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音楽に救われたことがなかった

林檎博に行きました。椎名林檎大先生のライブです。それも周年で開催されるアリーナツアーです。最後に林檎さんのライブに行ったのは2023年頭の諸行無常で当時はまだ大学生でした。ただ今回のライブでは、その時とは別種の感動を覚えたわけです。

先ほども述べたように、当時はまだ大学生、つまり社会参画をしていませんでした。ですが今回は社会人になって半年ほどが経ち、ある程度社会の厳しさや自分のポテンシャルを理解してきたタイミング、HPゲージが真っ赤な状態で臨んだライブでした。そういう状態で食らうライブというのはやっぱり凄いんです。大学生の時に行った諸行無常では、そりゃもう死ぬほど感動したし落涙しましたが救われる余地はなかったといいますか、プラスからプラスへ、みたいなそんな感情でした。

でも今回は違ったんです。社会に出て、ギャップに煩悶として、持ち前の善意を活かす場所もなく、努力が積み重なっている実感もなく、自分がいる土地の嫌さにも徐々に気づいて、こんなはずじゃなかった、もうやめてしまいたい、みたいな側から見ればよくあるような話で、しかし当人にとっては一世一代の死活問題を抱えた状態でのライブだったわけです。だからこそ、今回のライブは、ツアータイトル「景気の回復」からもわかるように、昨今の日本の鬱屈とした空気、つまりは個々人の機運を上昇させんとする、そんなコンセプトだったもんだから、そりゃもうこうかはばつぐんだ!音楽に救われるって、こういうことなんだと思いました。「音楽とは、耳から摂る栄養です。」と林檎さんが言っていたけど、こういうことなんだと思いました。マイナスから大幅プラスへ、景気の回復です。

林檎さんの書く歌詞からは、生活であったり労働であったり、人が懇々と繰り返してきたサイクルを労わるような滋味深さが滲み出ているような気がするんですよね。人が生きていくうえで感じる喜びとか、でもそれと薄皮一枚隔てたとこで存在してる苦しみをちゃんと歌ってくれて、でも「しんどいよね、辛いよね」って寄り添う歌だけじゃなくて、「しんどい、辛い」ってただ心情を吐露するような曲もあるもんだから、「こんな素敵な人でもこう感じるんだ」って安心(?)するんですよね。
※安心とはまたニュアンスが違うかもしれませんがそれ以外の言葉が現状見つかりませんでした。

それと、林檎さんとか東京事変の音楽に通底するものって「The Life Goes On」(そして生活は続く)の価値観だと思っていまして、それは歌詞からもわかるし、再結成前の事変が最後にリリースした「ただならぬ関係」の英題が「And The Beat Goes On」(そして音楽は続く)であることからも感じます。で、この「どうしたって日々は続いていくよ」というスタンスによって、林檎さんを含めたあらゆる人たちの時間軸が一緒になるんです。だからこそ「出会すシーンはすべてハイライトで 皆かけがえのないキャスト」になるんですね。

こんなにも栄養豊富な音楽体験があったでしょうか。しばらくは健康的な生活が送れそうです。音楽のキキメは長い。

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