M&A株式1-1 株主とその持株数を確認しよう
株式会社の株主とその持株数は、株主名簿、株券、法人税申告書別表二等の資料と十分な譲渡企業からのヒヤリングにより案件の初期の段階から確認しておきましょう。
確認した内容に問題がある場合、株式譲渡の実行までにそれぞれの問題に応じて対応を行うことになります。
1.株主名簿
株式は、株式譲渡をする上での目的物そのものですので、誰が株主で、何株持っているのかは、重要です。また、当該株主が所有する株式が適法に取得されたものなのかを確認します。適法に取得された株式でなければ、株式譲渡をした後でも、真の株主から権利の主張をされるおそれがあるからです。
株式会社は、これらの情報を把握するため、以下の事項を記載した株主名簿を作成し、本店に備え置くこととされています(会121、125Ⅰ)。株主名簿から、株式会社の現在の株主および各株主の保有株式数、過去の株主の変遷もわかります。株主名簿記載の内容は、株式譲渡のクロージングの際に重要物品として交付することが一般的です。
しかし、法定通りの株主名簿が備えつけられていない株式会社も多く、株主名簿だけでは真実の株主、過去の株主の変遷が確認できないことがあります。実際に法定通りの株主名簿が備えられている中小企業はあまりないと考えておくとよいです。
株主及び株主の変遷を確定するためには、株主名簿だけでなく、株券、確定申告書別表2、原始定款、過去の株式譲渡契約書・領収書、株式譲渡を承認した議事録、株主総会の株主数等を確認し、また経営者からよくヒヤリングします。特に増資、相続発生時期の株式の異動は注意して確認します。
また、顧問税理士や司法書士が株式の譲渡に関する書類等を所持していることもあります。
2.株券
株券発行会社が現に株券を発行している場合は、株券の所持人と株数が株主名簿の内容と合致しているか、全ての株券がそろっているか等を確認します。
株券は持っている人が、当該株券に係る株式についての権利を適法に有すると推定されます。また、株券の交付を受けたものは、悪意又は重過失の場合を除き、当該株券に係る株式についての権利を取得します(会131)。
3.法人税申告書別表二
法人税申告書別表二にも株主の記載があります。別表二には、全ての株主が記載されるわけではありませんし、税務上の理由で名義のみを移転させていることや、出資した金額が記載されているなど実際の株数とは記載が異なることがあり、正しいと限りません。少なくともここに記載のある株主と株主名簿又は譲渡企業のオーナーからのヒヤリングの内容が一致しているかを確認ください。
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