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「安くていいもの」をやめてみる

なかなかの才能を持っていると思う。
そう、安くていいものを見つけるのが得意なんだ。
きっと、関西人の母譲り。母は高そうに見えて、びっくりするくらいお値打ちなお洋服をちょいちょい買って来る。センスがあってセレクションが上手いんだ。

その点、私はフードが専門。
安うまなお店を見つけるべく、日々開拓。リサーチ件数は1軒行くのに、300軒くらいをザザーっと調べる。自分で見つけて行ったのに、美味しくなかったと機嫌を損ねることもある。足で稼いでいるんだ。安うまを探す極意としては、「高くて美味しいは当たり前。安くて美味しいは、そうない。」だから、探していた。

けれど、この文章を読んで、いつの間にか安いことがいいことだと思っている自分に気が付いた。



ハイエンドを狙うとか、狙わないというのはどちらでもいいんだ。安いことが経営戦略である場合もある。だから、安いことが悪だとも思わない。

ただ、みんなにとってハッピーな形は、どんなものなんだろう。安くて美味しいお店には、生産者さんや料理人の負担が積もっているのではないか。もっと言うと食材を届けてくれる人や、サーブしてくれる人、その家族までもが、わたしの買うその価格によって、もっと豊かになる機会を奪ってしまっているのではないか。

それはわたしひとりのせいではないけれど、わたしが変わらなければみんなも変わらない。わたしが変われば、みんなも変わるかもしれない。

だから、わたしの販売するチーズケーキも、安うま路線から外すことをはっきりと決めた。よくよく考えてみたら、高くて美味しいは当たり前じゃない。そこそこの値段でありながら、そこそこの味でしかないレストランも多い。

それじゃあ、わたしはそこそこの値段で、これまでにないくらい美味しいものを届けよう。そんな姿勢で作っている。

レストラン時代に思ったのは、いくら人気店であっても、なかの人が疲弊している・しあわせじゃなかったら本末転倒だ。なかの人がハッピーだから、わたしたち消費者もそのハッピーを存分に分かち合うことができるんだ。
さあ、勇気を出して高値で行こう。時代はきっと、そちらへ切り変わってきているよ。

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