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なぜベルリン市はコンポストトイレを選んだのか - コンポストトイレの可能性
ドイツに20年以上住み、18年間ベルリン市民です。
人糞たい肥を土壌の専門家から学び、アーティストとしてこれまで数百人の方のものをたい肥化しました。現在は、環境系スタートアップ会社を立ち上げ、たい肥化できる幼児用おむつの中敷を開発しています。
土づくりをしてきた経験を元に、この記事では、「コンポストトイレが注目される理由」を考え、トイレを使った感想について紹介します。サステナブルな社会へ向けて、行政とスタートアップ会社が共創したよい事例として参考になればうれしいです。
コンポストトイレってなに?
コンポストトイレは、人間の排せつ物を処理してたい肥化するトイレのことです。
通常の水洗トイレと違い、水を使わずに排せつ物を分解・発酵させて処理します。
排せつ物は、最終的に土に還るため、環境に優しいトイレとして注目されています。
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コンポストトイレが選ばれた背景
ならば、ベルリン市はたい肥が欲しかった?
いえ、違うんです。
下水管や水道管、電気を通すことが難しい場所だったからです。
インフラ事情が原因なのか、と思われるかもしれませんよね。
ベルリン市のプレスリリースによると、配管が不足している未整備地域があるそうです。
特に公園や緑地、水浴場、サイクリングコースやハイキングコースなどです。
需要はあるけれど、水洗トイレを設置するには莫大な予算がかかる。
水も下水設備も必要ないコンポストトイレはコスト面で有利だったわけです。
2023年春に、「環境にやさしい公園トイレ」と題して、パイロットプロジェクトが開始されました。コンポストトイレ24基の誕生です。
1年間の期間限定だったものが延長され、なんと、2025年3月まで使用できるそうです。好評ってことでしょう。
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水洗トイレとは違うメリット6項目
水や下水設備がいらない他に、多くのメリットがあります。
今回、プロジェクトで 採用されたコンポストトイレ会社は、 Ecotoiletten 、Finizio 、Missoirの3社です。
どちらもベルリン発の若手スタートアップ会社 (拍手)
彼らのサイトを元に解説していきますね。
使用が無料 (子どもでも誰でも使用が可能です。なおドイツはふつう有料)
ユニセックストイレ(男女兼用の小便器2種類)と洋式便座
オフグリット(太陽光と風力で電力を自給自足できる)
コンテナ構造で設置が簡単、水洗トイレより安い
尿分離式ドライトイレ(UDDT) 尿と便を混ぜないため、匂いが少ない
たい肥化が可能(将来的に栄養素循環を目指している)
もっとありそうですけど、大まかなメリットは以上です。
ユニセックストイレの新しいスタイル
ユニセックストイレには、男女関係なく使える小便器が設置されています。
Finizioのトイレは、男女兼用の立ってするタイプです。
Ecotoiltettenには、立ってするタイプとしゃがむタイプが別室についています。
男女兼用の立ち小便器?
「へ?なんのこと?」と思われたかもしれません。
そうです、女性も立ってできるらしいです。
もちろん、すべてが個室なのでプライベートは守られ、男性と女性が同じ空間に同時に入ることはないです。ほっと、安心しました。
ユニセックストイレが注目されているのには、理由があるようです。
統計的に、女性用トイレの数が男性用トイレより少ないんです。
ふつう、女性用トイレは個室になっていますよね。
結果、限りあるスペースでは、便器の数が少なくなってしまいます。
たしかに。長蛇の列になってしまう原因です。
それならば、すべてを個室にしてしまい、誰でもどのトイレでも選べるようになったらいい!
新しいコンセプトです。もちろんプライバシーも守りながら。
実際に使ってみたらどうだった?
