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イタリアのスクーターを売っていた人

職場で突然、席替えがあった。
私が指定されたのは事務所の隅っこ。窓際で、この前まで荷物置き場だった場所。ちょっとした湯船みたいな大きさの水槽の奥の場所。照明の当たりが悪くて、そこはかとなく薄暗い場所。奥まっているから「あ、そこにいたの?」なんて冗談で笑われちゃうような場所。

机の上にはできるだけ物を置かないようにした。置いたのは、真っ白な机になじむよう、郵便局で貰った白くシンプルな卓上カレンダー。もう10年近く使い込んでいる貼るタイプのマウスパッド。(年季は入っているが、キチッと真っすぐ貼り直した。)文具類は卓上の白い引き出しケースに全てしまった。

なんだかないがしろにされた気持ちになっていた私は、自分のスペースを「明日辞めるのかな?」ってくらいにスッキリさせてみた。

そんな私のスペースを見るなり、ひとりのミドル(パートのおばちゃんのことを密かにこう呼んでいる)がぽそっとつぶやいた。

「まあ、ねるさんの席はオフィスって感じで素敵ねぇ」

若かりし頃、バリバリ活躍する商社ウーマンだったミドル。自分が会社の代表として新聞に載った記事を嬉々として見せに持ってきてくれたこともあったっけ。

そんな彼女の言葉は、半分いじけていた私の背中を少しだけシャキッとさせてくれた。


(ちなみにタイトル画像は、卓上ケースの上。お気持ちととのえコーナーと称して、アロマ・パロサント(香木)・お香を置いている)

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ねる
サポートで補えるカフェインがある!(意:コーヒー奢ってください)