案内が小さくかかれてるのを見てあぁこれは気になる、ぜひ見に行こうと思っていました。
わたしにとってのハマスホイデビューはそんなつい昨年の出来事でした。
彼のことを少し勉強してから見にいこうと思いましたが、調べてもなんら大きなトピックは出てこず、波乱万丈なエピソードや絵に込められた謎とかそういうのも無く、確かにわたし最近どの作品に対してもコナンばりに目を光らせて作品を推理してばっかりだったけど、なるほど何もないなら何もないでニュートラルな気持ちで絵を見るのもいいな~と思いそのまま見に行きました。
そもそもデンマーク絵画についてどういう感じなのか知らなかったのですが、1つ1つの作品の間隔が広めに取られた今回の展示方法がしっくりくるような、空気間を感じさせる、幸福感のある作品ばかりで、写真で言うと横浪修さんファミリーのようなテイストだなぁと、おうちに1枚あるだけで、生活が少し良く感じられるようなそんな丁寧な作品が多かったです。デンマークには行ったことがないですが、のんびりした国なんだろうなぁと容易く想像できました。
時代は同じでも国によって文化の違いによって絵も全然変わるの、改めておもしろいなぁとおもいました。
そんな中でハマスホイだけは少しだけ世界線が違うというか、デンマーク特有の多幸感みたいなのとは違い、彼の作品には光を放つというよりは閉じ込める感覚が強いように感じました。カラヴァッジョのように明暗の強度を強くして闇を深く見せているようなわけでもなく、レンブラントのように炎の灯りを繊細に描きわけて叙情的な雰囲気をかもし出しているわけでもなく、フェルメールのように左側から差し込む太陽の光によって生まれる明暗のドラマチックさを感じるわけでもなく、
やっぱりハマスホイから感じるのは「無」で、決して交わることのない目線や誰もいない建物、背中を向けたままの妻イーダ。でもそこには彼なりのユーモアもあるような気がして、単純に並外れてセンスがよかったという気もするのですが、絵を見てこういう感情になるのはハマスホイが初めてだったので不思議な体験でした。
どうせなら額縁も全部モノトーンにすれば、飾った時に調和が生まれていいのに、全部びっくりするぐらいゴールドで、そこまで絵を飾ることにはこだわりはなかったのかな?ともおもいました。絵、描くの好きだったんだろうなぁ。