Missoir(ミソワー)のしゃがむ小便器
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和式トイレのように使います。
女性が女性のために考案したデザインで、特許済み。
すでにイベントやクラブでも使われているタイプです。
使いごごちは、日本の和式トイレより断然清潔でした。
水の飛び跳ねない工夫が金網にされていて、どこかが汚れるスキを与えません。
トイレットペーパーは別に捨て、最後に消毒液をシュッと手に吹きかけ退出します。
これほど素早くトイレが済むんだろうか。
ヨーロッパの方は、脚を開くポーズに慣れていない可能性があります。
ですが、物は試しです。
手すりにつかまり、挑戦してみるのもいいかもです。
ちなみにヨガでもお馴染みの「しゃがみポーズ」
恥骨腸腰筋(ちこつちょうようきん)がゆるみ、洋式トイレの姿勢より排泄がしやすくなるそうです。便秘の方は、日頃から練習してみると改善するかもしれません。
男女兼用立ち小便器
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う〜ん、両方とも、ちょっと勇気がいったので次回に持ち越しです。
洋式タイプ
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用を足した後、ボタンを押します。
ベルトコンベアが作動して、便が奥へ移動していきます。
尿は別途タンクに回収され、ベルトコンベア用の電気は、太陽光パネルで自給自足しているそうです。
思った以上に、快適でした。
でも尿だけなら、上記したMissoirのしゃがむタイプを使うかな。
利用者にどのくらい受け入れられたのか
二千人以上がオンライン調査に参加したところ、
各トイレは平均して1日に約70回も使用されたそうです。
初年度の利用回数は合計50万回を超えたとのこと!
けっこう利用しているってことですね。
デザインが斬新な、男女兼用の小便器「しゃがむタイプ」と「立ちタイプ」
どちらのタイプも利用者には好評で、90%以上が、「とても実用的」「まあまあ実用的である」と回答しているようです。
わたしたちの排泄習慣は、思っている以上に柔軟なのかもしれません。
今後の課題と展望を考えてみた
課題は、いかにメンテナンスを充実させるかだと思います。
今回訪れたコンポストトイレは、Mitte(ミッテ地区)とNeukölln(ノイケルン地区)。ベルリンは、地区ごとに住民の社会的な文化背景が少しづつ違ってきます。
なので、すべてのトイレをいつも清潔に保つことはむずかしいのです。
トイレットペーパーが散らかり、汚く、落書きが多いトイレに入ることも多々。
乱雑な状態だと、誰もが不快になり、「環境にやさしい」どころではありません。
幸いなことに、QRコードで、コンポストトイレ会社に苦情を知らせるシステムがありました。「おむつ替え台が汚い」「掃除がされていない」といった内容を写真と共に知らせられます。
今後は、集めたデータから改善点を導き出し、ここち良さを追求するフレーズに入っていって欲しいです。
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ちなみに、日本のトイレは、最高品質です。
日本から来たあなたが、ベルリンの「環境にやさしい公園トイレ」に感動するとは正直、思えません。
音姫も温水洗浄便座もない、鏡、化粧コーナー、ジェットタオルもありません。
毎日清掃員が通うほど、予算も組まれていないです。
とてもミニマリスト。それでも試してみたかったら、ぜひ入ってみてください!
ベルリン市の取り組みは、始まったばかり。
持続可能な社会へ向けて、行政レベルで、挑戦的なパイロットを実装させたことは大きな一歩となったはずです。ベルリン市民として、関わったコンポストトイレの会社、行政関係者、利用者と清掃員に深く感謝したいです。
今回、回収した排せつ物はベルリン郊外(Eberswalde)で安全にたい肥化されます。
次回の記事では、回収した排せつ物をたい肥化するシステムを取材します。ヨーロッパ規模で進められている、持続可能なサニテーションネットワークの現状もまとめてみたいです。
今回の記事を読んで「へ〜知らなかった、行政レベルでも動けるんだ」「コンポストって面白そう」など関心を持った方がいましたら、ぜひ私のXアカウントもフォローしてくださいね。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。