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より深みにはまってしまった:はにわ展
最終日に駆け込みで、『挂甲の武人 国宝指定50周年記念特別展「はにわ」』が開催された東京国立博物館平成館へ行って参りました。
老若男女、年齢問わず人気の展覧会となった本展は、「はにわ」の深みにハマってしまう魅力がありました。
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そもそも埴輪とはなんぞや…
王の墓である古墳に立て並べられた素焼きの造形を指します。
今から1750年程前の古墳時代の350年間、地域ごとに個性豊かな埴輪がつくられますが、共通して素朴で愛らしい表情をしており、だれでもほがらかな気持ちにさせてくれるのが最大の魅力です。
今回はその表情に注目するとともに、
造形の流れやディテールに視点を向けて、つくり手の気持ちを体感してみました。
まずは円筒埴輪です。
ヤマト政権を治めていた大王の墓を取り囲むように配置された埴輪の多くがこの円筒埴輪なのだそう。
このような祭祀具でお墓を取り囲むように作られたのが埴輪の起源とされています。
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国内最大級高さ約2m。人より大きい埴輪を見たのは初めて
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発掘された破片と復元された形の融合が途方もない時間の経過を表しているようです。
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上部のくびれた部分から朝顔型とも言われているそう。
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なぜ顔を付けたのか…微笑ましい表情の埴輪のはじまり⁉︎
円筒埴輪だけですが、全国各地ほぼ同じ形です。
顔があったり素材が異なったりして個性がありますが、ヤマト政権から発展した埴輪文化が全国へ拡がっていることが体感出来ました。
続いて、本展の目玉である国宝「埴輪 挂甲の武人」。
同じような造形をした5体の武人。
(4体は群馬県出土、1体はシアトル美術館造形蔵)
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すんと澄ました表情、凛とした立ち姿が美しく、
この角度からのお顔の陰影がとても良いです。
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こんな間近でディテールを観察出来たことは強く印象に残りました。
これらは同じ工房で作成された可能性が高いそう。
ですが個性やディテールがより分かりやすく強調されており、5体を比較しながら鑑賞することが出来ました。
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ハッとするような明快な色遣いが印象的です。
ここからは個人的にお気に入りのはにわをご紹介。
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どこかメキシカンな雰囲気をかもしだす、赤い彩色と三角模様が特徴的です。
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衣の模様に思わず目が行ってしまう、当時の服装をイメージしやすいです。
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頭部や装飾物から、南米のカラフルな民族衣装に身を包んだ女の子の姿にしか見えません…
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「笑う」=「はらう」
古墳を守るガードマンである盾持人は怒りや笑っている表情の埴輪が多く、
邪をはらう意味があるとされていたそう。
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展示を見終えて感じたことは、
日本全国、また世界各地で、死後の世界や葬礼儀式のために制作されたものには共通点があるなと思いました。(個人的な意見です)
それはユーモアを感じることです。
故人を死後の世界へ無事に送り届けるために、または故人が眠る場所をまもるために、財と技術を尽くして制作されたものは当時の一級品です。
豪華に着飾られていたり、模様がほどこされていたり、表情がすべて異なっていたりと、どこかワクワクする要素があるなと感じます。
死後の世界は想像するほかありませんが、きっと荘厳に満ちた楽しげな場所なのだろうとも思わずにいられません。
東京国立博物館での短い展示は終了してしまいましたが、
来年2025年1月21日~5月11日の長めの会期にて、九州国立博物館へ巡回します。
お近くの方はぜひ、埴輪たちに会いに行ってみてはいかがでしょう!