原子力の分野で、一般の人が知ったほうがいいことって、クリアランス制度じゃないか?
高レベル放射性廃棄物!みたいなものは地面に埋められるけど、クリアランスされたゴミは身近にやってくる可能性が…ある!
ので、少なくともそういう制度があるということは知っておいたほうが良いと思います。
クリアランス制度って何?
原子力施設から出てくるゴミには、放射性物質を含む放射性廃棄物があります。
放射性廃棄物は法令で定められた方法で処分しなければいけません。
ですが、放射性物質の量が一定の量よりも少ない放射性廃棄物は、国に認められれば一般廃棄物として扱うことができます。
つまり普通のゴミになります。
なので、普通にリサイクルされて、生活に紛れ込んでくる可能性があります。
たとえば、原子力発電所でゴミになった金属を、溶かして固め直して、建材として再利用、なんてことができちゃいます。
え!?そこらへんのビルに放射性廃棄物が!?
……危なくない?
私の意見は
危なくない
です。
こっからちょっと小難しい話をします。
IAEAという国際組織が定める基準では、クリアランスした(≒放射性廃棄物から一般廃棄物に変更した)ゴミによる放射線被ばくの量は10μSv/yまでとされています。
つまり、1年間に10μSvしか浴びない程度なら一般廃棄物にしていいよ、という基準です。日本もこれに従っています。
(厳密には違いますが覚えやすいので10μSv/yだけ覚えてください)
で、10μSvってどのくらいの量かというと、飛行機でニューヨークに行くとか、胸部X線撮影よりも低いです。
詳細は以下参照。
つまり、この程度だったらわざわざ手間もお金もかかる放射性廃棄物にしなくていいじゃん!ということです。
ただ、
そもそも日本だと一般には流通しない。……今のところは。
クリアランスされたゴミは、リサイクルされても一般流通しません。
クリアランス制度が法制化された2005年に国会答弁がされていまして、そこで
クリアランスされた廃コンクリート等の再生利用については、クリアランス制度が社会に定着するまでの間、原子力事業者が、電力業界を中心に率先して進めることを予定しているもの
(答弁書より抜粋)
という答弁がされています。
これにしたがって、クリアランスされたゴミは発電所の敷地内で使われるなど、一般流通させない形で使われています。
なので、現時点で「私のそばに放射性廃棄物が!?」ということを考える必要はありません。
将来的にはリサイクルされて一般流通する可能性があります。
なんでクリアランス制度が必要なの?
そもそもなぜそんな制度があるのか、というと、ゴミを減らすためです。
下の図で、円グラフの青いところがクリアランスされるものです。発電所を解体すると、クリアランスの対象になる(=放射性物質をほとんど含まない)ゴミが約2.8万トン出てくるとされています。
クリアランス制度を使わない場合、2.8万トンのゴミが放射性廃棄物のまま捨てられます。
もったいないじゃん!
クリアランス制度を使う場合、これがリサイクルできたり、一般廃棄物として処理できたりします。
お金も時間も手間もめちゃめちゃ減り、かつ省資源化できます。
ちなみに海外では…
スウェーデン、ドイツ、イギリス、フィンランドなど、クリアランスが法制化されている国はいくつもあり、数十年の実績があります。
逆に、フランスでは日本と同じくクリアランスされたゴミは原子力業界の中で再利用することになっています。
まとめ
クリアランス制度は、放射性物質をほとんど含まない放射性廃棄物を、一般廃棄物とできる制度です。
余計なゴミを増やさないために重要な制度です。
放射性物質がいっぱい入っている高レベル放射性廃棄物は地中に埋められるので近づきようがないんですが、クリアランスされてリサイクルされたものは身近に存在するようになるかもしれません。
クリアランス制度による10μSv程度の被ばくについては様々な意見があるでしょうが、私の意見は「年間10mSvとか浴びてる人、元気じゃん」です。
気持ち悪いって気持ちは、とてもよくわかりますし、私も感じますけどね。
まずは、なーんとなく、そんな制度があるんだなぁ、と知っていただくところから。
読むだけだとアレなので不明点などある場合はお声掛けください。
もうちょっと噛み砕いたり詳しくしたりします。