眠りに落ちる前の
朝、早く起きる必要が無い日の、なんなら昼までベッドを出なくていいような日の、前夜、眠りに落ちるまでの時間がどうしようもなく好きだ。
部屋を暗くして、布団に潜り込んで、携帯のちっぽけな画面で映画を観て。
観終わった後、エンドロールに流れる音楽を聴きながら映画の余韻に好きなだけ浸って。
興奮が収まると、確かにずっとあったはずの眠気が急に襲い、いつのまにか私は眠りについている。
あるいは取り留めも無い考え事を巡らして。
雑多な考えを雑多なままに、ぽつりぽつりと頭に浮かぶ言葉のままにメモアプリに記録して。
そしてまた考え事はあちこちに方向を変えながら止め処無く続いていって、気づいたら私は眠りに落ちている。
私は昔、寝るのが苦手な子供だった。寝るのが苦手、というよりきっと意識を手放す事に対して恐怖心を抱いていたのだと思う。頭の中で羊を数えてみたり、寝返りを幾度と無く繰り返してみたり、寝れずに過ぎ去った時間を想って絶望したり。結局眠れずに枕を腕に両親の寝室へ向かう夜が何度あっただろうか。
何というか、子供の頃は生活の余白が大きかった気がする。よく子供は遊ぶのが仕事だ、なんて言うけれど当然子供には大人が抱えているような仕事など無い訳で。学生のように試験に追われる事も無ければ社会人のように締切に追われる事も無い。食べる寝る遊ぶ、ただ心の赴くままにしていれば良かった。心の赴くままにする、という事は常に取り留めも無い考えを巡らせる機会がある、という事だ。多分、子供の頃の私はいつだって雑多な考え事をする事が出来たから夜、眠りにつく前の、思想を巡らせるだけの時間を持て余していたのだと思う。
私はまだ社会人ではないし、一般的には時間があるとされる大学生だけど、私のものさしで測ると学校の事、友達の事、家の事、アルバイト、と日々はそれなりに忙しい。でも、だからこそ、時間の制限無しに、考えを巡らす事の出来る夜を、いつからか好きになっていたのだと思う。
そんな取り留めも無い考え事の備忘録として。