ー転生ー物語

転生物語-前編-

『昔むかーし、だけど、昨日の事かも知れないお話。月の国には月の巫女と呼ばれるそれはそれは美しいミツキという女性が居ました。ミツキは一生に一度、たった一度だけの恋をしました。

月の巫女ミツキは生まれながらにして不思議な力を持っていました。
その身を削りながら人々の幸せを歌い、発展を舞う、そうやって少しずつ命をかけて人々を幸せにすることがミツキの使命でした。
ある日、ミツキがいつものように天の川で祈りを捧げていると強く眩しい光が差込みました。

「そこにいるのは誰だ?」

力強いその声は初めて聞く暖かさと優しさに包まれていました。
その風格から明らかに自分よりも目上の人物だとすぐに理解し、ミツキは膝をつきました。

「私は月の巫女、今はお勤め中でございます。」

そう言って相手に頭を下げると相手からの豪快な笑い声が聞こえてきました。

「あっはっはっは!お邪魔したのは私の方だ!そんなに低くならずに顔を上げてくれ。」

言われるがままに顔を上げると太陽の光のように眩しい笑顔の男性が立っていました。
途端にミツキの心臓は跳ね上がり、一瞬で恋に落ちました。
それは男も同じでした。
天の川の光に透ける美しい白い髪と肌、切れ長の黒い芯の強い瞳に、男は見惚れてしまいました。

「私は太陽神ゴウエン、そなたの名は?」

「私はミツキと申します、月の巫女でございます。」

男は全ての創造の源といわれている、太陽の国の王でした。
二人はお互い一目で恋に落ち、
太陽の国の王と身を削って人々の為に生きる運命の月の巫女。
身分違いな恋に二人の運命は狂っていくのでした。』

幼い子供のころ、よくあるおやすみ前のお伽噺。
5歳になる少女ユエも毎晩のように母親にせがんではこのお伽噺を聴いていた。

『ママ!またあのお話して!』

『えー?またぁ?本当にユエは太陽神と月の巫女の話が好きだね。』

ユエは毎晩全く同じ話ばかりを母親にねだった。
ユエの家の前には丁度天の川が流れていた。
身近で馴染みのある天の川でのお伽話にユエはとても親近感と憧れを抱いていた。
新しいお話用意しなくて良いから楽だけどと母親は笑って居た。
お話は子供には難しい内容だったが、ユエは解らないことがある度に「これは何?」「それはどういうこと?」と興味深く母親に質問しては眠りについていました。
そして、お話が終わるとユエはいつも決まって母親に。

『ママ、私将来は月の巫女を守ってあげる戦士になるわ!!』

『えぇ?そっち?月の巫女に憧れる!とか太陽神と恋がしたい!じゃないの?』

『そんなの全然つまらないわ、私は月の巫女と太陽神の恋を応援してるんだもの!素敵な二人の恋を守ってあげなくちゃ!もちろん!私も太陽神に恋してるわ、でもだからこそ太陽神は月の巫女と幸せになってほしいの!その為には巫女の命を削る月の民から巫女を守らなきゃ!』

『我が子ながら物凄い解釈をするのね。まぁそうね、ママもユエには命をかける巫女に憧れるよりも強くたくましく生きてほしいわ。』

幼い日の思い出。
太陽神と月の巫女の伝説のようなお伽話。
月で生まれたユエは、幼き日の目標を掲げ、強く逞しく成長し、腕利きの女戦士へと成長した。
ユエの強さは男すら敵わないと、いつの日にか月の国一番の戦士となって月の巫女の騎士となっていた。
ユエ自身、もちろん昔話が事実とは言えないことぐらいは理解していた。

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