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明日の60点のために

あ、また、エスキーがノートになんか書いてる。
斎藤隆コーチ、今度はしみのぼと話してるな。

小川監督と宮本ヘッドコーチが退任した今年のヤクルトベンチに、去年はなかったふたつの光景が現れた。

ベンチがテレビに映されるのは毎回ではないので、どのタイミングでエスキーがノートにメモしてるのかまでは確認しようがないのだが、おそらく、自分の打席でどのピッチャーからどんなボールをどんな打ち方をしてどんな結果だったのかを書き込んでいるんだろう。
斎藤コーチの方は、先発中継問わず、降板後に気がつくとそのピッチャーの横にそっと寄り添って何かを話している。この暑さの中熱投したピッチャーたちが息を整える中で、今日のピッチング内容を二人で確認し合っているんだろう。

ふたつの光景におそらく言えるのは、自身がやったこと・出来たこと・できなかったことの『言語化』だろう。もう少し突っ込むと、脳(思っていたこと)と身体(出来たこと)の一致不一致を確かめる作業、という言い方でもいいかもしれない。

練習で出来ていたピッチングが本番のマウンドで出来ていたか。出来たのであればどの投球でそれを実行でき、出来なかったのであればそれは自分のどこが足りなくて出来なかったのか。
3球目のスイングが崩されてセカンドゴロになってしまったのは、何を出来なかったからなのか。
それは、自分の仕事でもよく聞くPDCAのCheckの部分。
出来なかったことを頭ごなしに否定したところで、それが翌日からできるようになる人は、一握りもいないだろう。だからこそ、それを『確認』することで、また明日決まった時間にやってくるプロ野球という仕事に向けての準備を、彼らはベンチの中で始めている。

エスキーほどの実績がある選手であれば、それは自らメモを取ることで出来るのだろう。
実際、オープン戦や開幕前の練習試合まで全く打てていなかったエスキーが打撃で結果を出し始めたのは、あのメモタイムが中継カメラに映るようになってからのような気がする。
守備であれだけ貢献してくれてるから、多少打撃は目をつぶっても…なんて思っていた自分が恥ずかしい。
彼はプロだ。しかも、メジャーリーグでゴールデングラブ賞まで取れるレベルのプロ野球選手であり、与えられた場できっちり結果を出し続けてきたメジャーリーガーなのだ。
日々の結果をノートに書き出すことで言語化し、身体と脳のギャップを少なくする努力を続けているからこそ、それは一時期3割を超えた打率としても現れている。

だが、ヤクルトの若い選手たちには、まだそれを一人でやり切る力は多分ない。だからこそ斎藤コーチが、まさにコーチングの一環としてそれをピッチャー1人1人とやってくれているのかと思うと、高津監督が「手伝ってほしい」と1番に頭を下げて就任を依頼したという話にもとても納得がいく。

とはいえ、去年までなかった光景に、選手のほうも慣れていないのかもしれないな、と思うこともある。
しみのぼやハセチュー(長谷川宙輝)は、斎藤コーチとしっかり目線を合わせながら話している一方で、梅ちゃん(梅野雄吾)は去年までのコーチへの不信感(憶測ですw)が拭えないのか、好投しても絶対に目線を合わせては喋らない。いや、カメラに映ってないとこでは違うのかもしれないけどね。そんなところすら、かわいいなとも思ってしまう。

ピッチャーは、打たれないことはない。だって、相手もプロのバッターだもの。菅野だって千賀だって、打たれる時は打たれる。誰しもが常に100点満点のアウトプットを出し続けるのは難しいのだ。
ヤクルトの投手陣で言えば、今日は80点の球もいくつかあったけど平均したら50点、なんてピッチングはままある。経験値だったり体調だったり、もしくはその日のメンタルの具合でも、点数は上下するだろう。
だからこそ、斎藤コーチとの振り返りタイムが、同じ失敗を繰り返さないための、明日の10点底上げした結果を出すための努力のきっかけになるのかなと考えると、こんな状況下でいつもと違うところを見る野球もおもしろいものだなと思う。

令和になるタイミングで、ある人に言われたことがある。言語化は訓練で、それで手持ちのカードが増えるのは楽しいんだよ、と。

『言語化』して出来ることカードを1枚増やしたヤクルトの選手が、明日も楽しく野球できますように。

#ヤクルトスワローズ #Enlightened #swallows