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フランス視察記③家族セラピーが親子に関わる覚悟と決意
みなさん、タルタルって聞いたら何を思い浮かべますか?たぶん多くの人はタルタルソースですよね。
フランスでは、タルタルと言う名前の食べ物をよく見かけるのですが、バケットとかに載せて食べるこういうやつ。
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ポテトがさつまいも。お通しがポップコーンだった!
私以外の人が食べたのが、おいしいと有名らしい牛肉のタルタル。いずれもすごくボリューミーでした。
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そして、このタルタルに中ってしまった事務局長はお休みとなってしまいましたが、視察の2日目がスタートです。この日は少し時間があったので在仏日本大使館の方まで向かってみることに。日の丸が見えるとなんだか安心しますね。
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手前にモンソー公園、奥に凱旋門、2本左の筋はシャンゼリゼ通りということで、少しお散歩もしつつ。
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シャンゼリゼ通りでは私たちがパリに着いた日に点灯式がおこなわれて、日本でも報道がなされていたみたいですね。この日は昼間だったので、イルミネーションの電線が結ばれているただの街路樹を拝見しながら歩く・・・(笑)
日本にもあるお店に出会うと、これまた安心します(笑)
しかしお値段は安心価格では全くないので要注意。
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この日は平日だったのですが、6人で動いているということもあって、休憩するにもなかなか席が見つけられず・・・さらに鳩が苦手なメンバーがいて、外を歩くにはだいぶ気合いが必要な、鳩パラダイスのパリ市街地。
お昼が近くなり、午後のアポイントに向けて腹ごしらえをしようとするのですが、全員なんだか疲弊してテンションが下がっている感じです(笑)
『昼も軽めでいいです~~』と言うので、軽めっぽいお店を探して提案するも反応もイマイチで(笑)、とりあえず動いてお店に行くという流れに。しかし、どこもめちゃめちゃ並んでいて、さらにテンションダウンのメンバーたち。
で、結局並んでいるお店の隣にあった、並んでいないケバブ屋に『もうここでいいんじゃない!』という誰かの鶴の一声で入ることに。全然軽くないですけど(笑)
しかもみんなちゃんとケバブ頼むのすごい。私はちょっと無理だったので「ベジタリアン」という一番安いやつにしたのですが、全然思っていたベジタブルじゃなくて驚く・・・(笑)
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ポテトのフライ・・・?いや、じゃがいもだからベジタブルなの?肉じゃなければベジタブル?と余計なことを考えてると余計に疲れそうなので、とりあえず与えられたものを食べることに・・・。
でもこのお店、混んでいないからか休憩中のポリスがめちゃめちゃ来ていて、治安良かったです(笑)
そしてほぼ全員がお残しし(本当にごめんなさい)、近くのミロメニルの駅からメトロに乗車。プレザンス駅で降りて歩きます。
パリは落書きが多かったですが、たまに「それどうやってそこに書いたの?」とか「これアートとしてすごいな」とか、落書きということを飛び越えて尊敬させられるものがちょこちょこありました(笑)
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さて、ここまで読んでいただいてありがとうございます。
実はここからが本題なんですよ(笑)。この日お話を聞かせていただいたのは家族セラピーのソフィーさん。
とにかくオシャレなカウンセリングルームに招いていただきました。安發さんより少し早く着いたのですが、ソフィーさんが出てきてくださって「明子を待ってるの?先に入ってる?大丈夫?」みたいなことを聞いてくださいました(フランス語できないので、雰囲気です。笑)
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そして安發さんと合流して、オシャレすぎる空間にドキドキしながらお邪魔します。。。
