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M&A 株式2-3 株券発行会社に変更するには?

 株式譲渡スキームにおいては、株券発行会社においては株券を交付する必要があります。株券発行会社においても株券を現実に発行していないことがが多いため、株券不発行会社にした上で、M&Aを実行することも多いです。定款を変更することにより、株券発行会社から株券不発行会社に変更することができます。ただし、買手は、株券を交付したい上でM&Aを実行したいと考えていることもあるため、株券発行会社にするかどうかは買手の意向を確認した上で行ってください。

株券を発行する旨の定めの廃止手続き

株券発行会社から株券不発行会社に変更する手順は以下のとおりです(会218)。手続に要する期間は、現に株券を発行していない株式会社においては2週間程度です。

(1)株主総会の特別決議での定款変更

 株券を発行する旨の定めは、定款に規定されていますので、株券を発行する旨の定めを廃止するには、株主総会の特別決議により、定款変更を行います(会218、466)。
 株券発行会社の定款には、株式に関する事項を規定した章の「株主名簿記載事項の記載又は記録の請求」「質権の登録及び信託財産の表示」などの条文の中に「・・・株券を添えて・・・」という記載があります。定款変更を行う際には、これらの株券に関連する条項をすべて削除または変更します。

(2)株券を発行する旨の定款の定めを廃止すること等の公告と株主へ通知(会218)

 株券を発行する旨の定めを廃止する定款の変更をするときは、以下の事項を定款変更の効力発生日の2週間前までに公告し、かつ、株主および登録質権者には個別に通知します。(1)の株主総会での決議前に公告および通知を行うこともできます。

<公告・通知事項>
①株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類株式)にかかる株券を発行する旨の定款の定めを廃止する旨
②定款の変更が効力を生じる日(効力発生日)
③効力発生日において株券が無効になる旨

 株式の全部について株券を発行していない場合には、上記①と②の事項を、定款変更の効力発生日の2週間前までに、株主および登録質権者に通知または公告すれば足ります(会218Ⅲ、Ⅳ)。つまり、通知と公告のいずれか一方で問題ありません。

<通知と公告の基準>
 現に株券を発行している会社 :公告 +通知
 現に株券を発行していない会社:公告または通知

 

 公告を行うには、掲載の申込みをしてから掲載されるまでの期間を考慮する必要があり、通知を行うより手続に日数がかかります。株主全員とすぐに連絡が取れるのであれば、先に株券不所持を申し出てもらい株券を回収した後、現に株券を発行していない会社として株券を発行する旨の定めの廃止の手続をすると、手続期間が短縮できます。
 M&Aにおいて、一度でも株券を発行している場合、買手から公告をしてほしいと言われることがありますので、そう言われれば対応すればよいですが、現に株券を発行していない会社であれば、会社法上は公告は必ずしも必要ありません。

2.変更登記
株券を発行する旨の定めの廃止の効力発生日から2週間以内に変更登記を行います。
登記必要書類は以下のとおりです。株主等への通知書は、登記申請時の添付書類としては必要ありません。

<登記必要書類>
・株主総会議事録:定款変更を決議した株主総会議事録
・公告したことを証する書面 
 または
 株式の全部につき株券を発行していないことを証する書面
・委任状:司法書士等に依頼する場合にはその委任状

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