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自宅ヤク湯を試してみる

「サウナ入ってたら得点してたわ」
「月曜以外毎日入って」

千葉ロッテ・益田投手がファンの心臓を鷲掴み(鴎なのに)にする劇場を繰り広げた夜、常駐するチャットで交わされた会話の一つだ。

「ご飯を作ったら、推しが抑えていた」
「トイレ行ったら、ホームラン打たれた」

『XXをしたらYYした』というのは、おそらく因果関係はない。もしくは逆だ。
だが、どうしてもそれを言いたくなってしまう場面が、野球を見ていると多い気がしている。

対ジャイアンツ戦、3年目にして初スタメンの秋広に初ヒット初タイムリーを打たれた小川を見ながら、
「風呂入ってきたら点入るかな」
と呟く。

「今すぐサウナ行って」とレスがついたが、残念ながら自宅最寄りには良いサウナがない。
そこで、ふと、試し買いした薬湯入浴剤を試してみることにした。

2袋セットで300円前後

私が大好きなサウナの一つ、厚木健康センターは草津温泉を含む多くの種類のお風呂がある。
この中の一つに『救養草』というネーミングの薬湯がある。

厚木でのルーティンは、この薬湯で2-3分軽めに浸かる→爆熱サウナへGo→キンキンの水風呂→外気浴だ。
動線がいいとはいえないが、外気浴エリアで魂が抜ける感覚を味わっている時ほど、この施設を堪能していると感じることはない。
そこで使われている薬湯のパックが売られていることに今更気がつき、買ってきたところだったのだ。

沸かした風呂にパッケージを投入する。
すぐにお湯の色が変わることはなく、むしろパッケージにお湯を含ませてはそれを湯船に溶け込ませるという動作が必要なタイプだ。
10回ほど繰り返すと十分にパッケージがお湯を吸い込むので、あとは湯船に浮かべて本に目を映す。
なんとなく、スマホで速報を追いかけてしまうと得点効果が薄れるような気がしたからだ。

10ページほど読み進めたところで、頭皮から汗が流れ落ちてくることに気がつく。
他の入浴剤では得られない感覚に、昨日レジェンドゆうさんと交わした「厚木最高〜!」という言葉を思い出してニヤニヤする。
普段は外して入るが試しに付けたままにしたスマートウォッチは、心拍数120台を指している。軽い運動をこなしたくらいの値を確認し、また視線を本に戻す。

半分ほど読み進めたところで冷水シャワーで汗を流し、Tシャツを羽織って外に出る。
買ったけれど1回も使ったことのない球団ロゴ入り折りたたみ椅子を、まさかサウナ代わりの休憩で使うようになるとは思ってもみなかった。

本来は多分キャンプグッズ

ベランダには、犬が普段から遊び回れるようにと人工芝を引いてある。
その刺激を足裏に感じながら、網戸越しに聞こえる中継の音に耳をやる。

バットコントロールの天才・川端慎吾が、ジャイアンツ・岡本のエラーを招く鋭い打球を飛ばしたところだった。

1者生還。
「風呂に入ったら点が入った」
薬湯からの外気浴作戦、効くじゃないか。
この方法で中継を楽しむのもアリじゃないか。

欲を出した2セット目、残り半分を読み終わったところで再度ベランダに出る。
9回裏、2アウトランナー2塁。
バッターは、日ハムから移籍してきた時に
「あの打ち方、川端慎吾だよね」
とヤクルトファンをニヤつかせた太田賢吾だ。

1球目のフォークが、内角低めに外れる。
ケリー、打って。

目を閉じて、部屋から漏れ聞こえる音に耳を澄ます。
インとアウトにそれぞれ投げ込まれたストレートを、なんとかファールに持ち込んだようだ。

ケリー、頼む。

花粉の減った春の夜の空気を、大きく吸った。
そしてテレビは、「なおヤ」を告げた。

#ヤクルトスワローズ #Enlightened #swallows