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ソフィーさんはとーっても明るく出迎えてくださって、こちらでもシュケットとお飲み物をふるまっていただきました。
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そしてここでソフィーさんから衝撃の一言が。
『WEEDSってフランス語だと大麻って意味でしょ?どれだけ刺激的な人たちがくるのかドキドキしたわよー!🍃』と。。。
。。。。た、たいま。。。だと。。。!🤣
(フランスでは大麻は公衆衛生法典で厳しく規制)
もしや今回のアポ先の人たち皆『なぜその名前?』と思ってる・・・?でももうパランパルミルとプレスクリプターは行っちゃった後だしな・・・と、これまた多少の心配をしていたら、ソフィーさんから『きっと、高葛藤のカップルの間に入っても大麻のように穏やかな気持ちにさせられる人たちってことね!』と言っていただいたので『今後はフランスではその説明を使わせてもらおう』ということで徹底的にパクることになりました(笑)
ソフィーさんは長年にわたり、子どもの健全な育ちのために家族セラピー、カップルセラピーをおこなっています。ソフィーさんのセラピーは90分×3回のプログラムで、以下の内容で進みます。
①ジェノグラムの確認・・・家族関係を整理するとともに、その中の人間関係をどう築いてきたかを確認します。
②家族の繋がりの確認・・・どのように出会って家族になったのか?どのように双方の家族に受け入れられたのか?を確認します。
③家族の離別の確認・・・関係が悪くなって心が離れてしまった時にどのようなことがあったのか?を確認します。
これらの3回のセッションで、
・お互いに、相手に何を期待していたのか。
・お互いの良いところはどこなのか。
・お互いにとって、相手の存在が自分の人生にとって良かったことは何か。
など、さまざまな確認がおこなわれます。
ソフィーさんはそれらを通じて、このカップルがお互いに裏切られたと感じることは何なのかを確認し、子どもの親として、どのような支えを必要としているかを考えていきます。
カップルになるとき、人は「約束」を持ち寄っている、とソフィーさんはおっしゃいます。そして多くの場合、その約束は相手ではなく「自分との約束」であることが多いのだと。
たとえば「こんな家庭を築きたい」「自分が生まれ育った家庭のようにはしない」といったことが「約束」です。
そして、これがうまくいかなくなったとき、自分との約束を守れなかったということに向き合うのが苦しいがゆえに、その理由を相手のせいにするのです。
父母間の争いや離別によって、子どもが心を痛めている場合、このように、親が向き合うべきなのに向き合うことができていないものが『カップルの死体』として転がったままになっていて、それが子どもにとっては腐敗臭を感じるために、しんどさになっているのだ・・・と表現をされた上で、『カップルが死んでいることを認めて、埋葬するために死亡診断書を手渡し、そこからの歩みを支えるのが役割』と強く仰っていました。
ウィーズでは「対象喪失体験の浄化のプロセス」という研修をしますが、グリーフケアの視点が離別した親の子どもたちに必要になるのは、こういった理由なんだよなあと新たなことばで言語化された気がしました。
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ソフィーさんは訪れたカップルに対し『ここで話してもらって、満足を得られるのは仕事を円滑に進められるようになる私(ソフィーさん)だけ。当事者のお父さんとお母さんにとってはしんどいこと。けれども、親が混乱していれば、子どもも混乱するので、お互いがいろいろなことを明らかにするために言語化しなければならない』ということを最初に説明されるそうです。
セラピーは必ず父母2人が同席しておこなうため、ここで『話したくない』という親もいるようですが、「でも、これを整理すれば親子関係だってうまくいくのです。そこに取り組みたくないというのであれば、ここには来ないでください」とお話をされるとのこと。
「日本では父母が顔を合わせるのが難しいカップルが多くいて、別室や別日での対応がほとんどです」という話をすると『父親と母親は全然違うことを言わない?それが当然よ。そんなことをやっていたらこちらの頭がおかしくなってしまうわ!』と回答されました(笑)
覚悟を持って臨むソフィーさんを信頼し、親たちはそれに応えながら、3回のセッションを乗り越えます。終わるころにはほとんどのカップルが「4回目・5回目をやりたい」と申し込みをしてくるそうです。
