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【MOA美術館】名品展:やっとご対面出来ました
先日、静岡県熱海にあるMOA美術館で開催中の『名品展』へ行って参りました。
【MOA美術館】
MUSEUM OF ART___
MOA美術館は明治/大正/昭和の激動の中実業家、哲学、思想家として名を馳せた岡田茂吉氏が創立した美術館です。
1982年に開館し、2016~2017年にかけて展示空間と設備の更新を目的として改修工事を行っており、設計には現代美術作家・杉本博司氏と建築家・榊田倫之氏と共に主宰する建築設計事務所「新素材研究所」が手掛けています。
2016年以前に一度訪れたことがありましたが、
正直言うとどこか近寄りがたい、独特の雰囲気のある美術館でしたが、
改修工事を終えて、杉本氏らによる展示空間や設計や建築素材に注目をされており、そこも楽しみにしていました。
個人的に、かれこれ10年程実際に対面してみたい作品として思い焦がれていた「紅白梅図屏風」。
ついに目の前に対面が叶いました…!
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白梅は掛幹の大部分を画面外にかくし、紅梅は画面いっはいに描いて左右に対照の妙をみせ、中央に木広がりの水流を描いている。
「光琳梅」とも呼ばれる花弁を線描きしない梅花や蕾の配列、繊幹にみられる「たらし込み」、更に卓越した筆さばきをみせる水数など、優れた要素が結集している。
向かって左に「出光琳」、右に「青々光琳」、と署名があり、それぞれ「方祝」の文円が捺されている。
光味晩年の作と思われ、津軽家に伝来した。
平成23年に実施した科学調査で、水流部分一面に銀が皮行することが分かり、黒色部分より化銀が検出されたため、銀箔を黄で旅化し黒に変化させたことが推測されている。
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枝ぶりが下から上へ力強く勢いがあり、そこに咲く白梅が可憐で、配置のバランスには言葉もありません。
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白梅と比較すると、紅梅の付き方に華やかさがあり、真っすぐと凛とした印象です。
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図版などで見すぎていたせいか、単純な線でデザイン化されているものか思っていましたが、
よくよく観察すると「描いて」います。
当たり前のことですが、線の強弱や渦の大小、線の間隔などが全体で見たときに
ひとつのデザイン的な「文様」として不思議と認識してしまうのでしょうか…
こちらも言葉が出ませんでした…
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紅白梅と金箔地と合わさることで、別の紙を貼りつけたような、コラージュされているように見えました。
実物と対面して一番最初に感じたことは、「意外と華やか!躍動してる!」でした。
琳派→江戸デザイン、というような印象ばかり抱いていたため、
平面的なきれいな線で描かれているのだろうと思っていました。
ここははばからずにガラスケースに顔を近づけて目一杯観察して、筆の流れを追うように見ていくと、自然界の成長していくエネルギーのような躍動感を感じられました。
「静」の印象よりも、「動」の印象が強く、
金と黒のカラーの印象も、よく観察すると様々な色味が合わさって総合的にその2色に見えるだけで、改めて実物を目にする大切さを学びました。
固定概念にとらわれ、自分勝手なイメージを持ってしまっていたなと反省するばかりです…
贅沢に対面を叶えて、改めて美術館を堪能します。
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よーく見てみると、職人さんの手作業の跡があり魅力の一つになっています。
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この作品のための空間。この空間自体も一つの作品です。
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珍しい機織りをする女性の姿を描いた屏風。
「誰が袖屏風」とはまた異なり、雅な雰囲気が漂います。
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こんなにも道具が繊細に描かれていると、とてもテンションが上がってしまいます…
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当時の女性のファッション誌とでもいえるような、オシャレな着こなしと、
インパクトのある刺繍が施された表装がステキです。
展示物自体は、他の美術館に比べると少ないほうかもしれませんが
何より展示物を最優先にした、素材と空間へのこだわりがとても感じられて、心地よい非日常体験を楽しむことが出来たと思います。
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空の様子もここからよーく一望できます。
ちょうどこの日は「光琳茶会」が催されていたそうで、茶道を習い始めたばかりの私にとっては憧れの茶会になりそうです。
今度は眺めが最高のミュージアムカフェでひと休みしたいですね…