【スケボー】29歳の運動音痴女がプッシュできるようになるまでの話
2020年7月。
多くの人がそうであったように、私も他者との交流を半強制的に自粛させられていた中で、ある感情が胸の内に芽生えた。
「スケボー やってみたい」
これは「ド」が付くほどの運動音痴である私が、1年をかけてようやく、スケボーの基礎中の基礎であるプッシュができるようになるまでの話である。
そんな人は世界中どこを探しても私ぐらいしか居ないだろうが、もしスケボーのプッシュで躓くようなド級の運動音痴が読者の中にいるのであれば、ぜひこのノートを参考にしていただきたいと思う。
初日:怖くて板の上に乗れない
スケボーはとにかく板(デッキ)の上に乗らなければ始まらない。
だがド級の運動音痴の私は、それが永遠とできなかったのだ。
誰だって始めは恐怖心がある。が、1時間も経てばその恐怖心は徐々に薄れ、板の上に両足を乗せるなんてことは誰もができるようになることだろう。
一方私は1時間後、依然として両足を板の上に乗せるなんて芸当はもちろんできず、左足を板に乗せ、右足を一瞬だけ地面から数ミリ~数センチ浮かすことが精一杯であった。
ちなみに私は二十歳の頃からスノーボードを嗜んでいるのだが、木の葉を卒業するのに6年かかった。
スノーボード経験者であれば、この『木の葉を6年』という状態が如何に異様な状態であるかおわかりいただけるだろう。
ド級の運動音痴を舐めてもらっては困る。
1ヶ月後:片足が数秒浮かせられるようになる
一時のノリでスケートボードなんか買ってしまったことを後悔し始めた頃、未だに私は『板の上で片足立ちをする』という基礎とも言えないようなレベルの練習に勤しんでいた。
それができない原因が怪我をすることへの恐怖だと確信した私は、手を擦りむいても良いように両手に軍手、膝をついて転んでも良いように長ズボンを履いて練習に取り組んだ。
そうするとなんと、数秒間片足を浮かせられるようになったのだ!
これは人間が四足歩行から二足立ちになったのと同じくらい、私にとっては革命的な出来事であった。
下の映像を見ていただきたい。3秒間ほど、右足を地面から浮かせている瞬間があることがおわかりいただけるだろう。
後になってこの『片足立ち』よりももっと先にやっておくべき練習があったことに気がつくのだが、とにかくこの『片足立ちの成功』が、今後スケボーを続けるか否かの分岐点になったことは間違いない。
3ヶ月後:おもしろ歩き、始まる
板を片手に人通りの少ない工業地帯へ通い詰めること早3ヶ月。
私は片足を板に乗せ、もう片方の足で地面を蹴り前へ進む、いわゆるプッシュの練習に取り組んでいた。
ところで皆さんは、お笑い芸人千鳥の『おもしろ歩き』をご存知だろうか。
いろはに千鳥というローカル番組中に編み出された、重心が後方に偏った実に滑稽な歩き方である。
それではここで、スケボーを始めて3ヶ月間、毎日のようにプッシュの練習に取り組んだ私の成果を見ていただこう。
『おもしろ歩き』である。
腰が引けているので重心が後ろに偏り、腕をバタつかせる。
体重のほとんどを地面を蹴る右足に乗せ、デッキ上の左足は添えられている状態。
千鳥の二人も裸足で逃げ出すこのおもしろプッシュをしながら、私は「この練習を続けていれば、きっといつかイカしたスケートボーダーになれるはず・・・」と真面目に夢見ていたのだ。
この後起こる悲劇も知らずに・・・。
5ヶ月後:右の股関節を負傷する
スケボーを始めて5ヶ月ほど経った頃、右脚を負傷した。股関節を曲げることができなくなってしまったのだ。
階段の上り下りはおろか、平坦な道を歩くことですら痛みを覚えるレベル。
原因は明白だった。
完全に、おもしろプッシュのせいである。
あんな人間の力学に反した動きをしていれば、誰だってこうなる。
私はそっと、板を玄関の隅にしまった。
そこから5ヶ月間、私のスケートボードは陽の光を浴びないまま、埃を被り続けた。
8ヶ月後:病院をたらい回る
右脚を負傷した当初、私は「まあでも1ヶ月くらい運動休めば良くなるっしょ」的なノリで毎日を過ごしていた。
実際、疲労の蓄積が原因で起こった関節痛や靭帯の損傷は、遅くとも2ヶ月以内には完治してきた経験があったのだ。
しかし、痛みを覚えてからはや3ヶ月、
一向に回復の兆しが見えない。
診察をお願いした整形外科医もあからさまに困惑の表情を見せ、レントゲン、MRI、超音波エコーの検査をするためにいくつか病院をたらい回ることとなった。
が、結果はどれも原因不明。
「画像診断に写らないほどの軽微な損傷による痛みが、こんなに(3ヶ月以上)長引くはずがない」というのがドクターの見解であった。