3回、と決めているのは「ゴールを設定するため」。
週1等のセッションだと、当事者からすれば、いつまで続くのか、いつ解決するのか、いつまでお金をはらえばいいのかと不満や不安が募ります。それを防ぐためだというのです。お互いに、問題に真剣に立ち向かうためにも、これは本当に大事なことだなと思いました。
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ソフィーさんの取り組みについて、一通り教えてもらったあと、私たちが扱うケースについてもソフィーさんだったらどう関わっていくか、お話しいただきました。
・子どもの暴力があるケースについては、なぜ暴力をするのかを話させる必要があり、暴力がどのような機能として利用されているのかを確認していくところから始める。
・子どもの問題行動が親の対応からきていることが明らかなのに、それに親が向き合おうとしないケースについては「世界中どこにも子どもを苦しませようとして子どもを産む親はいないのだから」と伝えた上で、あなたもそうでしょう、と確認しスタートする。良いお父さん・良いお母さんになりたいと思ったのになれなかったと思っているところに「なりたかった(なりたい)んですよね」と言って傷つきがあることを認めてあげるところから。
・攻撃的な人のケースについては、支援者側の元気と勇気が必要。クリエイティブに対応できるように2人で対応する。
・新しいパートナーとの関係を性急に進めようとする親には「子どものリズムに合わせないといけない」ということをはっきり伝える。
などなど、とても具体的にお話しいただきました。
家族セラピーの有効なシステムのスイッチをオンできるのは紛れもなく子どもだそうです。子どもの表現を見るところから、家族の回復がスタートするのです。
例えば子どもが誰かに「親に叩かれた」と言う場合、親は、言ってほしくないと感じるかもしれません。
でも、子どもがそれを誰かに言うということは、そういった「いけない暴力」をする親が、まだ変われるということを信じているからであり、もしもどうせ親は変わらないと思っていれば、誰かに言うこともありません。
日本だと触れたらいけないことに触れないようにする価値観があるよね、という指摘があり、それをフランスでは「continuer à tourner autour du pot(壺の周りをまわり続ける)」と表現するとのこと。「本題を避けて遠回しに言い続ける」という意味です。
私から『核心に触れることを言った時に、相手がそこに触れられたダメージに耐えられない状態であるとき、相手が自傷や自殺といった行動に出るかもしれない。私たちの目の前から去ったあとのことまで責任を持つことができないことに不安を感じることがある。』と伝えたところ、
『もし自殺をしても、あなたのせいじゃないでしょう?』と。
あまりにはっきりした回答に、変な声が出る私(笑)
私は私の仕事に責任を持つ。
親であるあなたは、親としての役割に責任を持つ。
よりよく親をするために、話す必要があるし、あなたはその力を持っているから、今ここにきたのです。
責任がある親なら自殺は選ばない。それは、見放すとか、諦めるとか、冷たいとか、そういうものではなくて、親であるクライアントを信じ、愛しているからこそのバウンダリー。
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ソフィーさんからもらった言葉。
『COURAGE ET TENACITÉ(勇気をもって、しつこく)』
人の価値観に触れることだったりもするからこそ、おかしいことをおかしいと言わなければいけないこともあるし、しつこく繰り返し伝え続けなければいけないこともあるのは、私たちの活動でも同じ。
フランスでもこうして、子どもたちのために、家族のために頑張っている人がいるんだなと、私もとても勇気をもらいました。
帰りは宿まで歩きながら、ソフィーさんからもらった熱を全員で分かち合いました。いつのまにかペアで話すみたいな流れになったのち、それぞれのペアがどこに行ったかわからなくなるという(笑)
Monoprixという宿から徒歩10分ほどの大型スーパーで、みんなで連絡をとりあって合流し、サラダなどを入手して帰りました。
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次は面会交流支援・家族仲裁の「CITHÉA」さんです!
長々お読みいただきありがとうございました<m(__)m>
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