【OLエッセイ】#02_雨も滴るとスティーブジョブズOLも良く見える⁈


土砂降りの雨の中、何とかコンビニまで到着。

590円(チッ)の雨傘を買って、やっと一人前の大人になった。


しかし、下手な時間に出てきてしまったからバス待ちが40分ほどある。

ここは潔くタクるしかない。

大通り沿いで少し待つと運よくタクシーを捕まえられた。

今週頭に節約を開始することを心に決めていたが仕方ない。

雨に濡れた服身を包み40分ひたすら忍ぶか、

タクシー代を払って時短するか。

時給換算しても断然、後者!


私は潔くタクシーに向けて手を挙げて乗り込んだ。


タクシーの運ちゃん中の運ちゃん!的な、運ちゃんだった。

運ちゃん)雨ひどかったね~

OL)はい~ おどろきました~

運)・・・。

OL)これ続くんですかね

運)これは夜明けまで続くよ~。いつもだったらついてないけど。

OL)雨の方がタクシー乗る人多いですもんね?!

運)それにサラリーマンは今日は給料が入った金曜日だろ?

OL)そうですね~


話していると、メーターが動いてないことに気づく。

OL)あの~、たぶんメーター動いてないと・・・思います・・・


運)ありゃー!ほんと! さっき止まった時、後でつけようと思ってたらわすれちゃってたよ~ははは

お客さんによっては、気づいてても、わざと言わない人とかいるんだけどね。


今週頭に節約を開始することを心に決めていた!のだ!(2回目)

私だってタクシー代は惜しい。

でも今日の私はドラマチックに雨に濡れたし、

バス待ち40分とか待てないし、

運ちゃんがギブしてくれる、びしょ濡れの私を運ぶというサービスへの対価として、払ってもっともな額だと思う。

一瞬、そうか!言わなきゃよかったかな・・・と頭をよぎったが、

ひたすら念仏を唱えるかのように、そう自分に言い聞かせる。


OL)次の信号を左に曲がってください。ああ、そこらへんで。

お金を払おうとしたとき、初めて運ちゃんと目が合った。

運ちゃん、土砂降りの雨にも負けないくらいの、ドラマチックなひとこと。


運)あれ、お嬢ちゃん、なんか品があるねぇ




えっ?!\\\\





*あとがき

品があるなんて、初めていわれた。

いや、お世辞かもしれない。

運ちゃんも、私が気づいて言わなかったら、稼げる金も稼げなかったから、ありがとう、という気持ちを込めてのお世辞だったのかもしれない。

さらに一つ加えて言わなくてはならないことは、

そう。私の容姿は一つも品があるような要素がなかったことだ。

私はずぶ濡れのスティーブジョブズだったのだから。(#01参照)


それでも、私は嬉しかった。

【品】とは容姿ではないのかもしれない。

私という客を心から喜ばせたあの運ちゃんは、本当に、

運ちゃん中の運ちゃん、だったのだろう。


(終)