最後に『疼痛性障害』の可能性と心療内科への転院を勧められたところで、私は整形外科へ通院するのをやめた。
10ヶ月後:スケボーの練習を再開
痛みが取れるまでは念の為運動禁止を命じられていたが、それを律儀に守っていては、下手なスケボーがますます下手になる一方である。
なんとなく、体の各所(特にお腹)に要らない脂肪がついてきたような気もしてきた。
…というわけで、スケボーの練習を再開することにした。
ただし以前までの『自己流おもしろプッシュ』を続けていれば、痛みが再発することは火を見るよりも明らかである。
「プッシュレベルで躓いているような人向けの、ハウツー動画は無いものか…」
と頭を抱えながらYouTubeを漁っていたところ、ほんの数分で以下の動画を発見した。
普段全く運動をしないとてもとても華奢な女性がスケボーに挑戦するというコンセプトの動画なのだが、私が求めていたものはまさにこれであった。
この動画ではシリーズを通して
・前足を置く位置と重心が決まれば、滑って転ぶようなことはまず無い
・多少オーバー気味にやって自分の限界値を知る
・目線を意識することの重要性
等々、スケートボードをする上で絶対に知っておかなくてはならないと思われる事項をいくつも説明している。
それに感銘を受けたのと同時に、ド級の運動音痴(自分)が自己流でスケボーの練習をしていたことに対する羞恥と恐怖心を強く覚えた。
かくして私はこの動画の女性(しずにゃん)を見習いつつ、プッシュの練習を再開することとなる。
11ヶ月後:下手なりにスケボーの扱いに慣れてくる
上述した動画を血眼で視聴しながら、練習に練習を重ねること1ヶ月。
私はダッサイ軍手を文字通り手放し、それと引き換えに、以前までは考えもしなかったこのような動きができるようになっていた。
この練習、その後のプッシュ上達へ大いに貢献したので、(いないとおもうが)プッシュで躓いているような読者諸君にはぜひ取り入れていただきたい。
そしてこの練習を1時間ほど繰り返したのち、以下のような動きもできるようになった。
『脱・おもしろ歩き』である。
本家本元のおもしろ歩きと、ぜひ見比べていただきたい。
これが、
こうである…!!
(改めて見比べると大して変わってないことに気付いたのだが、そこはまあご愛嬌)
ともかく「こなれ感」のようなものは、僅かながらも見て取れるのではないだろうか。
対面であれオンラインであれYouTubeであれ、とにかく運動音痴は黙って有識者の教えに従う。
それが上達の肝であるということに、齢29にして初めて気が付いたのであった。
12ヶ月目:プッシュ(超低速)ができるようになる
いよいよ。
『人類史上最も参考にならない部門第一位(自称)』の、このnote記事も
ついに最終章を迎えることとなった。
皆さん心して見ていただきたい。
これが私の、全力のプッシュ(超低速)である…!!!
うおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!これだあああああああああああああ!!!!!!!!!
くっっっっっっっそ低速ではあるが、これをプッシュと呼ばずして何をプッシュというのだろうか。
初期の頃とは比較にならないほどの、軽やかな身のこなし。
進行方向へ送る、熱い視線。
「これだよこれ、これがやりたかったんだよ。
へへっ、随分と遠回りさせやがって」と、私は傍らのスケボーデッキを小突く。
小突いたほうが良いのは自分の頭の方であることは百も承知だが、
そんな野暮なことは抜きに
今はこの達成感に浸らせてほしい。
ありがとうスケートボード。
半端ない達成感を与えてくれて、本当にありがとう。
これからも、私の膝がダメになるまで、ぜひともよろしくな。
まとめ
とにかく私のようなド級の運動音痴がスケートボードを始めるのなら、
有識者の意見をしっかりと聞こう。
ある程度運動神経が優れている者ならともかく、ド級の運動音痴が自己流でスケボーを練習しても、上達することは一切無いと断言できる。
むしろ怪我をしたり身体を痛める可能性が高い。
あとは練習場所かなあ。
やっぱりある程度路面が滑らかで、平坦で直線距離が長いところで練習すると、上達が早いです。
よく言われているけど、初心者こそパークに行こうって、あれマジです。
ガリガリ道路で練習するのの100倍は、練習効率が違います。
以上、誰の参考にもならないだろうけど、誰かの役に立てたら嬉しい、そんな気持ちで書いたnote記事でした。
ここまで読んでくれてありがとうございます!
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